ナイロン繊維の特徴|ナイロンの種類と比重、太さ、構造、融点等の特性について
ナイロンは化学繊維のうち、石油を原料とした合成繊維のひとつで、米国のデュポン社がナイロン66を発明したのが1935年になるため、化学繊維の中でも古い歴史をもつ繊維です。ナイロンという名前は脂肪族ポリアミド合成繊維の総称として使われていますが、もともとは同社の商標でした。現在は繊維としてはナイロン6とナイロン66が主として流通しています。ナイロン66のほうが若干耐熱性に優れます。
衣類をはじめ、リュックやザックに使われるのは摩擦に対して強いという機械的強度や切れにくいといった性質ももつためですが、衣料用、インテリア用、産業用、家庭用品など広範な分野で使われる繊維素材です。
ナイロンの原料と作り方
ナイロン6は、石油からシクロヘキサン、イプシロンカプロラクタムと形を変えたものをヘキサメチレンジアミンと重合させ、溶融紡糸により作られます。ナイロン66は石油からアジピン酸が取り出され、ヘキサメチレンジアミンと重合させて糸になったものです。
長繊維、短繊維ともにあり、それぞれに用途が異なりますが、短繊維(ステープル)は主として他の繊維とあわせて使う混紡用途のものです。
ナイロンの性質と特徴
磨耗、摩擦に強く、耐薬品性にも優れている繊維です。比較対象となることが多いポリエステルに比べると吸水性が高く、水を吸った際の性能も変化しやすいものの、繰り返し変形に強いという無類の強度を持ちます。
ナイロン繊維の構造
繊維の拡大写真を見ると側面がきわめてなめらかであることがわかります。基本、中空ではないですが、断面形状も製造時に使うノズルによって自由に変えられる特徴を持ちます。また、極細の繊維も製造されています。
ナイロン繊維の長さ、太さを表す単位
化学繊維であるため、dtex(デシテックス)で繊維の太さや重量を表記することが多いです。テックスは標準長1000メートルで、標準重量1グラムあるものを1texと表記します。10dtexが1texとなります。
ナイロン繊維の用途
パンティストッキング、ランジェリーなどの肌着類、靴下、水着、スポーツウェア全般、登山用などのザック、靴、トレッキングシューズ、防寒着、レインウェア、各種ザックやカバンの生地、歯ブラシ、ブラシ類、カーペット、人工芝、マット類、タイヤコード、釣り糸、内装、ホース材料、工業用の縫糸、合成皮革材料など、非常に広範な分野で使われます。
性能面からは、ナイロンとポリエステルはよく比較されることが多い繊維同士です。
ナイロンのメリット、デメリット
ナイロンは発売当初から社会に対して非常にインパクトのある新素材でした。
ナイロン繊維のメリット
しなやかでありながら、他の合成繊維にくらべても磨耗や摩擦に強いという性質を持ちます。繰り返しの折り曲げにも強いです。染色しやすく、柔軟で薄くて軽い生地にできます。速乾性に優れ、カビや虫害とも無縁です。
繊維形状が自由に作ることができるため、複合繊維や極細繊維などにも自由が利きます。ナイロンの単糸であるフィラメントにさまざまな物質を練りこんで、静電気をおさえたり、保温性能をあげたりといったことも可能です。
耐薬品性に優れるとともに、海水や油にも強いです。形が崩れにくく、弾力性に富んだ繊維です。適度に伸びるという性質があるため、衝撃を吸収する用途にも使われることがあります。化繊の中でも軽い素材です。
ナイロン繊維のデメリット
白いナイロンの、紫外線や日光照射による黄変には注意を要します。昨今はこの耐候性についてはずいぶん改良はされています。化繊としてはめずらしく、酸に弱い性質を持ちます。濃度が薄いものでも、酸性の液体には溶けてしまうことがあります。また、ポリエステルに比べて価格が高いという難点があります。
また天然繊維系のものに比べ、静電気についても気をつけたいポイントです。
上記で耐薬品性がメリットのひとつと挙げましたが、酸性の薬剤がかかる用途には不向きとなります。
ナイロンの性能
次にナイロン繊維の物理的性質や、化学的性質について見ていきます。
ナイロン繊維の比重
軽さがメリットになるほどの繊維であり、水には浮かないものの、比重はわずか1.14です。
ナイロンの公定水分率
繊維は、プラスチック等の塊と異なり、きわめて細長い特殊な形状をしていることから表面積も多く、取引の段階で重量をはかる際、すでに水分を吸ってしまっています。このため、繊維によってどのくらいを水分量として見るか繊維ごとに定められています。
衣服、布、ロープ等の吸水性は繊維が糸に加工され、糸が布やロープ等に加工されるため、形状なども深くかかわりがありますが、公定水分率も繊維自体のもつ吸水性能を見るひとつのパラメータということもできます。
ナイロンの公定水分率は4.5%で、ポリエステルの0.4%と比べると吸水性能が高いことがわかります。
ナイロンの耐熱性
熱にはあまり強くないため、アイロンがけも低温で行う必要があります。
ナイロンの持つ耐熱温度、どのくらいまでの熱に溶けないか、軟化しないか、外気に野ざらしにした場合の耐候性について下表にまとめました。
以下はフィラメントの際のデータです。
耐熱性、耐熱温度 | 軟化点 | 180℃ |
---|---|---|
溶融点 | 215℃から220℃ | |
耐候性 | 長時間の外気曝露で強度やや低下するとともに黄変することがある |
ナイロンの引張強度
どのくらいの力まで引っ張っても千切れることがないかを示す引張強度については、繊維の場合、乾燥した状態と湿った状態とでは性能が異なります。
ナイロンの強度は、伸びがあるため、衝撃を吸収するという面や磨耗に強いという面もあるため、引張強さではポリエステルとあまり変わりませんが、実際の切れにくさや強度はナイロンのほうが強いという側面があります。
繊維の種類 | 引張強さ(cN/dtex) | 伸び率(%) | |
---|---|---|---|
乾燥 | 湿潤 | 乾燥 | |
ナイロン | 4.2から5.6 | 3.7から5.2 | 28から45 |
ナイロンの化学薬品への耐性|耐薬品性と特殊溶剤
特殊溶剤は、この繊維を溶解させる特殊な溶剤が何かを示しています。
繊維自体を溶かす作用をもつ薬品が何かを下表にまとめました。苛性ソーダは水酸化ナトリウムであり、強アルカリの代表的なものとなります。塩酸、硫酸、蟻酸、酢酸などいずれも酸性となります。
ナイロンは酸性によわいので、これらがかかるような用途では注意を要します。
苛性ソーダ(5%、煮沸) | 溶けない |
---|---|
塩酸(20%、室温) | 溶ける |
硫酸(70%、室温) | 溶ける |
ギ酸(80%、室温) | 溶ける |
氷酢酸(煮沸) | 溶ける |
特殊溶剤 | フェノール |
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