SPCEの規格、板厚、成分、比重、寸法・サイズ、引張強さ|冷間圧延鋼板
SPCEは加工性に優れた冷間圧延鋼板の中でも、特に成形性・加工性に富んだ鋼板で、深絞り加工用の鋼板ともいわれます。伸びの値も高く、他の鋼板では無理に成形すると破損してしまうようなシーンでも活躍します。但し、強度は通常の冷延鋼板にはあまり期待することはできないため、強度の要求される構造用途などには不向きです。加工性を活かし、自動車フェンダーに使われることもあります。
SPCEの比重
鋼板は一律、7.85となります。この値を元に、鋼板の重量を計算することができます。熱間圧延鋼板も同様に7.85を比重としており、特殊な処理や元素、成分を含んでいない限り、鋼板の場合はほぼ同じと考えられます。
SPCEの成分
鋼板の種類、記号 | C(炭素) | Mn(マンガン) | P(リン) | S(硫黄) |
---|---|---|---|---|
SPCE | 0.08以下 | 0.45以下 | 0.030以下 | 0.030以下 |
SPCEの引張強さ、降伏点、耐力、伸び
鋼板の種類 | 引張強さ(N/mm2) | 降伏点、耐力(N/mm2) | 伸び(%) | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
板厚(mm) | |||||||||
0.25以上0.30未満 | 0.30以上0.40未満 | 0.40以上0.60未満 | 0.60以上1.0未満 | 1.0以上1.6未満 | 1.6以上2.5未満 | 2.5以上 | |||
SPCE | 270以上 | 220以下 | 32以上 | 35以上 | 38以上 | 40以上 | 41以上 | 42以上 | 43以上 |
SPCEの板厚
SPCEの標準の板厚としては下表のものになります。
板厚(単位:mm) |
---|
0.4 |
0.5 |
0.6 |
0.7 |
0.8 |
0.9 |
1.0 |
1.2 |
1.4 |
1.6 |
1.8 |
2.0 |
2.3 |
2.5 |
2.6※ |
2.8 |
2.9※ |
3.2 |
板厚の範囲(mm) | 板厚の幅(mm) | ||||
---|---|---|---|---|---|
630未満 | 630以上1000未満 | 1000以上1250未満 | 1250以上1600未満 | 1600以上 | |
0.25未満 | ±0.03 | ±0.03 | ±0.03 | − | − |
0.25以上0.40未満 | ±0.04 | ±0.04 | ±0.04 | − | − |
0.40以上0.60未満 | ±0.05 | ±0.05 | ±0.05 | ±0.06 | − |
0.60以上0.80未満 | ±0.06 | ±0.06 | ±0.06 | ±0.06 | ±0.07 |
0.80以上1.00未満 | ±0.06 | ±0.06 | ±0.07 | ±0.08 | ±0.09 |
1.00以上1.25未満 | ±0.07 | ±0.07 | ±0.08 | ±0.09 | ±0.11 |
1.25以上1.60未満 | ±0.08 | ±0.09 | ±0.10 | ±0.11 | ±0.13 |
1.60以上2.00未満 | ±0.10 | ±0.11 | ±0.12 | ±0.13 | ±0.15 |
2.00以上2.50未満 | ±0.12 | ±0.13 | ±0.14 | ±0.15 | ±0.17 |
2.50以上3.15未満 | ±0.14 | ±0.15 | ±0.16 | ±0.17 | ±0.20 |
3.15以上 | ±0.16 | ±0.17 | ±0.19 | ±0.20 | − |
板厚の範囲(mm) | 板厚の幅(mm) | |||
---|---|---|---|---|
160未満 | 160以上250未満 | 250以上400未満 | 400以上630未満 | |
0.10未満 | ±0.010 | ±0.020 | − | − |
0.10以上0.16未満 | ±0.015 | ±0.020 | − | − |
0.16以上0.25未満 | ±0.020 | ±0.025 | ±0.030 | ±0.030 |
0.25以上0.40未満 | ±0.025 | ±0.030 | ±0.035 | ±0.035 |
0.40以上0.60未満 | ±0.035 | ±0.040 | ±0.040 | ±0.040 |
