S50C-CSPの成分、比重、硬度、引張強さ|ばね用冷間圧延鋼帯に規定されたS50Cの物性
ばね用に規定されたS50Cは、機械構造用のものと基本の鋼の五元素の部分では相違ありませんが、ばね用のほうがより細かい成分指定があり、具体的には銅、ニッケル、クロム、ニッケルとクロムの合計値が規定の値以下であることが求められます。
硬度については、ばねの性能に直結する部分でもあるため、熱処理の違いによって別々の値が設定されています。
なお、図面などで指定する場合は必ず末尾のCSPや熱処理の種類まで明記すべきです。末尾にCSPがつかねば、そもそもどちらの鋼材なのか判別もできなくなります(使われている鋼材の寸法であたりをつけることはできますが…)。
S50C-CSPの特性
S50C-CSPの成分
材料記号 | C | Si | Mn | P | S | Cu | Ni | Cr | Ni+Cr | V |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
S50C-CSP | 0.47から0.53 | 0.15から0.35 | 0.60から0.90 | 0.030以下 | 0.035以下 | 0.30以下 | 0.20以下 | 0.20以下 | 0.35以下 | - |
A | 焼き鈍しをしたもの |
---|---|
R | 冷間圧延のままのもの |
H | 焼入れ焼戻しをしたもの |
B | オーステンパをしたもの |
AとRの場合は、特に指定や取り決めがない場合、表面はブライト仕上げとなります。表記はS50C-CSP A、S50C-CSP Hといった形になります。
S50C-CSPの比重
比重について特に規定はありませんが、成分から概算を算出することはできます。
鉄鋼材料の基本となる比重である7.876を基準に、含有している炭素量の加太から概算を割り出す方法としては、以下の計算式があります。
- 比重=7.876−0.030×炭素(%)
S50C-CSPの硬度について
硬度の規定のうち、R、H、Bについては、中心値として硬度を指定してもよい範囲を示しています。
硬度の許容差は、施されている熱処理によって異なり、Rについては±20HV、HとBについては±25HVとなっており、いずれも1条内の硬さのばらつきは、30HV以内と定められています。またAについても硬さのばらつきは、30HV以内となっています。
材料記号 | 硬度(HV) 焼き鈍し(A) |
硬度(HV) 冷間圧延のまま(R) |
硬度(HV) 焼入焼戻し(H) |
硬度(HV) オーステンパ(B) |
---|---|---|---|---|
S50C-CSP | 180以下 | 230から270 | - | 360から440 |
ばね用の冷間圧延鋼帯の標準厚さと許容寸法差
標準厚さ | 厚さ(範囲) | 許容差 | 許容差ET(幅80mm未満) 当事者間で取り決め可能なより厳しい許容差 |
|
---|---|---|---|---|
幅200mm未満 | 幅200mm以上600mm未満 | |||
- | 0.10未満 | ±0.008 | - | ±0.006 |
0.10、0.12 | 0.10以上0.15未満 | ±0.010 | - | ±0.008 |
0.15、0.20 | 0.15以上0.25未満 | ±0.015 | ±0.020 | ±0.010 |
0.25、0.28、0.30、0.35 | 0.25以上0.40未満 | ±0.020 | ±0.025 | ±0.015 |
0.40、0.45、0.50、0.55 | 0.40以上0.60未満 | ±0.025 | ±0.030 | ±0.020 |
0.60、0.70、0.80 | 0.60以上0.90未満 | ±0.030 | ±0.040 | ±0.025 |
0.90、1.00、1.10 | 0.90以上1.20未満 | ±0.040 | ±0.050 | ±0.035 |
1.20、1.40 | 1.20以上1.60未満 | ±0.050 | ±0.060 | - |
1.60、1.80、2.00 | 1.60以上2.10未満 | ±0.055 | ±0.070 | - |
2.20、2.50、2.80 | 2.10以上3.00未満 | ±0.065 | ±0.080 | - |
3.00、3.50、4.00 | 3.00以上4.00以下 | ±0.080 | ±0.090 | - |
ばね用として規格化されている冷間圧延鋼帯の幅の許容差
この範囲外のサイズを持つ鋼帯(厚さが0.25mm未満、厚さ4mmを超える、幅600mm以上などの鋼帯)については、当事者間での取り決めによるため、規格には規定されていません。
厚さ | 幅 | ||
---|---|---|---|
80mm未満 | 80mm以上200mm未満 | 200mm以上600mm未満 | |
0.25以上0.60未満 | ±0.10 | ±0.15 | ±0.25 |
0.60以上1.20未満 | ±0.15 | ±0.20 | ±0.30 |
1.20以上4.00以下 | ±0.20 | ±0.25 | ±0.40 |
板の長さの許容差は、2000mm未満のものと2000mm以上4000mm未満の区分でまず分かれています。
長さ | 幅 | |
---|---|---|
200mm未満 | 200mm以上600mm未満 | |
2000mm未満 | +5 0 |
+10 0 |
2000mm以上4000mm未満 | +10 0 |
+20 0 |
ばね用冷間圧延鋼帯の横曲がりについて
冷間圧延鋼帯のうち、ばね用のものに固有の規格として横曲がり(反り)のパラメータがあります。長さ1000mmあたりのしなりの最大値を規定したもので、両端については適用除外となります。熱処理(調質)の種類によって鋼材の硬さも変わるため、異なる規格値が適用されます。
調質(熱処理) | 幅 | ||||
---|---|---|---|---|---|
5以上10未満 | 10以上20未満 | 20以上40未満 | 40以上80未満 | 80以上 | |
A(焼鈍し)、R(冷間圧延したまま) | - | 8 | 6 | 3 | 1 |
B(オーステンパ) | - | 5 | 5 | 2 | 1 |
H(焼入れ焼戻し) | 2 | 2 | 2 | 2 | 1 |
「JIS G 4802 ばね用冷間圧延鋼帯」に規定のある材料記号
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