リヨセルの特徴|天然素材由来リヨセルの強度や耐久性、しわ、洗濯の仕方、伸び縮み、用途、白化現象について

2020年3月14日更新

リヨセルは再生繊維もしくは再生セルロース繊維に分類される素材で、商標名からテンセルとも言いますが、木材パルプを溶剤(アミンオキサイド)で直接溶かして中のセルロースを繊維に再生したものです。再生といってもリサイクルではなく、天然素材であるセルロースを溶解して繊維状に加工したものとなります。

リヨセルの用途

アパレル・被服分野ではデニムやジーンズ、シャツ、掛け布団カバーなどの用途がよく知られます。同じく再生繊維(再生セルロース繊維)の仲間であるレーヨンやキュプラと用途が似ています。

工業用途では、シート等へ使うため合成皮革との組み合わせや、フィルターや電気絶縁紙などの使い道もあります。すべて短繊維(ステープル)を紡績糸に加工することで使用されるため、長繊維では使われていません。

現状、日本ではリヨセルの短繊維を輸入し、木材パルプから溶解する工程は行われておりません。

リヨセルは化学繊維か?

リヨセルは天然に存在するセルロース等の素材を溶解して作られているため、綿と同じ化学式を持ちます。したがって、成分は天然のセルロースと同じです。化学繊維には大きく、再生繊維、半合成繊維、合成繊維の3つの分類がありますが、リヨセルはこのうち再生繊維になります。再生繊維には、ほかにレーヨン、ポリノジック、キュプラがあります。

化学構造のうえでは綿と同じ構造式を持ちますが、綿の重合度が約2000から3000あるのに対し、リヨセルは約650となっており、分子量が違うことから、化学構造が同じでも性質は異なります。

一般に、高分子を構成する繰返し単位である「重合度」が上がると、溶融温度が高くなり、機械的強度が向上すると言われています。

省エネの繊維として取り上げられているのは、製造に必要な土地面積や水、エネルギーなどを各種繊維ごとに総合して比較した場合、より環境負荷をかけずに製造することができるという点が主張されているためです。

また、綿と同じ化学式であり、原料が天然のセルロースであることからも肌触りや製品の環境への影響が天然繊維に近いということがセールスポイントの一つとしても喧伝されています。

リヨセルとレーヨンの違い

レーヨンあるいはポリノジックと比較されることも多いリヨセル。このリヨセルとレーヨンはともにセルロースを溶かして原料としていることから同じ再生セルロース繊維として分類されますが、両者にはどのような違いがあるのか、表に概要をまとめていきます。

その前に、簡単にリヨセルとレーヨンの語源について述べます。

リヨセルの意味

ギリシア語の溶解するの意であるLyeinからとったLyoと、セルロースの英語celluloseのcellを組み合わせてLyocell(リヨセル)という名称を持ちます。現在は、オーストリアのメーカーLenzing fiber社の商標であるテンセル(Tencel)での呼び名も一般的です。

レーヨンの語源

リヨセルと比較されることの多いレーヨン(Rayon)の名称は、Ray Yarnすなわち光る糸=絹をイメージした造語からとられたとも言われます。

リヨセルとレーヨンの違い
レーヨン リヨセル
  • ビスコースレーヨン法で製造。木材パルプを苛性ソーダで処理し二硫化炭素で反応させ原液をつくる。この過程でセルロースは化学変化をおこし、ビスコースとなる。これを繊維として再生したものがレーヨン。フィルム状にしたものはセロファンとなる。
  • 原料の木材パルプはこの工程の場合、化学変化してしまうため、セルロース分子が分断されて重合度が下がる。重合度は300程度。
  • 吸水能力が高いため、吸湿発熱素材としても使われている。
  • 繊維断面は、密なスキン層と粗なコア層に分かれている
  • 光沢がある
  • 染色性がよい
  • 重合度450以上のものはレーヨンではなくポリノジックと呼ばれる。
  • 他の繊維と混紡しやすい
  • 強度は弱く、湿潤時には特に低下。
  • 洗濯した際には縮みやすい
  • 濡れると型崩れする
  • 寸法安定性はあまりよくない。
  • しわになりやすい。
  • 繊維の腰が弱い
  • レーヨンに比べると省エネ型。木材パルプを一度化学的に変性して原液として用いるのに対し、リヨセルは木材パルプを直接溶解させてセルロースの状態のまま原液として繊維に加工する違いがある。
  • 重合度が650で、レーヨンの約300に比べて高いため、セルロースのもとの性質をより多く受け継いでいる
  • 湿潤時の強度低下がレーヨンに比べて少ない。キュプラと比べても少ない。レーヨンは濡れると強度が半減してしまう。レーヨンよりも強度に優れ、水による収縮も少ない。乾燥時はレーヨンの約2倍、 湿潤時はレーヨンの約3倍の強度を持つ。濡れた時は他のどのセルロース繊維より強い
  • 混紡が容易
  • 熱的に安定
  • 75℃が耐熱使用温度の上限といわれる。アイロンをする場合、moderately warm (中温)
  • 縮みにくい
  • 仕上がりがソフト
  • 繊維に腰、張りがある
  • 染色性はレーヨンに劣る。色抜けしやすい。
  • 静電気は起きにくい
  • 洗濯による縮みは少ない部類
  • ドレープ性、光沢感が良好
  • 湿気を吸う、放つともによい
  • 濡れると硬くなる

リヨセルの白化とは|劣化のしやすさ

生地の表面が白っぽくなってしまう現象です。これには原因があり、まずリヨセルの繊維自体が濡れると硬くなってしまい、この状態のままこすれるなどの摩擦を受けることで、フィブリル化ともいわれる毛羽立ちを起こします。この表面の繊維が毛羽だってしまって生地が白くなる現象が「白化」です。

こうした意味では綿のような耐久性はありませんので、扱いには留意する必要があります。

リヨセルは洗濯できるのか

リヨセルは洗濯できますが、手洗いや押し洗いが推奨されています。というのも、水に濡れると硬くなる性質を持つ繊維であり、濡れた状態や湿った状態で摩擦を受けると、毛羽立ち、白化の原因となることが知られています。

また、色抜けしやすい繊維であるため、洗濯ネット使用、中性洗剤での洗濯が推奨されています。

ただ、洗濯による伸び縮みは少ない部類の繊維です。乾燥機は、縮みや色落ちの原因になってしまうため、使用を控えたほうが良いとされます。

リヨセルの表示方法|指定外繊維(リヨセル)として表示から、再生繊維の表示

衣服などについている繊維の表示は、消費者庁が定める「家庭用品品質表示法」にて繊維の名称を示す用語として規定されています。ここでは、24種類の繊維に対して、指定用語29用語が設定されており、決まった表現を使うことが求められます。

リヨセルはこの指定用語に入っていないため、以前は、指定外繊維(リヨセル)と表示されていました。例えば、90%がリヨセルなら、指定外繊維(リヨセル)90%といった表記となります。ただ2017年の家庭用品品質表示法の改正で、この指定外繊維を使って表示する方法が改められ、現在は、具体的な繊維の分類名を書いて、そのあとに繊維名称、含有率を続けて表記する方法になっています。

再生繊維(リヨセル)50%や再生繊維(リヨセル)100といった表記です。

繊維の分類名は、植物繊維、動物繊維、再生繊維、半合成繊維、合成繊維、無機繊維があります。

繊維の種類と特徴

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