S50C-CSPの成分、比重、硬度、引張強さ|ばね用冷間圧延鋼帯に規定されたS50Cの物性

2013年6月14日更新

ばね用に規定されたS50Cは、機械構造用のものと基本の鋼の五元素の部分では相違ありませんが、ばね用のほうがより細かい成分指定があり、具体的には銅、ニッケル、クロム、ニッケルとクロムの合計値が規定の値以下であることが求められます。

硬度については、ばねの性能に直結する部分でもあるため、熱処理の違いによって別々の値が設定されています。

なお、図面などで指定する場合は必ず末尾のCSPや熱処理の種類まで明記すべきです。末尾にCSPがつかねば、そもそもどちらの鋼材なのか判別もできなくなります(使われている鋼材の寸法であたりをつけることはできますが…)。

S50C-CSPの特性

S50C-CSPの成分

S50C-CSPの成分
材料記号 C Si Mn P S Cu Ni Cr Ni+Cr V
S50C-CSP 0.47から0.53 0.15から0.35 0.60から0.90 0.030以下 0.035以下 0.30以下 0.20以下 0.20以下 0.35以下 -
S50C-CSPの熱処理記号
A 焼き鈍しをしたもの
R 冷間圧延のままのもの
H 焼入れ焼戻しをしたもの
B オーステンパをしたもの

AとRの場合は、特に指定や取り決めがない場合、表面はブライト仕上げとなります。表記はS50C-CSP A、S50C-CSP Hといった形になります。

S50C-CSPの比重

比重について特に規定はありませんが、成分から概算を算出することはできます。

鉄鋼材料の基本となる比重である7.876を基準に、含有している炭素量の加太から概算を割り出す方法としては、以下の計算式があります。

  • 比重=7.876−0.030×炭素(%)

S50C-CSPの硬度について

硬度の規定のうち、R、H、Bについては、中心値として硬度を指定してもよい範囲を示しています。

硬度の許容差は、施されている熱処理によって異なり、Rについては±20HV、HとBについては±25HVとなっており、いずれも1条内の硬さのばらつきは、30HV以内と定められています。またAについても硬さのばらつきは、30HV以内となっています。

S50C-CSPの硬度、硬さの一覧(熱処理別)
材料記号 硬度(HV)
焼き鈍し(A)
硬度(HV)
冷間圧延のまま(R)
硬度(HV)
焼入焼戻し(H)
硬度(HV)
オーステンパ(B)
S50C-CSP 180以下 230から270 - 360から440

ばね用の冷間圧延鋼帯の標準厚さと許容寸法差

ばね用の冷間圧延鋼帯の標準厚さと許容寸法差(mm)
標準厚さ 厚さ(範囲) 許容差 許容差ET(幅80mm未満)
当事者間で取り決め可能なより厳しい許容差
幅200mm未満 幅200mm以上600mm未満
- 0.10未満 ±0.008 - ±0.006
0.10、0.12 0.10以上0.15未満 ±0.010 - ±0.008
0.15、0.20 0.15以上0.25未満 ±0.015 ±0.020 ±0.010
0.25、0.28、0.30、0.35 0.25以上0.40未満 ±0.020 ±0.025 ±0.015
0.40、0.45、0.50、0.55 0.40以上0.60未満 ±0.025 ±0.030 ±0.020
0.60、0.70、0.80 0.60以上0.90未満 ±0.030 ±0.040 ±0.025
0.90、1.00、1.10 0.90以上1.20未満 ±0.040 ±0.050 ±0.035
1.20、1.40 1.20以上1.60未満 ±0.050 ±0.060 -
1.60、1.80、2.00 1.60以上2.10未満 ±0.055 ±0.070 -
2.20、2.50、2.80 2.10以上3.00未満 ±0.065 ±0.080 -
3.00、3.50、4.00 3.00以上4.00以下 ±0.080 ±0.090 -

ばね用として規格化されている冷間圧延鋼帯の幅の許容差

この範囲外のサイズを持つ鋼帯(厚さが0.25mm未満、厚さ4mmを超える、幅600mm以上などの鋼帯)については、当事者間での取り決めによるため、規格には規定されていません。

