ポリウレタン繊維の特徴|スパンデックスの劣化、寿命、耐熱温度、耐久性について
ポリウレタン繊維は、スパンデックスとも呼ばれ、化学繊維の中でもゴムのような性質をもった珍しい繊維で、衣料用としては単独で使われることはほぼなく、他の繊維と組み合わせて使われたり、コーティング用として使われたり、あるいは接着用途で使われたりします。ストレッチ素材としては非常に重宝されており、この素材の登場によってスポーツウェア等も様変わりしました。
その原料は、グリコールとジイソシアネートであり、紡糸方法も少々特殊なものとなります、
ポリエステル系ポリウレタンと、ポリエーテル系ポリウレタンの二種類が存在します。ポリエステル系ポリウレタンのほうが、機械的強度や耐油性、耐熱性に優れていますが、弾性や耐寒性、耐加水分解性についてはポリエーテル系ポリウレタンのほうが強いです。
ただ後述しますが、ポリウレタン系の繊維はいずれも劣化や寿命がネックとなります。洗濯などでも塩素に弱いため、塩素系の漂白剤などは避けたほうが無難です。
ポリウレタン繊維が使われる糸の加工形態
ポリウレタンは繊維として単独の素材として使われるというよりは、以下のような他の繊維と組みあわせて使われることが一般的です。
糸の名称 | 内容 |
---|---|
カバード糸 | ポリウレタン繊維を芯に、その周囲に別の繊維、たとえばナイロンなどをまきつけたもの。一重のものはシングルカバード糸、巻きつける糸を二重にしたものはダブルカバード糸。 |
コアスパン糸 | 綿などの紡績工程で、ポリウレタンを芯に挿入したもの |
プライ糸 | ポリウレタンと他の繊維の糸を引き揃えてより合わせたもの。 |
ポリウレタンの性質と特徴
他の繊維にはないほどの伸縮性に優れ、耐熱性・強度もそこそこあり、衣服として部分的に使われることの多い素材ですが、経年劣化と、その寿命があまり長くないという欠点もあります。
ポリウレタンの寿命
衣服に使われるポリウレタンの寿命は、おおむね製造されてから2〜3年といわれています。これは、「製造日」からという意味ですので、使い始めてからではない点に注意が必要です。もちろん、使用条件によってもその寿命は変わりますが、この点から他の長持ちする繊維に比べると、ライフがやや短いと感じるかもしれません。
ポリウレタンはなぜ劣化するのか
ポリウレタンはその性質上、劣化を避けることはできず、そのスピードは使用条件によって変わるものの、いずれはボロボロになってしまいます。ポリウレタンは表面のコーティングにも使われますが、劣化してしまうと表面がボロボロとなってしまい、見栄えが極めて悪くなります。
また、ポリウレタンが使われている部位が数%程度であっても、生地への使われ方によって劣化すると生地から白色の繊維が飛び出したり等で、外観がきわめて悪くなりますので、注意を要します。これは前述したとおり、ポリエステル繊維を糸に組み込んでいたり、表面をコーティングしたり、接着用途で使っているために起きる現象です。
その劣化の原因となるものは主として以下となります。空気中の水分だけでも加水分解を徐々に起こしていく性質があるため、この現象は避けることができません。
- 空気中の水分
- 排気ガス等
- 塩素による影響
- 日光・紫外線・熱
- 体脂、皮脂、汗、ボディオイル等
ポリウレタン繊維の構造
繊維の剛直性を決めるとされるハードセグメントとしてジイソシアネート、伸縮性を決めるソフトセグメントとしてジオール(アルコール)の分子がそれぞれ存在しています。ポリウレタン自体は、ウレタン結合をもった高分子の総称として使われており、ゴムとプラスチックの双方の物性を持たせることができる稀有な素材です。
ポリウレタン繊維の長さ、太さを表す単位
化学繊維であるため、dtex(デシテックス)で繊維の太さや重量を表記することが多いです。テックスは標準長1000メートルで、標準重量1グラムあるものを1texと表記します。10dtexが1texとなります。
