SNR400Bの規格|JISによるSNR鋼材の強度、機械的性質、降伏点、成分、材質
SNR400Bは建築構造用として規格化されている圧延棒鋼のひとつです。アンカーボルトへの利用がよく知られており、同種のSNR400Aとは引張強さこそ変わりませんが、降伏比が設定されていることや溶接する際に必要となる炭素当量や溶接割れ感受性、衝撃に対するパラメータであるシャルピー吸収エネルギーが盛り込まれている点が大きく違います。
降伏比があることで、変形から破断・破壊までのバッファーが存在することになりますので、鋼材としてのスペックはかなり違ってきます。こうした事情のため、図面等で末尾がAかBかが不明な場合、よく確認したほうがよいでしょう。また、「伸び」の値がよい鋼材というのは、粘りがありますのでセラミックスや石材のように一見硬くても急な衝撃によっていきなり割れたり破壊されたりといったことが起き難いことを意味します。地震の多い日本では建築材料として検討する場合に、重要な指標のひとつとなります。
成分値については、伸びのパラメータや衝撃の吸収に重点が置かれており、鋼材の大きさによって炭素量が変わります。また溶接を考慮してマンガンが多めに添加されている点も特徴といえます。
SNR400Bの成分、材質
SNR鋼材の種類 | 寸法、サイズ(径もしくは対辺距離) | C | Si | Mn | P | S |
---|---|---|---|---|---|---|
SNR400B | 6mm以上50mm以下 | 0.20以下 | 0.35以下 | 0.60から1.40 | 0.030以下 | 0.030以下 |
50mmを超え100mm以下 | 0.22以下 | 0.35以下 | 0.60から1.40 | 0.030以下 | 0.030以下 |
SNR400Bの機械的性質|降伏点、耐力、引張強さ、降伏比、伸び
SNR鋼材の種類 | 降伏点、耐力 N/mm2 |
引張強さ N/mm2 |
降伏比 % |
伸び % |
||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
6mm以上12mm未満 | 12mm以上40mm以下 | 40mmを超え100mm以下 | 6mm以上12mm未満 | 12mm以上100mm以下 | 6mm以上25mmm以下(2号試験片) | 25mmを超え100mm以下(14A号試験片) | ||
SNR400B | 235以上355以下 | 215以上335以下 | 215以上335以下 | 400以上510以下 | - | 80以下 | 21以上 | 22以上 |
SNR400Bのシャルピー吸収エネルギー
SNR400BはSNR400Aと違い、シャルピー衝撃値を見るための指標が追加されます。
SNR鋼材の種類 | 試験温度(℃) | シャルピー吸収エネルギー(J) | 試験片 |
---|---|---|---|
SNR400B | 0℃ | 27以上 | Vノッチ圧延方向 |
SNR400Bの炭素当量、溶接割れ感受性組成
SNR400Bは、炭素当量もしくは取り決めによっては溶接割れ感受性組成のどちらかを納入仕様に盛り込むこともできます。炭素当量の基準値としては、40mm以下で0.36%以下、40mmを超え100mm以下の場合も0.36%以下となります。なお、この炭素当量の計算式としては、以下が用いられます。
- 炭素当量(Ceq)=C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14
溶接割れ感受性組成を用いる場合は、0.26%以下が基準値となり、計算式は以下が適用されます。
- 溶接割れ感受性組成(Pcm)=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B
SNR400B、SNR鋼材の寸法公差、許容公差
径または対辺距離 | 許容差 |
---|---|
6mm以上16mm以下 | +0.5、−0.3 |
16mmを超え32mm以下 | +0.7、−0.3 |
32mmを超え63mm以下 | +1.1、−0.5 |
63mmを超え100mm以下 | +1.8、−0.5 |
「JIS G 3138 建築構造用圧延棒鋼」に規定のある材料記号
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