綿の繊維としての特徴|綿の耐熱温度、比重、成分、構造など特性とメリットからデメリットまで

2016年1月3日更新

綿は、コットン(Cotton)とも表記され、種子からとられる種子毛を原料とした繊維です。大きくは天然繊維のひとつであり、その中でも植物繊維あるいはセルロース繊維に分類されます。綿の成分はほぼセルロースで構成されています。

種子からとれる植物繊維としては、ほかにカポックやアクンドがあります。綿の採取は、アオイ科のワタと呼ばれる植物からなされます。この植物は種子の周りにコットンボールと呼ばれるフワフワのワタ玉で覆われる特徴があり、このコットンボールのうち、リントと呼ばれる3センチ程度の長さを持つ部位が、綿に加工されていきます。

綿花は日本ではほぼ生産されておらず、広大な土地を持ち大量生産が可能な中国やインド、米国が生産国となっています。

綿の性質と特徴

吸水性に優れるとともに、通気性にとんだ繊維です。さらに、湿強度(ぬれると強度が増します)も大きく、衣類として備えているべき性能に優れているため、肌着や下着類には多用されています。以下に綿の特徴と性質を見ていきます。

綿繊維の構造

綿繊維は断面を観察すると、中空が存在する構造を持ちます。横断面を見ると、ソラマメ型や馬蹄型をしています。また、多くの「天然より」が見られるため、吸水性や保湿性を持つ所以となっています。コットンボールのリント(2〜3センチ)とリンター(5ミリ)のうち、より長いリントの部分を使いますが、採取時に一本の単糸で構成されているわけではなく、短い繊維状になっているため、紡績しないと糸にすることはできません。

綿繊維の長さ、太さを表す単位

綿は短繊維(ステープル)で構成されており、「より」をかけることで糸に加工される繊維です。

このため、綿繊維の太さは恒重式繊度である「綿番手」が使われます。標準重量1ポンド(453.6グラム)で、標準長768.1m(840ヤード)あるものが、綿番手でいうところの1番手となります。453.6グラムで標準長が1536.2メートルのものは2番手となります。

綿繊維の用途

衣料用品としての利用が非常に多く、吸水性のよさや柔らかい肌触り、風合いなどから、下着やTシャツ、ジーンズ、綿パンなどに多用されるほか、シーツなどもこの綿が多用されています。肌と直接触れる用途や、汗を吸うことが求められるような用途に適しています。

綿のメリット、デメリット

用途によって何がメリットになるかも異なるため、断定できない場合もありますが、下記のような点が挙げられます。

綿繊維のメリット

綿の持つメリットは、主としてその吸水性にあります。現在、数多くの化学繊維、天然繊維がありますが、その中でも繊維自体に吸水性をもつのは天然繊維がほとんどです。また、肌触りのよさは衣類として使う場合には大きなメリットと言えます。ほかに、通気性のよさ、染色性のよさ、湿強度の高さ(濡れると強度が増す)、熱にも強く、薬品にも強酸以外には耐性を持つ点もこの素材の強みといえます。また価格についても安価な傾向があるため、日用品等にはもってこいです。

綿繊維のデメリット

ただデメリットとしては、衣類として使う場合、繊維自体が縮みやすいため、しわになりやすい点があげられます。また、下着類にも「速乾」性能を持たせたものが出回っていますが、これら化学繊維に比べると綿は乾燥に時間がかかります。また耐候性については、長時間日光や紫外線にさらされると強度が低下するとともに黄ばみが出てきます。

綿の性能

次に綿繊維の物理的性質や、化学的性質について見ていきます。

綿繊維の比重

比重は、1.54となります。水には繊維そのものは元々浮きませんが、吸水性に富んだ材質であるため、水がすぐに染み込んで重量を増していきます。

綿の公定水分率

繊維は、プラスチック等の塊と異なり、きわめて細長い特殊な形状をしていることから表面積も多く、取引の段階で重量をはかる際、すでに水分を吸ってしまっています。このため、繊維によってどのくらいを水分量として見るか繊維ごとに定められています。

衣服、布、ロープ等の吸水性は繊維が糸に加工され、糸が布やロープ等に加工されるため、形状なども深くかかわりがありますが、公定水分率も繊維自体のもつ吸水性能を見るひとつのパラメータということもできます。

綿の公定水分率は8.5%となります。主要な天然繊維としてはこれでも低い部類になりますが、化学繊維に比べるとはるかに高い吸水性能をもつことが伺えます。

綿の耐熱性

軍手や調理用のミトン、布巾等にも使われるため、身近に熱に接する機会も多い繊維です。

綿の持つ耐熱温度、どのくらいまでの熱に溶けないか、軟化しないか、外気に野ざらしにした場合の耐候性について下表にまとめました。

他の繊維と比べても綿の耐熱性はかなり高いことがわかります。

綿の耐熱温度
耐熱性、耐熱温度 軟化点 軟化・溶融ともに無し
溶融点 溶融しないが、235℃で分解、約275℃〜456℃で燃焼する
耐候性 屋外に曝露されると強度低下し、黄変(黄ばむ)していく

綿の引張強度

どのくらいの力まで引っ張っても千切れることがないかを示す引張強度については、繊維の場合、乾燥した状態と湿った状態とでは性能が異なります。

特に綿の場合は、湿った状態のほうが乾燥しているときよりも強度が上がるという性質を持っています。

綿の引張強さ|湿強度、乾強度、伸び率
繊維の種類 引張強さ(cN/dtex) 伸び率(%)
乾燥 湿潤 乾燥
綿 2.6から4.3 2.9から5.6 3から7

綿の化学薬品への耐性|耐薬品性と特殊溶剤

特殊溶剤は、この繊維を溶解させる特殊な溶剤が何かを示しています。

綿繊維自体を溶かす作用をもつ薬品が何かを下表にまとめました。苛性ソーダは水酸化ナトリウムであり、強アルカリの代表的なものとなります。塩酸、硫酸、蟻酸、酢酸などいずれも酸性となります。

綿の耐薬品性
苛性ソーダ(5%、煮沸) 溶けない
塩酸(20%、室温) 溶けない
硫酸(70%、室温) 溶ける
ギ酸(80%、室温) 溶けない
氷酢酸(煮沸) 溶けない
特殊溶剤 銅アンモニア

繊維の種類と特徴

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