薄板ばね用(CSPバネ)の材料、ばね用冷間圧延鋼帯の種類

2013年6月14日更新

薄板ばねやぜんまいばねに使用される鋼帯について規定した規格で、他の鉄鋼材料の規格にはない炭素含有量が特に多い高炭素鋼について規定されています。S60C、S65C、S70Cというような機械構造用炭素鋼にない材料記号を見た場合は、おおむねこの規格で規定されている材料を指しています。

この鋼材は、元々ばね用を想定している為、ばね特性を発揮できるかどうかという点がこの材料にとっては重要事項となります。すなわち、力を加えると変形し(たわみ)、元に戻る性質、エネルギーを蓄積するとともに放出する性質、固有の振動数を持つ性質の3つの性質です。

ばね用と銘打っているものの、他の規格材と同様、ばね専用というわけではなく、高炭素鋼が求められる状況では他の用途でも使うことが出来ます。

この鋼は「帯」(Strip)のみの形状となりますが、他規格の材料記号と区別する為、冷間圧延鋼帯を意味するCold-rolled steel strip for springsの頭文字をとって、末尾にCSPがつきます。材料記号としては、S60C-CSPといった表記となりますが、稀にCSPを略す場合もあります。この場合、S60Cなどは他の規格では規定されていないため、概ね区別がつきますが、機械構造用炭素鋼として同じ材料記号のあるS50CやS55C、SK85、SK95、SUP10などは区別がつかなくなりますので、末尾にCSPをつける必要があります。

薄板ばね材料、CSPばね材料の特徴|ばね用に規定された冷間圧延鋼帯

ばね用冷間圧延鋼帯の熱処理記号、調質のタイプ

JISでは8種類の材料が規定されており、末尾には調質記号A、R、H、Bのいずれかがつきます。熱処理(調質)によって硬度が規定されています。

薄板ばね材料の熱処理記号
A 焼き鈍しをしたもの
R 冷間圧延のままのもの
H 焼入れ焼戻しをしたもの
B オーステンパをしたもの

AとRの場合は、特に指定や取り決めがない場合、表面はブライト仕上げとなります。

ばね用冷間圧延鋼帯の機械的性質に関する規定

炭素量が多く、最硬鋼に分類される硬い鉄鋼材料となりますが、炭素鋼は0.6%をこえると、硬度にはあまり大きな差が出にくくなってきます。

ばねとして用いることを想定されているため、材料別に硬度について規定されていますが、引張強さなどの規定は無く、かわりに横曲がりの規定がある等、他の規格には無い特徴があります。

ばね用冷間圧延鋼帯の比重

比重についても特に規定はありませんが、成分から概算を算出することはできます。

鉄鋼材料の基本となる比重である7.876を基準に、含有している炭素量の加太から概算を割り出す方法としては、以下の計算式があります。

  • 比重=7.876−0.030×炭素(%)

薄板ばね材料の硬度について

硬度の規定のうち、R、H、Bについては、中心値として硬度を指定してもよい範囲を示しています。

硬度の許容差は、施されている熱処理によって異なり、Rについては±20HV、HとBについては±25HVとなっており、いずれも1条内の硬さのばらつきは、30HV以内と定められています。またAについても硬さのばらつきは、30HV以内となっています。

ばね用の冷間圧延鋼帯の標準厚さと許容寸法差

ばね用の冷間圧延鋼帯の標準厚さと許容寸法差(mm)
標準厚さ 厚さ(範囲) 許容差 許容差ET(幅80mm未満)
当事者間で取り決め可能なより厳しい許容差
幅200mm未満 幅200mm以上600mm未満
- 0.10未満 ±0.008 - ±0.006
0.10、0.12 0.10以上0.15未満 ±0.010 - ±0.008
0.15、0.20 0.15以上0.25未満 ±0.015 ±0.020 ±0.010
0.25、0.28、0.30、0.35 0.25以上0.40未満 ±0.020 ±0.025 ±0.015
0.40、0.45、0.50、0.55 0.40以上0.60未満 ±0.025 ±0.030 ±0.020
0.60、0.70、0.80 0.60以上0.90未満 ±0.030 ±0.040 ±0.025
0.90、1.00、1.10 0.90以上1.20未満 ±0.040 ±0.050 ±0.035
1.20、1.40 1.20以上1.60未満 ±0.050 ±0.060 -
1.60、1.80、2.00 1.60以上2.10未満 ±0.055 ±0.070 -
2.20、2.50、2.80 2.10以上3.00未満 ±0.065 ±0.080 -
3.00、3.50、4.00 3.00以上4.00以下 ±0.080 ±0.090 -

ばね用として規格化されている冷間圧延鋼帯の幅の許容差

この範囲外のサイズを持つ鋼帯(厚さが0.25mm未満、厚さ4mmを超える、幅600mm以上などの鋼帯)については、当事者間での取り決めによるため、規格には規定されていません。

ばね用冷間圧延鋼帯の幅の許容差
厚さ
80mm未満 80mm以上200mm未満 200mm以上600mm未満
0.25以上0.60未満 ±0.10 ±0.15 ±0.25
0.60以上1.20未満 ±0.15 ±0.20 ±0.30
1.20以上4.00以下 ±0.20 ±0.25 ±0.40

板の長さの許容差は、2000mm未満のものと2000mm以上4000mm未満の区分でまず分かれています。

長さの許容差
長さ
200mm未満 200mm以上600mm未満
2000mm未満 +5
0
+10
0
2000mm以上4000mm未満 +10
0
+20
0

ばね用冷間圧延鋼帯の横曲がりについて

冷間圧延鋼帯のうち、ばね用のものに固有の規格として横曲がり(反り)のパラメータがあります。長さ1000mmあたりのしなりの最大値を規定したもので、両端については適用除外となります。熱処理(調質)の種類によって鋼材の硬さも変わるため、異なる規格値が適用されます。

横曲がり(反り)の最大値(単位:mm)
調質(熱処理)
5以上10未満 10以上20未満 20以上40未満 40以上80未満 80以上
A(焼鈍し)、R(冷間圧延したまま) - 8 6 3 1
B(オーステンパ) - 5 5 2 1
H(焼入れ焼戻し) 2 2 2 2 1

「JIS G 4802 ばね用冷間圧延鋼帯」に規定のある材料記号

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