ポリノジック繊維の特徴|ポリノジック生地の短所や選択方法、繊維表示について
ポリノジックもレーヨンと並び、化学繊維のなかで再生セルロース繊維に位置づけられる素材です。端的にいえば、レーヨンの重合度(分子量)を300から450にあげたものがポリノジックです。
レーヨンが水分を吸うと弱くなる欠点がポリノジックでは若干改善されています。
用途や性質、特性も、原料・製法が似ているため、レーヨンにきわめて似ています。こちらも同じく木材パルプを原料とし、セルロースが主成分です。セルロースが主成分とはいっても、膨潤性は綿とは違いますので、毛羽立ちやしわが発生することがあります。
家庭用品品質表示法では、ビスコース繊維のうち、平均重合度が450以上のものは、レーヨン、RAYON、ポリノジックのいずれかを表示すればよいことになっています。取り扱い方法についても、レーヨンに準じたものになります。
レーヨンと同様のビスコース繊維であり、レーヨン繊維の項目でも述べたとおり、若干は湿潤強度が改良されているとはいえ、洗濯の際には注意が必要です。
ポリノジックは同種のレーヨンと比較されることが多いですが、レーヨンに比べると吸水性が小さく、膨潤性も小さくなります。このため、洗濯にはレーヨンよりも強いといえます。
ポリノジックの性質と特徴
光沢のよさ、染色性のよさ、耐熱性の強さなどに特徴を持つ繊維です。植物由来のセルロースが原料を再生したものであり、その代表格であるレーヨンと同種の繊維でありますが、レーヨンが持っていた欠点である湿潤強度の低下(ぬれると強度低下)、弾性回復、巻縮性、膨潤性を改良したものがポリノジックです。
ポリノジック繊維の構造
繊維の断面構造は円形で詰まっており、中空などはありません。同種のレーヨン繊維には、緻密なスキン層と粗いコア層に分かれている繊維構造に特徴がありましたが、ポリノジック繊維には、これらスキン、コアの別がなく、のっぺりとした円形構造をしています。
ポリノジック繊維の長さ、太さを表す単位
ポリノジックも化学繊維であるため、dtex(デシテックス)で繊維の太さや重量を表記することが多いです。テックスは標準長1000メートルで、標準重量1グラムあるものを1texと表記します。10dtexが1texとなります。
ポリノジック繊維の用途
レーヨンと同様の使い方がなされることが多いですが、ポリノジックのポリエステルとの混紡は風合いのよさから夏物衣料としてよく知られます。背広・スーツの裏地、肌着・下着類、ストールなどに使われています。
ポリノジックのメリット、デメリット
レーヨンの短所を若干改良したものであるため、そのメリット・デメリットも似通ったものとなります。
ポリノジック繊維のメリット
風合いや光沢のよさは、もともとが絹を人工的に作るというところから出発しているため、特筆すべき点です。また耐熱性のよさについてもメリットのひとつといえます。強度については、綿ほどではないにしても、水にぬれた際の湿潤強度は高めになっています。
ポリノジック繊維のデメリット
レーヨンよりも改善されているとはいえ、しわや収縮については難があります。
ポリノジックの性能
次にポリノジック繊維の物理的性質や、化学的性質について見ていきます。
ポリノジック繊維の比重
ポリノジックの比重は1.50から1.52と、レーヨンと同等となっています。
ポリノジックの公定水分率
繊維は、プラスチック等の塊と異なり、きわめて細長い特殊な形状をしていることから表面積も多く、取引の段階で重量をはかる際、すでに水分を吸ってしまっています。このため、繊維によってどのくらいを水分量として見るか繊維ごとに定められています。
衣服、布、ロープ等の吸水性は繊維が糸に加工され、糸が布やロープ等に加工されるため、形状なども深くかかわりがありますが、公定水分率も繊維自体のもつ吸水性能を見るひとつのパラメータということもできます。
水を吸いやすい化繊のひとつです。綿と同様の天然成分であるから当然とはいっても、化学繊維の中でもレーヨンと並んでトッププラスの11%が公定水分率となっています。
ポリノジックの耐熱性
軟化、溶融しないという特徴を持つ熱に強い繊維です。
ポリノジックの持つ耐熱温度、どのくらいまでの熱に溶けないか、軟化しないか、外気に野ざらしにした場合の耐候性について下表にまとめました。
耐熱性、耐熱温度 | 軟化点 | 軟化、溶融ともにしない点に特徴があります。 |
---|---|---|
溶融点 | 溶融はしません。260℃から300℃程度で着色分解し始める繊維です。 | |
耐候性 | 屋外に長期間曝露すると強度はやや低下する傾向があります。 |
ポリノジックの引張強度
どのくらいの力まで引っ張っても千切れることがないかを示す引張強度については、繊維の場合、乾燥した状態と湿った状態とでは性能が異なります。
木材パルプのセルロースを原料とした繊維でレーヨンとかなりの部分で似通っていますが、レーヨンの弱点を補強されている部分もあり、その際たるものが強度です。特にレーヨンは水にぬれると強度がかなり低下してしまう問題がありましたが、この辺がポリノジックでは改良されています。
繊維の種類 | 引張強さ(cN/dtex) | 伸び率(%) | |
---|---|---|---|
乾燥 | 湿潤 | 乾燥 | |
ポリノジック | ステープル:3.1から4.6 | ステープル:2.3から3.7 | 7から14 |
ポリノジックの化学薬品への耐性|耐薬品性と特殊溶剤
特殊溶剤は、この繊維を溶解させる特殊な溶剤が何かを示しています。
繊維自体を溶かす作用をもつ薬品が何かを下表にまとめました。苛性ソーダは水酸化ナトリウムであり、強アルカリの代表的なものとなります。塩酸、硫酸、蟻酸、酢酸などいずれも酸性となります。
ポリノジックの耐薬品性についてはレーヨンに準じたものとなります。
苛性ソーダ(5%、煮沸) | 溶けない |
---|---|
塩酸(20%、室温) | 溶けない |
硫酸(70%、室温) | 溶ける |
ギ酸(80%、室温) | 溶けない |
氷酢酸(煮沸) | 溶けない |
特殊溶剤 | 銅アンモニア、銅エチレンジアミン |
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