0.60以上0.80未満 | ±0.040 | ±0.045 | ±0.045 | ±0.045 |
0.80以上1.00未満 | ±0.04 | ±0.05 | ±0.05 | ±0.05 |
1.00以上1.25未満 | ±0.05 | ±0.05 | ±0.05 | ±0.06 |
1.25以上1.60未満 | ±0.05 | ±0.06 | ±0.06 | ±0.06 |
1.60以上2.00未満 | ±0.06 | ±0.07 | ±0.08 | ±0.08 |
2.00以上2.50未満 | ±0.07 | ±0.08 | ±0.08 | ±0.09 |
2.50以上3.15未満 | ±0.08 | ±0.09 | ±0.09 | ±0.10 |
3.15以上 | ±0.09 | ±0.10 | ±0.10 | ±0.11 |
SPCEの幅の許容公差
ストレッチャーレベラー仕上鋼板(歪み矯正がなされている鋼板)はプラス側の公差の規定がありません。冷間圧延鋼板の寸法許容差は、厚みだけでなく、幅、長さともに規定があります。精度は熱間圧延鋼板よりも高くなります。
幅1250mm未満 | 幅1250mm以上 |
---|---|
+7, 0 | +10, 0 |
幅1250mm未満 | 幅1250mm以上 |
---|---|
+3, 0 | +4, 0 |
板厚(mm) | 板の幅(mm) | |||
---|---|---|---|---|
160未満 | 160以上250未満 | 250以上400未満 | 400以上630未満 | |
0.60未満 | ±0.15 | ±0.20 | ±0.25 | ±0.30 |
0.60以上1.00未満 | ±0.20 | ±0.25 | ±0.25 | ±0.30 |
1.00以上1.60未満 | ±0.20 | ±0.30 | ±0.30 | ±0.40 |
1.60以上2.50未満 | ±0.25 | ±0.35 | ±0.40 | ±0.50 |
2.50以上4.00未満 | ±0.30 | ±0.40 | ±0.45 | ±0.50 |
4.00以上5.00未満 | ±0.40 | ±0.50 | ±0.55 | ±0.65 |
SPCEの長さの許容公差
こちらについても他の冷延鋼板と同様に、ストレッチャーレベラー仕上鋼板はプラス側の公差規定はありません。
長さ | 許容公差 |
---|---|
2000未満 | +10, 0 |
2000以上4000未満 | +15, 0 |
4000以上6000未満 | +20, 0 |
長さ | 許容公差 |
---|---|
1000未満 | +3, 0 |
1000以上2000未満 | +4, 0 |
2000以上3000未満 | +6, 0 |
3000以上4000未満 | +8, 0 |
SPCEの調質記号と硬度、伸び
下表の引張強さと伸びは、厚さ0.25mm以上幅30mm以上に適用されます。
調質の種類 | 調質記号 | 硬度:ロックウェル硬さ(HRBS、HRBW) | 硬度:ビッカース硬さ(HV) | 引張強さ(N/mm2) | 伸び(%) |
---|---|---|---|---|---|
焼きなました状態のまま | A | 57以下 | 105以下 | − | − |
標準調質 | S | 65以下 | 115以下 | − | − |
1/8硬質(SPCCのみ) | 8 | 50〜71 | 95〜130 | 290〜410 | 25以上 |
1/4硬質(SPCCのみ) | 4 | 65〜80 | 115〜150 | 370〜490 | 10以上 |
1/2硬質(SPCCのみ) | 2 | 74〜89 | 135〜185 | 440〜590 | − |
硬質 | 1 | 85以上 | 170以上 | 550以上 | − |
SPCEの表面仕上げ
表面仕上げは、焼きなましのままの状態である調質記号「A」がついた鋼板には適用しません。
仕上げの種類 | 表面仕上げ記号 | 詳細 |
---|---|---|
ダル仕上げ | D | つや消し仕上げ。物理的、もしくは化学的に表面を粗くしたロールで仕上げる。 |
ブライト仕上げ | B | 滑らかなロールで表面を平滑に仕上げたもの。 |
「JIS G 3141 冷間圧延鋼板及び鋼帯」に規定のある鋼板の種類と材料記号
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