S55C-CSPの成分、比重、硬度、引張強さ|ばね用冷間圧延鋼帯に規定されたS55Cの物性
ばね用の冷間圧延鋼の場合、S50Cの次のグレードはS55Cとなります。同じく機械構造用炭素鋼としての規格で同じ名称の材料があり、成分は基本同じですが、ばね用についてのみ主要5元素である炭素、シリコン、マンガン、リン、硫黄以外の成分の下限の値が設けられています。
薄板ばねを想定した鋼材のため、板金ではわりとよく目にする規格ですが、一般的なバネとしてはばね鋼鋼材としてSUP材のほうがよく知られます。硬度の中心値については、S50Cのものと違いはほとんどありません。
S55C-CSPの特性
S55C-CSPの成分
材料記号 | C | Si | Mn | P | S | Cu | Ni | Cr | Ni+Cr | V |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
S55C-CSP | 0.52から0.58 | 0.15から0.35 | 0.60から0.90 | 0.030以下 | 0.035以下 | 0.30以下 | 0.20以下 | 0.20以下 | 0.35以下 | - |
A | 焼き鈍しをしたもの |
---|---|
R | 冷間圧延のままのもの |
H | 焼入れ焼戻しをしたもの |
B | オーステンパをしたもの |
AとRの場合は、特に指定や取り決めがない場合、表面はブライト仕上げとなります。表記はS55C-CSP A、S55C-CSP Hといった形になります。
S55C-CSPの比重
比重について特に規定はありませんが、成分から概算を算出することはできます。
鉄鋼材料の基本となる比重である7.876を基準に、含有している炭素量の加太から概算を割り出す方法としては、以下の計算式があります。
- 比重=7.876−0.030×炭素(%)
S55C-CSPの硬度について
硬度の規定のうち、R、H、Bについては、中心値として硬度を指定してもよい範囲を示しています。
硬度の許容差は、施されている熱処理によって異なり、Rについては±20HV、HとBについては±25HVとなっており、いずれも1条内の硬さのばらつきは、30HV以内と定められています。またAについても硬さのばらつきは、30HV以内となっています。
材料記号 | 硬度(HV) 焼き鈍し(A) |
硬度(HV) 冷間圧延のまま(R) |
硬度(HV) 焼入焼戻し(H) |
硬度(HV) オーステンパ(B) |
---|---|---|---|---|
S55C-CSP | 180以下 | 230から270 | 350から450 | 360から440 |
ばね用の冷間圧延鋼帯の標準厚さと許容寸法差
標準厚さ | 厚さ(範囲) | 許容差 | 許容差ET(幅80mm未満) 当事者間で取り決め可能なより厳しい許容差 |
|
---|---|---|---|---|
幅200mm未満 | 幅200mm以上600mm未満 | |||
- | 0.10未満 | ±0.008 | - | ±0.006 |
0.10、0.12 | 0.10以上0.15未満 | ±0.010 | - | ±0.008 |
0.15、0.20 | 0.15以上0.25未満 | ±0.015 | ±0.020 | ±0.010 |
0.25、0.28、0.30、0.35 | 0.25以上0.40未満 | ±0.020 | ±0.025 | ±0.015 |
0.40、0.45、0.50、0.55 | 0.40以上0.60未満 | ±0.025 | ±0.030 | ±0.020 |
0.60、0.70、0.80 | 0.60以上0.90未満 | ±0.030 | ±0.040 | ±0.025 |
0.90、1.00、1.10 | 0.90以上1.20未満 | ±0.040 | ±0.050 | ±0.035 |
1.20、1.40 | 1.20以上1.60未満 | ±0.050 | ±0.060 | - |
1.60、1.80、2.00 | 1.60以上2.10未満 | ±0.055 | ±0.070 | - |
2.20、2.50、2.80 | 2.10以上3.00未満 | ±0.065 | ±0.080 | - |
3.00、3.50、4.00 | 3.00以上4.00以下 | ±0.080 | ±0.090 | - |
ばね用として規格化されている冷間圧延鋼帯の幅の許容差
この範囲外のサイズを持つ鋼帯(厚さが0.25mm未満、厚さ4mmを超える、幅600mm以上などの鋼帯)については、当事者間での取り決めによるため、規格には規定されていません。
厚さ | 幅 | ||
---|---|---|---|
80mm未満 | 80mm以上200mm未満 | 200mm以上600mm未満 | |
0.25以上0.60未満 | ±0.10 | ±0.15 | ±0.25 |
0.60以上1.20未満 | ±0.15 | ±0.20 | ±0.30 |
1.20以上4.00以下 | ±0.20 | ±0.25 | ±0.40 |
板の長さの許容差は、2000mm未満のものと2000mm以上4000mm未満の区分でまず分かれています。
長さ | 幅 | |
---|---|---|
200mm未満 | 200mm以上600mm未満 | |
2000mm未満 | +5 0 |
+10 0 |
2000mm以上4000mm未満 | +10 0 |
+20 0 |
ばね用冷間圧延鋼帯の横曲がりについて
冷間圧延鋼帯のうち、ばね用のものに固有の規格として横曲がり(反り)のパラメータがあります。長さ1000mmあたりのしなりの最大値を規定したもので、両端については適用除外となります。熱処理(調質)の種類によって鋼材の硬さも変わるため、異なる規格値が適用されます。
調質(熱処理) | 幅 | ||||
---|---|---|---|---|---|
5以上10未満 | 10以上20未満 | 20以上40未満 | 40以上80未満 | 80以上 | |
A(焼鈍し)、R(冷間圧延したまま) | - | 8 | 6 | 3 | 1 |
B(オーステンパ) | - | 5 | 5 | 2 | 1 |
H(焼入れ焼戻し) | 2 | 2 | 2 | 2 | 1 |
「JIS G 4802 ばね用冷間圧延鋼帯」に規定のある材料記号
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