ポリウレタン繊維の用途
衣服には多く用いられますが、この繊維だけ単独で使われることはまずありません。ブラジャー、ガードルなどの下着類、肌着類、セーター、ファンデーション類、靴下、水着、スポーツウェア、包帯、おむつ、サポーター類、人工皮革の表面コーティング用、各種衣類の袖口などに使われます。
ポリウレタンのメリット、デメリット
ゴムのような性質を持った繊維といえばわかりやすいかもしれません。
ポリウレタン繊維のメリット
ゴムのように5から7倍に伸びる性質を持っています。ただし、ゴムよりも強い引張強度があり、またゴムよりも老化しにくいとされます。繊維としてのポリウレタンは、ゴムよりも細くすることができます。耐熱性はそこそこあります。
ポリウレタン繊維のデメリット
塩素に弱いです。また、経年劣化といって、時間とともに劣化する性質があり、他の繊維ほど持ちません。この寿命の問題がこの繊維にとっての最大のネックかもしれません。
ポリウレタンの性能
次にポリウレタン繊維の物理的性質や、化学的性質について見ていきます。
ポリウレタン繊維の比重
比重は1.0から1.3で、軽い部類の繊維です。
ポリウレタンの公定水分率
繊維は、プラスチック等の塊と異なり、きわめて細長い特殊な形状をしていることから表面積も多く、取引の段階で重量をはかる際、すでに水分を吸ってしまっています。このため、繊維によってどのくらいを水分量として見るか繊維ごとに定められています。
衣服、布、ロープ等の吸水性は繊維が糸に加工され、糸が布やロープ等に加工されるため、形状なども深くかかわりがありますが、公定水分率も繊維自体のもつ吸水性能を見るひとつのパラメータということもできます。
公定水分率は1%となっています。
ポリウレタンの耐熱性
耐熱性は化繊としてはそこそこあるほうですが、繊維を伸ばした状態でアイロンなどをかけると、その熱によって形が固定されてしまい、繊維が伸縮しなくなることがあります。
ポリウレタンの持つ耐熱温度、どのくらいまでの熱に溶けないか、軟化しないか、外気に野ざらしにした場合の耐候性について下表にまとめました。
耐熱性、耐熱温度 | 軟化点 | − |
---|---|---|
溶融点 | 150から230℃ | |
耐候性 | 強度はやや低下し、黄変することがある。また経年劣化する。 |
ポリウレタンの引張強度
どのくらいの力まで引っ張っても千切れることがないかを示す引張強度については、繊維の場合、乾燥した状態と湿った状態とでは性能が異なります。
この繊維はなんといっても驚異的な「伸び」に特徴があります。これだけ伸びる繊維は他にありません。ただし、強度は強くはありませんので、注意が必要です。
繊維の種類 | 引張強さ(cN/dtex) | 伸び率(%) | |
---|---|---|---|
乾燥 | 湿潤 | 乾燥 | |
ポリウレタン | 0.5から1.1 | 0.5から1.1 | 450から800 |
ポリウレタンの化学薬品への耐性|耐薬品性と特殊溶剤
強酸を苦手としていますが、塩素も劣化の要因となります。
特殊溶剤は、この繊維を溶解させる特殊な溶剤が何かを示しています。
繊維自体を溶かす作用をもつ薬品が何かを下表にまとめました。苛性ソーダは水酸化ナトリウムであり、強アルカリの代表的なものとなります。塩酸、硫酸、蟻酸、酢酸などいずれも酸性となります。
苛性ソーダ(5%、煮沸) | 溶けない |
---|---|
塩酸(20%、室温) | 溶けない |
硫酸(70%、室温) | 溶ける |
ギ酸(80%、室温) | 溶けない |
氷酢酸(煮沸) | 溶ける |
特殊溶剤 | 温ジメチルホルムアミド |
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