ポリエチレン繊維の特徴|耐熱性、強度、染色、用途などポリエチレン繊維の性質
ポリエチレン繊維は、化学繊維のうち合成繊維に分類される素材で、非常に軽くて丈夫な繊維です。エチレンを重合したポリエチレンから作られる繊維で、衣服というよりは工業用途でよく使われるものとなります。また、近年は、通常のポリエチレン繊維よりも分子量がきわめて大きい高性能PE繊維や超高分子量ポリエチレン繊維として市場に出ている東洋紡績のダイニーマが高強度繊維の代名詞として良く知られます。
これら超高分子ポリエチレン繊維は、通常のポリエチレン繊維の分子量が数万から20万程度であるのに対し、100万以上にもなります。ゲル紡糸法と呼ばれる技法が使われており、分子がひとつの方向に引き揃えられています。変形に強い繊維となっています。
繊維でありながら、その強度は鉄鋼を素材としているピアノ線の8倍、強力ナイロンの3倍にもなります。また密度が低く、水に浮くほどの軽さです。磨耗、薬品、耐候性、日光・風雨にも強い素材となっています。
ポリエチレンの性質と特徴
この繊維には、分子量を増やした高強度繊維が存在することは前述のとおりですが、そこまでいかなくとも実用上は強度が高めの部類です。軽くて丈夫、という特徴を持つものの、熱には弱い性質があります。
ポリエチレン繊維の長さ、太さを表す単位
化学繊維であるため、dtex(デシテックス)で繊維の太さや重量を表記することが多いです。テックスは標準長1000メートルで、標準重量1グラムあるものを1texと表記します。10dtexが1texとなります。
ポリエチレン繊維の用途
通常のポリエチレン繊維は、紐やロープ類、畳糸、ろ過布、釣り糸、防虫網などの産業用途として使われます。衣類としてはほぼ見ません。また高強度繊維となる超高分子量ポリエチレンは、船舶の係留索や防刃グローブなどの防護手袋、衝撃吸収用途など特に高い強度が求められる用途で使われます。
ポリエチレンのメリット、デメリット
以下にこの繊維の利点、欠点を見ていきます。ただし、高機能繊維などはこれに当てはまらないことがあります。
ポリエチレン繊維のメリット
酸、アルカリの双方について強い素材です。吸水性や吸湿性がなく、軽い素材です(繊維としてはポリプロピレンに次ぐ軽さ)。
ポリエチレン繊維のデメリット
耐熱性がよくありません。軟化点が100℃前後となっています。通常のポリエチレンだと熱湯でも軟化します。
ポリエチレンの性能
次にポリエチレン繊維の物理的性質や、化学的性質について見ていきます。
ポリエチレン繊維の比重
0.94から0.96の比重で、水に浮くほどの軽さです。
ポリエチレンの公定水分率
繊維は、プラスチック等の塊と異なり、きわめて細長い特殊な形状をしていることから表面積も多く、取引の段階で重量をはかる際、すでに水分を吸ってしまっています。このため、繊維によってどのくらいを水分量として見るか繊維ごとに定められています。
衣服、布、ロープ等の吸水性は繊維が糸に加工され、糸が布やロープ等に加工されるため、形状なども深くかかわりがありますが、公定水分率も繊維自体のもつ吸水性能を見るひとつのパラメータということもできます。
公定水分率は0%です。水を吸いませんし、吸湿性もない素材です。
ポリエチレンの耐熱性
耐熱性には難があります。端的にいって熱が大敵ですが、熱伝導率の高さを逆に利用した製品もあります。
ポリエチレンの持つ耐熱温度、どのくらいまでの熱に溶けないか、軟化しないか、外気に野ざらしにした場合の耐候性について下表にまとめました。
耐熱性、耐熱温度 | 軟化点 | 100から115℃(低圧法) |
---|---|---|
溶融点 | 125℃から135℃(低圧法) | |
耐候性 | 外気曝露で強度低下はほとんどない |
ポリエチレンの引張強度
どのくらいの力まで引っ張っても千切れることがないかを示す引張強度については、繊維の場合、乾燥した状態と湿った状態とでは性能が異なります。
繊維としては強い引張強さをもつほうです。ただし、高強度繊維として開発された超高分子のポリエチレンについては、繊維中でも最高クラスの強度をもっています。
繊維の種類 | 引張強さ(cN/dtex) | 伸び率(%) | |
---|---|---|---|
乾燥 | 湿潤 | 乾燥 | |
ポリエチレン | 4.4から7.9 | 4.4から7.9 | 8から35 |
超高分子量ポリエチレン | 26から36 | 26から36 | − |
ポリエチレンの化学薬品への耐性|耐薬品性と特殊溶剤
耐薬品性には優れた素材です。
特殊溶剤は、この繊維を溶解させる特殊な溶剤が何かを示しています。
繊維自体を溶かす作用をもつ薬品が何かを下表にまとめました。苛性ソーダは水酸化ナトリウムであり、強アルカリの代表的なものとなります。塩酸、硫酸、蟻酸、酢酸などいずれも酸性となります。
苛性ソーダ(5%、煮沸) | 溶けない |
---|---|
塩酸(20%、室温) | 溶けない |
硫酸(70%、室温) | 溶けない |
ギ酸(80%、室温) | 溶けない |
氷酢酸(煮沸) | 溶けない |
特殊溶剤 | 四塩化エタン |
繊維の種類と特徴
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