ばね用冷間圧延鋼帯の幅の許容差
厚さ
80mm未満 80mm以上200mm未満 200mm以上600mm未満
0.25以上0.60未満 ±0.10 ±0.15 ±0.25
0.60以上1.20未満 ±0.15 ±0.20 ±0.30
1.20以上4.00以下 ±0.20 ±0.25 ±0.40

板の長さの許容差は、2000mm未満のものと2000mm以上4000mm未満の区分でまず分かれています。

長さの許容差
長さ
200mm未満 200mm以上600mm未満
2000mm未満 +5
0
+10
0
2000mm以上4000mm未満 +10
0
+20
0

ばね用冷間圧延鋼帯の横曲がりについて

冷間圧延鋼帯のうち、ばね用のものに固有の規格として横曲がり(反り)のパラメータがあります。長さ1000mmあたりのしなりの最大値を規定したもので、両端については適用除外となります。熱処理(調質)の種類によって鋼材の硬さも変わるため、異なる規格値が適用されます。

横曲がり(反り)の最大値(単位:mm)
調質(熱処理)
5以上10未満 10以上20未満 20以上40未満 40以上80未満 80以上
A(焼鈍し)、R(冷間圧延したまま) - 8 6 3 1
B(オーステンパ) - 5 5 2 1
H(焼入れ焼戻し) 2 2 2 2 1

「JIS G 4802 ばね用冷間圧延鋼帯」に規定のある材料記号

スポンサーリンク

>このページ「S50C-CSPの成分、比重、硬度、引張強さ|ばね用冷間圧延鋼帯に規定されたS50Cの物性」の先頭へ

加工材料の性質と特徴(目次)へ戻る

S50C-CSPの成分、比重、硬度、引張強さ|ばね用冷間圧延鋼帯に規定されたS50Cの物性の関連記事とリンク

鋼、鉄、鋳鉄はそれぞれ何が違うか
鉄鋼、鉄、炭素鋼、ステンレス、鋳鉄、超硬の熱膨張係数
金属の熱伝導率の一覧表
鉄鋼材料、鉄、炭素鋼、工具鋼の比重
鉄鋼、炭素鋼、鋳鉄、純鉄、ステンレスの熱伝導率
鉄鋼、鉄、炭素鋼、ステンレス、ハイスの比熱
鉄鋼、鉄、炭素鋼、ステンレスの電気抵抗
金属単体の比重、密度の一覧表
金属の融点、沸点の一覧表
金属の熱伝導率の一覧表
金属材料の硬度の一覧と比較
鉄鋼材料の種類
炭素鋼と合金鋼の違いと使い分け
合金元素の果たす役割
鉄鋼、炭素鋼、合金鋼の焼入れ深さ
焼入れ性とは

このサイトについて

当サイトの記事はすべて工業製品のメーカーの実務経験者が執筆しています。

砥石メーカーの製品や技術を紹介するサイトとしてはじまりましたが、加工技術・工具・研削・研磨に関わる情報から派生し、ユーザーの問い合わせに応じて鉄鋼、非鉄、貴金属、セラミックス、プラスチック、ゴム、繊維、木材、石材等製造に使用する材料・ワークの基礎知識についても掲載するようになりました。その後、技術情報に限らず、製造業で各分野の職種・仕事を進めるうえで役立つノウハウも提供しています。

製造、生産技術、設備技術、金型技術、試作、実験、製品開発、設計、環境管理、安全、品質管理、営業、貿易、経理、購買調達、資材、生産管理、在庫管理、物流など製造業に関わりのあるさまざまな仕事や調べものの一助になれば幸いです。

工業情報リンク集

工業分野のメーカーや商社を中心に、技術、規格、ものづくりに広く関わりのあるリンクを集めています。工業製品の生産に必要とされる加工技術や材料に関する知識、マーケティングから製品企画、開発、販売戦略、輸出入、物流、コスト低減、原価管理等、事業運営に必要な知識には共通項があります。

研磨、研削、砥石リンク集