1パレットは何キロまでにすべきか
1パレットの最大重量を何キロに設定すべきかというのは、貿易担当や輸出入担当の頭を悩ませる問題のひとつです。20ftコンテナ使用前提の約1m3のパレットなら1,000kg以内としておけば、重量・容積ともにクリアとなりますが、事はそう簡単でもありません。
取り決めがない場合、何を基準にするか
明確な基準が社内で決まっていたり、取引相手との間で取り交わす梱包仕様で規定されていたりといった場合はそれに従うので気にすべき問題とはなりませんが、自分の判断や裁量でいかようにも設定できてしまう場合、今回の重量はどう設定すべきか、あるいは社内や取引先との間でどのような重量基準の取り決めをするかという問題が立ちはだかります。
輸送時のパレットは樹脂製、木製、スチール製、ダンボール製等がありますが、いずれも持ち運びせずに動かない状態で段積みできる重量制限値となる静荷重と、1パレットに積むことができる最大重量となる動荷重とがあります。
荷物を積みつける際はまずこの動荷重を超える重さのものは安全上NGとなります。またパレットだけでなく、その上に積む「箱」にも、TP箱のような通い箱、ダンボール箱も種類に応じてどこまでの荷重に耐えられるか耐荷重が決まっていますのでこれらも同様に設定された最大重量を超えることはできません。
またパレットは1つまたは2つの単位でフォークリフトで運ぶことになります。これはコンテナへの出し入れだけでなく、輸出側・輸入側それぞれの倉庫での入庫時点、出庫時点でラックへの出し入れやトラックへの積載も含みます。
したがって、フォークリフトが取り扱える重量上限を超えることもできません。リーチリフトはカウンターリフトに比べて最大荷重が低くなりがちです。
また輸送ルート上で使用する可能性のあるフォークリフトについてこの基準をクリアしないといけないので、仮に2,000kgに設定するなら、すべての物流拠点や輸送ルート上でその重量を扱える必要があります。
輸送手段の耐荷重上限値とすればよいのか
このように1パレットの重量制限は輸送上の制約から導きだすことができますが、安全を確保し製品の品質を維持するという観点で見た場合、すべてを耐荷重の上限やトラックの積載上限に設定するのは危険な行為です。
というのも、パレットや箱というのはそれ単品での耐荷重しか見ておらず、実際の輸送はパレット+箱+荷材(コーナーガード、天板、バンド、シュリンクラップ等)の組み合わせで決まるからです。例えばパレット単品が破壊されることのない重量で運んでいてもパレットに歪みや凹みができて荷崩れが発生、となれば安全な重量というわけにはいきません。
箱も同様で、面で重量を受けていれば問題がなくとも、荷物の偏りや箱内の充填率の関係で上段パレットの荷重を集中的に受けてしまう部位ができてしまえば、想定よりも大きな力がかかって歪みや破壊されることにもなりかねません。
こう考えると、輸送上のテストを行って決めるのがよいということになりますが、たいていは何らかの事故や事故になりかけるヒヤリハットの事例が起きてから対策を行うことになります。
実際、パレットの積み付けの際は条件が多様で、トライアルでの輸送時には問題がなかったものが後で荷崩れを起こしたというような事例もあります。
段積みの基準を設ける
1パレットの重量制限を例えば、750 kg、800 kg、900 kg、1000 kg等に設定してもその下段に軽いものや充填率の低いものがくると荷崩れや破損のリスクが高くなります。したがって、1パレットの総重量の制限は高めにしておいて、段積みの際に重量のあるパレットに赤テープで印をつけたり、グロス重量をケースマークに記載しておくという方法は有効です。こうした「重量物」であることがわかるパレットを下段に配置する、軽量のパレットを重量物の下に配置しない、といった運用です。
反対に、1パレットの重量制限を設けてもパレット同士の重量や充填率が均一ではないと、よほど軽い設定にでもしない限り、パレット同士の段積みで下段のパレットの荷崩れによってダメージを引き起こすことがあります。
つまり積み付け時、バンニングのやり方についても一定のルールを設けるほうが安全上は効果があります。
1パレットの重量制限はフォークリフトや荷材の耐荷重の低いほうにあわせておくか、20ftなら海上輸送コンテナの上限積載重量に近くなる1000 kgとしておき、段積みにあたっての運用基準を設けて荷崩れを防ぎつつ、輸送コストも抑えるという方法が一つの解です。
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