麻の繊維の特徴|ヘンプ、リネン、ラミー、ジュートなど麻の種類と耐熱温度、強度、吸水性、比重、成分、構造などの特性

2016年1月3日更新

麻は天然繊維に分類され、その中でも植物の茎や葉脈から取られ、その繊維を利用したものであることから、じん皮繊維、葉脈繊維に括ることができます。前者は亜麻(リネン)や苧麻(ラミー)、大麻(ヘンプ)、ケナフ、が該当し、後者はサイザル麻やマニラ麻、ジュート(黄麻)などが該当します。

ただ、麻は複数の植物を示す用語であり、この言葉に含まれる植物はそれぞれ科名も異なりますので、麻といった場合は厳密には何を示しているのか確認する必要があります。衣服の表示で「麻」を名乗ってよいのは、日本では亜麻(リネン)と苧麻(ラミー)の二種類のみです。それ以外の麻は指定外繊維となるため、「指定外繊維(ヘンプ)」のように、麻ではなく、個別の名称が記載されていることが多いです。

麻の種類

前述のとおり、麻には複数の種類があるため、下表にまとめました。「アサ」という植物もありますが、これは繊維で言うところの麻というよりは、大麻草のことを意味していることが一般的なため、混同に注意を要します。

麻の種類
繊維用語 植物名 植物科名 繊維加工部位
リネン、麻(家庭用品品質表示法による指定用語) 亜麻(あま) アマ科 植物の茎
ラミー、麻(家庭用品品質表示法による指定用語) 苧麻(ちょま) イラクサ科 植物の茎
ヘンプ 大麻 アサ科 植物の茎
ジュート 黄麻(こうま) バショウ科 植物の葉
サイザル麻 サイザルアサ リュウゼツラン科 植物の葉
ケナフ ケナフ アオイ科 植物の茎

麻の性質と特徴

麻の中でもラミーやリネンは肌触りがやわらかく良好な素材です。これらは価格が高価でもあることから、高級な衣料品などに使われます。

繊維レベルで見た場合、綿よりも吸水能力が高いことが伺えます。比重はほぼかわりません。また耐熱温度や熱に対する強度などについても綿とほぼ同等です。

天然、やさしい自然な感じがするということで、この素材を積極的に活用するブランドもあります。植物由来であることをより色濃く残すこともできるため、ナチュラルな風合いを好む層には人気があります。

麻繊維の構造

麻も綿と同様に繊維の中心部分に空間をもつ、いわゆる「中空構造」をもつ繊維です。亜麻(リネン)の断面を見ると、多角形の形状をしており、繊維方向の節には繊維質由来の鋭さが散見されます。ラミーについては、断面は扁平で楕円、ソラマメ形状をしており、同様に中空部分を持つことから綿にも似た形状をしています。ただし天然のよりは見られません。

綿よりも麻の繊維のほうが太く、節がある点が特徴といえますが、見分けがつきにくいこともあります。

麻繊維の長さ、太さを表す単位

麻糸については、麻番手が使われます。これは標準重量453.6グラム(1ポンド)で、標準長274.3メートル(300ヤード)あるものについてを1番手とする太さ・重さの示し方です。同じ紡績糸でも、綿の軽量に使う綿番手とは長さが違う点に注意が必要です。

麻繊維の用途

衣料品や手芸用品などに使われますが、価格が高いこと等からも一般の衣料品に使われることは昨今は少なくなってきています。登山ウェアなどで吸水(吸汗)と速乾をあわせもつ高機能ウェアとしてこの素材が使われているものもありますが、高価です。東南アジアをはじめ、素材が豊富にとれる地域では普段着の素材としてもよく使われます。主として夏用の衣類でよく見ます。

麻のメリット、デメリット

麻には種類がいくつかあり、それぞれが違う植物でもあるため、一般的に共通する性質について見ていきます。

麻繊維のメリット

引張強度については、植物由来の天然繊維の中では最強クラスとなります。また濡れると強度が増すという綿と同様の性質をもちます。通気性、吸水性に優れ、ラミーやリネンのように肌触りのよい種類の麻もあります。光沢があるため、高級感がある麻もあります。

麻繊維のデメリット

植物繊維のなかでも茎を使っているため、伸縮性はありません。麻の種類によっては繊維が固いこともあり、チクチクすることがあります。毛羽立ちやすく、カビやすいという難点があります。また、天然繊維の宿命でもありますが、しわになりやすい素材です。

麻の性能

次に麻繊維の物理的性質や、化学的性質について見ていきます。

麻繊維の比重

麻の比重は1.5となっており、水には浮きません。

麻の公定水分率

繊維は、プラスチック等の塊と異なり、きわめて細長い特殊な形状をしていることから表面積も多く、取引の段階で重量をはかる際、すでに水分を吸ってしまっています。このため、繊維によってどのくらいを水分量として見るか繊維ごとに定められています。

衣服、布、ロープ等の吸水性は繊維が糸に加工され、糸が布やロープ等に加工されるため、形状なども深くかかわりがありますが、公定水分率も繊維自体のもつ吸水性能を見るひとつのパラメータということもできます。

麻の公定水分率は12%となっており、天然繊維のなかでは高いほうです。生地や糸の加工方法によっては速乾性能を持つため、汗を大量にかくような用途での衣服とは相性の良い素材です。

麻の耐熱性

一般に、熱には強い素材です。

麻の持つ耐熱温度、どのくらいまでの熱に溶けないか、軟化しないか、外気に野ざらしにした場合の耐候性について下表にまとめました。

麻の耐熱温度
耐熱性、耐熱温度 軟化点 軟化、溶融はともに無し
溶融点 235℃前後で分解、275℃から456℃前後で燃焼
耐候性 屋外への長期曝露で、黄褐色になることがある。

麻の引張強度

どのくらいの力まで引っ張っても千切れることがないかを示す引張強度については、繊維の場合、乾燥した状態と湿った状態とでは性能が異なりますが、麻については下表のとおりです。濡れたときの強度である湿強度が高いことがわかります。

天然繊維のうち、植物由来のものとしてはかなり強いため、麻はロープや縄にも使われてきました。反面、繊維がかたいこともあり、伸び率が悪くなっています。

麻の引張強さ|湿強度、乾強度、伸び率
繊維の種類 引張強さ(cN/dtex) 伸び率(%)
乾燥 湿潤 乾燥
5.7 6.8 1.5から2.3

麻の化学薬品への耐性|耐薬品性と特殊溶剤

特殊溶剤は、この繊維を溶解させる特殊な溶剤が何かを示しています。

繊維自体を溶かす作用をもつ薬品が何かを下表にまとめました。苛性ソーダは水酸化ナトリウムであり、強アルカリの代表的なものとなります。塩酸、硫酸、蟻酸、酢酸などいずれも酸性となります。

麻も綿と同様の耐薬品性をもつと考えられます。

麻の耐薬品性
苛性ソーダ(5%、煮沸) 溶けない
塩酸(20%、室温) 溶けない
硫酸(70%、室温) 溶ける
ギ酸(80%、室温) 溶けない
氷酢酸(煮沸) 溶けない
特殊溶剤 銅アンモニア

繊維の種類と特徴

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