アメリカ英語における一時帰休と一時解雇の違い
英語における一時帰休の多くは、一時解雇であるレイオフ(layoff)とほぼ同義で使われていることも多く、その違いについては文脈やその国の雇用制度も踏まえた解釈を行う必要があります。リーマンショックや新型コロナウィルスによって製造業に限らず国内、海外の多くの企業でも一時帰休が使われましたが、諸外国の例では一時解雇の形態なのか、日本でいうところの一時帰休に近い形態なのか違いがいまいち判然としないケースも出ています。
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一時帰休と一時解雇の違いとは
日本での一時帰休の制度とは、解雇とは異なるもので、従業員を一時的に休業させることで給与減額し弱った会社の経営体力を温存するために使われる制度です。
例えば1か月のうち20日間が本来の出勤日であったとして、このうち2日を「休業」として、従業員の出社をなくします。この場合、従業員は休業した分の給与が減ることになりますが、給与としては最低60%はもらえることになります。これは労働基準法に定められた、雇用主の都合で休業させる場合に支払いが必要となる基準として明確に定められています。
解雇ではなく休業によって不況による操業短縮で事態の打開をはかろうとしている事業主(雇用主)に対しては政府が雇用調整助成金などの名目で補助金が支払われるため(日当たりの上限金額や助成率についてはリーマンショックやコロナ禍などの際に作られる特例によって決められます)、多くの企業では休業を行っても、1日分は給与減額なしにしたり、休業した日についても80%の給与を支給したりといった対応を行ってきています。
製造業の場合は特に工場の操業を止めることで操業にかかる電力・動力などのコストが下がるため、日にちを決めて一斉に行うケースが散見されます。売り上げの大幅減少といった事態に見舞われても、会社のランニングコストを落とすことで出ていく費用を抑える策となります。
レイオフ(一時解雇)とは何か
一方で、一時解雇とは経営の状態や景気などが戻ってきた際は再雇用する前提での「解雇」となりますが、必ず再雇用されるわけではないため、解雇とほぼ同じ意味でも使われます。米国ではよく使われますが、日本では一時解雇という方法があまり一般的ではありません。
「一時的」とはいってもいったん解雇されてしまうと再度雇われる保証はないので、雇用関係が維持されている一時帰休とは大違いとなります。また日本では法的な制約もありませんので、事実上の解雇と同じ意味です。
日本では一時帰休のほうが一般的ですが、これを一時解雇と誤用されるケースがあります。この一時帰休と一時解雇の制度は日本で使われている意味と他国での意味が異なることがあり、これは単に労働法制や雇用習慣の違いでもあります。すなわち、一時帰休の制度がない国では、どちらも一時解雇となります。
アメリカ英語で一時帰休はFurlough、一時解雇はlayoff?
アメリカでは景気変動、不況による操業短縮による影響で従業員の数を減らしたい場合、一時解雇(レイオフ)という手法が昔から使われてきています。ただし、レイオフ自体は、「一時」解雇の意味ではなく、再開の見通しなく単なる「解雇」と同じ意味で使われることもあります。
この場合、解雇が一時的に終わらず恒常的に続くものであることを明示するため、permanently lay offといった言い方がなされることがあります。
英語表現として一時的な解雇を意味する用語としては、Furlough、layoffがありますが、どちらも一時的に終わらないケースで使われることがあります。ここが誤解をうむ一つの原因ともいえます。
アメリカではFurlough、layoffに違いはない
アメリカ英語の上では、この二つの英語表現に法的に明確な違いがあるわけではなく、どちらの用語であっても一時解雇する場合、要件を満たすのであればWARN法(労働者調整・再訓練予告法)にしたがっての手続きが必要です。
この法令では、50人以上のフルタイム労働者が雇用を喪失する事業所閉鎖や、フルタイム労働者の3分の1以上でかつ50人以上が雇用を喪失するレイオフ、500人以上が30日間にわたって雇用を喪失するレイオフについては実施の60日以上前に事前通知をしなければならないと定められています。
上記から、一時帰休はFurlough、一時解雇はlayoffというわけではなく、Furloughであっても一時解雇あるいは事実上の解雇として使われる場合もあります。
時事英語では、ほとんどのケースで日本の「一時帰休」をFurloughと訳していますが、Furloughには一時解雇の意味で使う場合や、誤用ですが一時帰休自体を日本では一時解雇と呼ぶこともあるため、余計にややこしい使い分けになっています。
したがって、日本でいう一時帰休、つまり解雇ではなく従業員を一時的に休業させることを意味する場合は、誤解を避けるために以下のように一時解雇ではないことを表現する方法もあります。"without dismissal"をつけることで解雇ではないことを表現していますが、厳密にはこれだけでは日本の一時帰休と同じ意味にはなりません。
- Furlough without dismissal
- Temporarily stepped down without dismissal
- Temporary leave without dismissal
そもそも米国に日本の一時帰休制度と同じものがないため、コロナ禍で工場の操業を停止したり、従業員を一時的に休業させるような場合、本来の意味での一時解雇である「レイオフ」が適用され、その期間中、対象となった従業員には失業保険が給付されます。今般の新型コロナウィルスによる場合はさらにここに補償金額を上乗せして支払う手厚い体制が話題となりましたが、これらはUnemployment compensation、unemployment benefitsといった所謂失業手当となります。
このように一時帰休、一時解雇は以上より明確に異なる制度であるものの、国によっては一時帰休に相当する制度がないため、用語が分かれていないことがある点に注意する必要があります。この辺りは各国の労働法が異なる以上致し方ない部分がありますが、英語表現の際には説明を書き添えると誤解を防ぐことができるかもしれません。
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