協力工場の意味と英語表現
協力工場とは、製造委託している社外の別会社やその製品を製造している仕入先のことを意味する用語で、自社で作っていないにも関わらず自社ブランド品であることを匂わせる非常に便利な表現ですが、使われ方にはかなり違いがあります。英語では、日本語のもつ協力工場の微妙な違いを下表のように実際に意味している内容によって使い分けることができます。
英語 | 意味 |
---|---|
Subcontract factory | 下請先となる外注工場 |
Partner factory | 製造委託先となる外注工場 |
Supplier | 仕入先。自社が開発・製造等には関与していない場合も含まれる |
OEM partner | 自社ブランドで主として完成品製造を委託している会社。OEMの場合は、協力工場で生産しているとは言わないことが多い。 |
ポイントは、日本語における協力工場というのは自社との資本関係がまったくない相手に対して使うということです。子会社や関連会社などの自社資本が入っている会社は、自社グループ=自社一員となりますので、わざわざこのような言葉を使わずとも「自社で製造している」と言い切ることができます。販売者にとっては一つのアピールポイントです。
ただしひとつの取引先として協力工場という用語を使う場合、自社の関与の程度は、文脈や使う人によってかなり幅があります。
- 1.設計・製法を協力工場へ提供していたり、材料支給している。製造するための設備も貸与、ノウハウも提供。いわゆる完全な下請先。
- 2.一部技術供与を行っているが協力工場側がもともと持つ技術や製法も活用されている。
- 3.協力工場側で開発・製造すべて行っており、自社は完成品を仕入れているだけで製造・開発など技術的内容には自社は関与していないか、ごくわずかな関与。
自社が設計や材料支給・品質管理にも一切関与しておらず単なる仕入れをしているが、自社ブランドで販売しているため、協力工場という表現を使ったほうが通りが良く聞こえるという理由で使われる場合も多々あります。
販売者が開発や製造に関与していると匂わせることで信用やブランドイメージを維持したいようなケースでも使われます。
何らかのブランドや実績を持つメーカーがすべての製品を自社で作っているということは自社工場を持つメーカーであっても規模が大きくなるほど稀で、多くは下請事業者に部分的あるいは製品のすべての製造を委託しています。理由は固定費が断然安くなることや容易に工場用地を取得して工場建屋・設備を増やせない中、外注先であれば取引先を増やすことでそれが実現可能となります。また、需要の増減にあわせ自社工場の場合、設備や人員の増減が難しい反面、協力工場といった外注先の場合は調整がしやすいというメリットもあります。
また売上規模を大きくしたり、収益を上げていくには協力工場をいかに増やしていくか、という点が重要な要素となります。
ただ「協力工場」にもピンからキリまであるとおり、発注元がいかにコントロールしていても、メーカー視点で見た場合、「自社工場での製造」とは技術・製造・品質のレベルは大きく異なることが通例です。
メーカーの場合、品質レベルの優劣というのは、自社工場≧子会社の工場>関連会社の工場>協力工場(下請先)の順番で低くなっていくことがあります。マザー工場たる自社工場や資本が入っている子会社の場合は本社から人を送り込んでいますし、同一の会社であるため技術供与・製造技術の提供にも障害がありません。まさにそのメーカーにおける最高品質のものが最高のレベルで作ることができる工場ということになります。
こうした意味で「協力工場」という用語には、表向きの「自社が関与しているので安心です」というニュアンスと、実態として「自社とは資本関係のない会社へ外注もしくは完全に仕入れたものを販売しています」という相反する二つの意味合いが存在していることになります。
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