繊維の強度を示すcN/dtexをGPa、MPa、kgf/mm2、gf/Dへ換算するには|繊維強度の単位の換算方法
繊維の強度は他の材料と同様に引張強さで比較することができますが、使われている単位が少し違いますので、異なる文献やデータを見比べる際には単位の換算が必要になります。
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cN/dtexとN/mm2やMPa、GPa、kgf/mm2の根本的な違い
引張強度とは
まず繊維の強度に限った話ではありませんが、引張強さ、あるいは引張強度とは一言で言えば、両端から引っ張っていき、千切れてしまうときの力のことです。この単位は、N/mm2やMPaが金属材料やプラスチック材料等で一般的に使われますが、これはある太さ(断面積)に対してどれくらいの力で引っ張るかという表示になっています。N/mm2やMPa、GPaはいずれも強度を計測する対象がきっちり1mm2の断面積であることを前提にしています。
太さ(断面積)が1メートルもあるものと、1ミリしかないものでは両端から引っ張っていったとしても千切れるときの力は異なりますので、この断面積=太さがどのくらいのものに対しての「強度」なのかは材料強度の比較検討をする際には重要な要素です。
繊維の太さはテックス(tex)やデシテックス(dtex)|重さと長さから算出
繊維の場合、他の材料と大きく違うのはこのときの「太さ」をはかることが難しい点です。形状が複雑であり、金属やプラスチックのように試験片を1mm2に成形することもほぼできません。その物体を切断したときの正確な断面積が出せないと、この引張強度の計算・比較が困難です。そこで繊維については太さの単位として、長さあたりの重さであるテックス(tex)やデシテックス(dtex)が使われています。
テックスは「1000メートルの重さが1gの糸」の太さです。1テックスは10デシテックスになります。太さ(断面積)が正確には分からないため、これをかわりに用いています。
cN/dtexで表記される引張強度は、太さが1dtexのときに両端から引っ張っていき、千切れるときの力を示しています。MPa、GPaといったパスカル(Pa)表記であれば1mm2の太さのものを両端から引っ張っていき千切れるときの強さを示しているため、換算なしでは比較検討が困難です。
ただし、現実的には1mm2できっちり身が詰まった状態の繊維を作り出すことが難しく実用上も流通していないか存在しないことが多いため、cN/dtexで測定できる繊維同士での比較ではない場合、実用上存在しない理論値となる点に留意する必要があります。
特に天然繊維にはバラつきが大きい点も考慮の必要があります。
繊維の太さは繊度で表現
工業分野での単位はSI(国際単位系)を一般には使いますが、繊維強度を示す場合、SIではない単位が使われます。これは、上述の通り、繊維の太さ(大きさ)をはかるため「繊度」という考え方を使うためです。繊維は他の素材と異なり、空気が含まれていたり、断面形状が複雑であったりすることから、その太さを計測することが難しい事情があります。このため「繊度」によって、「この重さで長さがこれくらいあるもの」(恒重式番手)という見方か、「この長さで重さがこれくらいのもの」(恒長式番手)という見方のいずれかを使って「太さ」をあらわす習慣があります。< /p>
そしてこの繊度についてはSI(国際単位系)に規定がありません。古くは繊度の単位にデニール(D)が使われてきましたが、国際標準化機構であるISOでは、この単位をテックス(tex)と規定しており、日本でもこれに倣い、JIS規格によりテックス方式が制定され、現在はテックスが主として使われています。
cN/dtex、GPa、MPa、kgf/mm2、gf/Dの換算式と各単位の意味
以上から、cN/dtex、GPa、MPa、kgf/mm2、gf/Dの換算式は繊維固有の太さの単位であるテックスを換算するという点と、旧単位であるkgf/mm2、gf/Dを新単位(現行の使用単位)であるcN/dtex、GPa、MPaへ換算するという二つの側面を考慮する必要があります。
単位 | 概要 |
---|---|
cN/dtex | 現単位。センチニュートンデシテックス。繊維の強度表記で使われる。現行の単位。 |
GPa | 現単位。1000 N/mm2(1000 MPa)のことで、kgf/mm2のかわりに使われる。一部のスーパー繊維などの高強度繊維ではこの単位で引張強度を表現。 |
MPa | 現単位。1 N/mm2のことで、kgf/mm2のかわりに使われる |
kgf/mm2 | 旧単位。現在はPa(パスカル)が使われる。kgfはN(ニュートン)へ変更されている。1 kgf = 9.8 N。1 N/mm2は1 MPaのこと。 |
gf/D | 旧単位。1デニールあたりの重量グラムによって強度を表していた。gfやkgfはニュートンへ置き換わり、D(デニール)はtexへ置き換わっているため、現在はN/tex(ニュートンテックス)やcN/dtex(センチニュートンデシテックス)が使われる。古い文献ではよく登場。1 gf = 0.9807cN。1D = 10/9 dtex。 |
cN/dtexをGPa、MPa、kgf/mm2、gf/Dから換算する計算式
- cN/dtex = 0.8826 × gf/D
- cN/dtex = {0.098 / 繊維の密度(g/cm3)} × kgf/mm2
- cN/dtex = {10 / 繊維の密度(g/cm3) } × GPa
gf/DをcN/dtex、GPa、MPa、kgf/mm2から換算する計算式
- gf/D = 1.1133 × cN/dtex
- gf/D = {0.111 / 繊維の密度(g/cm3) } × kgf/mm2
- gf/D = {11.33 / 繊維の密度(g/cm3) } × GPa
kgf/mm2をcN/dtex、GPa、MPa、gf/Dから換算する計算式
- kgf/mm2 = {繊維の密度(g/cm3) × 9.0 } × gf/D
- kgf/mm2 = 102 ×GPa
- kgf/mm2 = {繊維の密度(g/cm3) × 10.2} × cN/dtex
密度(g/cm3)が1.14で、cN/dtexが4.5の繊維の場合、1.14×10.2×4.5 = 52.33 kgf/mm2となります。
なお、1kgf/mm2 = 9.8MPa、1MPa = 0.102kgf/mm2の換算式が成り立ちますので、この例では52.33 × 9.8 = 約512 MPaとなります。
GPaをcN/dtex、MPa、kgf/mm2、gf/Dから換算する計算式
- GPa = [{繊維の密度(g/cm3)} × 0.0083] × gf/D
- GPa = (9.803 × 10-3) × kgf/mm2
- GPa = 1000 × MPa( = N/mm2)
- GPa = [{繊維の密度(g/cm3)} × 0.1 ] × cN/dtex
例えば、5.6 cN/dtexで、密度が1.14(g/cm3)の繊維だとしたら、1.14×0.1×5.6 = 0.638 GPaの計算式が成り立ちます。MPa = N/mm2に換算すると、0.638 × 1000 = 638 MPaとなります。
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