パレットの材質比較|樹脂から新素材まで6種類の性能を比較

2025年1月2日更新

輸出や輸入の輸送に使うパレットの材質は、大別すると「木材」「樹脂」「発泡スチロール」「スチール」「段ボール」「ウッドプラスチック」の6種類あり、それぞれのメリットとデメリットを比較してみます。発泡スチロールも広義には樹脂ですが、ここでの樹脂パレットはPPやPEといった広く普及しているパレットを指します。

輸出入に使用するパレットであれば、動荷重は1000kg、二段積みなら静荷重で2000 kgは基本となりますので、まずはこの要件を満たすものから選定していくことになりますが、容積勝ちの貨物で軽量物のみということであれば、これを下回るパレットも候補となります。

コストについては「樹脂パレット」を1とした場合の平均的なコストを記載しています。

樹脂パレット

PP(ポリプロピレン)やポリエチレン、高密度ポリエチレンを素材としたパレットで流通量がきわめて大きいパレットです。樹脂パレやプラパレといえばほぼこのタイプで、価格帯や耐荷重についてもバリエーションが豊富です。使い捨てのワンウェイタイプと、繰り返し使えるリターナブルタイプでは強度や作りが違います。

性能:

  • 軽量
  • 耐水性がある
  • 衛生的

コスト:

  • 1.0(基準

特徴:

  • 汎用性高く種類のバリエーションが極めて多い
  • リサイクルが容易ではない
  • 廃棄コストがかかる

スチールパレット

鉄鋼材料を素材としたパレットで、いわゆる平板形状のパレット型のものの他、パレットをすっぽり収めてしまう箱型(折りたたみ式)のものもあります。長寿命であり、リターナブルで繰り返し使うことを想定したものです。製作には金型が要らないのでサイズ・形状などオーダーメイドのものもあります。錆の問題はありますが、カビや害虫がつかない利点もあります。

ただ輸出入で使うには販売単価にこのパレット代金を載せてしまわない限り、再度使い終わったスチールパレットを回収するコストがかかります。グループ会社間や輸出入双方の取引がある場合は、あらかじめこのパレットを使ってやり取りするという取り決めもできますが、輸出入量のバランスがあわなくなってくると、貨物がない状態のパレットを輸送するコストがかかってきます。

性能:

  • 耐荷重が高い(一般的に1トンは軽く超える)
  • 耐火性がある
  • 衛生的で洗浄・滅菌が可能
  • リサイクル可能(スクラップとして売却可)
 

コスト:

  • 約1.5〜2.0

特徴:

  • 重量がある
  • 錆が発生する可能性がある
  • 初期コストが高い

段ボールパレット

ダンボール素材を貼り合わせて作ったパレットで、軽さ、コストの安さに特徴があります。近年急速に増えてきているパレットのひとつです。重さについては6キロから7キロ程度という軽量です。耐荷重を重視したものだと自重がさらに重くなります。それでも一般的な樹脂パレが20キロ〜30キロ前後であることから半分以下であることがわかります。ワンウェイで使い捨てることを考えると、輸出コストダウンが見込める素材です。

またダンボールであるため、形状やサイズについてもカスタマイズが効きます。

貿易で使用する場合は、激しい揺れや荷重の一点集中、湿気、水気がネックとなります。パレット自体が破壊されなくても表面にうねりがでると安定性が損なわれることがあります。

性能:

  • 超軽量(約6.5kgから10kg未満が多い)
  • 製品によっては最大5トンまでの荷重に耐える

コスト:

  • 約0.5〜0.7

特徴:

  • リサイクル可能
  • 作業効率が高い
  • 燻蒸処理不要
  • 湿気・水気に弱い
  • 屋外保管には向かない

木製パレット

木材パレットは木パレ(読み方:きぱれ)とも呼ばれ、安価で大量に流通しており、雑パレットとしてもよく使われます(ただし品質もピンキリです)。木製なので一部が破損することがありますが、その部位だけ新しい木材に交換したり、修理したりすることもできます。使う木材の量をセーブして価格を抑えたものや木材を合板にした安価なものもありますが、いずれも耐荷重や安定性が犠牲になりますので、輸送テストをして選定したいところです。

輸送中に一部だけでも折れてしまうと荷物が傾いて荷崩れを引き起こすことがあります。木が腐食していても気が付きにくいので古いパレットを使い続ける場合は要注意です。

ただ木材自体は高温・低温でも材質に変化が起きにくく、結露もしないのでコンテナ輸送にも適してはいます。

ネックとしては貿易では燻蒸して使うことが義務付けられていますが、再利用する場合、虫害が発生したり、カビが発生したりといったリスクもあります。

生産時には金型不要であるため、コストが比較的安くカスタマイズも効きます。このため、長尺物や大型で特殊な形状の設備や機械、部品等の運搬に使う専用パレットとしてカスタムされたものもあります。

一部、食品業界や医薬品業界等では衛生上適さない場合があります。

木材ですが、素手で扱う場合は刺や摩擦でのケガに注意が必要です。

性能:

  • 耐荷重が比較的高い
  • 滑りにくい
  • 長く雨ざらしにしておくと劣化が早まる
  

コスト:

  • 約0.8〜1.0(燻蒸)
  • 約0.7〜0.9(非燻蒸)

特徴:

  • 重量がある(約20kg)
  • 燻蒸パレットは国際輸送に使用可能。非燻蒸は国内輸送のみ。
  • 廃棄時に産業廃棄物(木くず)として処理が必要
  • 安価で手に入りやすい

発泡スチロールパレット

EPSパレットとも言われますが、軽さでは最軽量の部類で、約1.1キロから1.7キロ程度と、1枚当たり2キロにもなりません。軽いことがメリットとなるダンボールパレットよりもさらに軽いです。軽さと引き換えにデメリットとなるのが耐荷重、耐久性、強度です。耐荷重としては約300キロ程度から、1000キロ前後のものまで幅がありますが、一般には300キロ前後が限度の素材です。

木材や樹脂パレットでもぶつかると破損はしますが、発泡スチロールパレットも破損や欠けについては優れている部類ではありません。

また発泡スチロールですので衝撃吸収性能があり製品を振動から守る機能もあります。

冷蔵・冷凍庫での保管や結露も発生しないので温度変化に強い素材です。一般的な樹脂パレットであるPPに比べると製造時の環境負荷は低いとされますが、リサイクルについてはコストがかかります。

性能:

  • 超軽量
  • 断熱性が高い
  • 水分や湿気に強い
    

コスト:

  • 約0.6〜0.8

特徴:

  • 耐荷重が比較的低い
  • 振動をある程度まで吸収する
  • リサイクルが困難
  • 耐水性や衛生面でも優れる
    

ウッドプラスチックパレット

ウッドプラスチックパレットは、製材工場で生じる端材(木質ペレット)とプラスチックを混ぜた素材から作られたパレットです。プラスチックが溶けて木質の繊維内部に浸透することで剛性が高くたわみが少ないパレットとなっています。木材の持つ弱さや樹脂のデメリットをそれぞれ補完した性能を持つイメージです。

リサイクルプラスチックを使用しているのでコスト面や環境負荷の面からも注目されています。

コストについては考え方にもよりますが、木製パレットと比較してトータルコストが低いとされます。樹脂パレットとの比較についてはどのグレードの樹脂パレットかによって価格の高低が変わります。ワンウェイへの廉価な樹脂パレに比べると初期コストは高くなります。

性能:

  • 耐久性が高く、木製パレットより長寿命
  • 高い剛性と少ないたわみ
  • 耐水性と耐薬品性に優れている

コスト:

  • 樹脂パレットを1とした場合、約0.8から0.9程度。グレードによっては1.1から1.3

特徴:

  • 環境負荷が低い(CO2排出量をプラスチック製に比べて35〜50%に削減)
  • 使用後に粉砕して再利用可能
  • 食品工場や冷蔵・冷凍倉庫向けに適している
  • バイオマス資源を活用しているため、石油価格高騰の影響を受けにくい

材質別のパレット比較表

以上から材質別の特徴を比較表にまとめてみました。

重さ、静荷重、動荷重、強度の比較

同じ材質でも高スペックのグレードのパレットは下表を上回るものがあります。反対もしかり。同じ材質ならどれくらいの重さが積載できるかは価格に比例する傾向があります。動荷重とは、1パレットへ載せることができる最大積載重量のことで、静荷重は持ち運びせずに段積みできるパレットの総重量になります。

パレットの自重については、ワンウェイとリターナブルであればリターナブルのほうが重く、片面(荷物を積むことができる面が決まっている)と両面(表裏どちらにも荷物を積める)であれば両面のほうが重くなります。またフォークを挿すことができる口が2方向のものが二方差し、どの側面からもフォークが挿せるパレットは四方差しとなりますが、四方差しがほうが重くなります。

樹脂や木材はバランスの取れた自重と耐荷重がありますが、自重が軽くて耐荷重もということであればウッドプラスチックやダンボールも候補になります。軽さや断熱、耐衝撃など普通のパレットにない性能を求めるなら発泡スチロール、非常に重いものや繰り返し使用での耐久性を求めるならスチールや鉄パレットといった具合に尖った性能を持つパレットもあります。

パレット材質別の比較表|自重、静荷重、動荷重、強度
パレット材質 重さ(自重) 静荷重 動荷重 強度
樹脂 中(20から30kg) 2000から4000kg 1000から3000kg
木製 中(20から25kg) 1500から4000kg 500から1000kg
ダンボール 非常に軽 (5から10kg) 1000から2000kg 300から1000kg 低から中
スチール(鉄) 重 (30から50kg) 4000から8000kg 2000から4000kg 非常に高
発泡スチロール 非常に軽(1.1から1.7kg) 300から1000kg 300から1000kg
ウッドプラスチック 軽(8.3kg) 2000kg 1000kg 中から高

コスト、廃棄コスト、リサイクル性、CO2削減貢献度

コストは平均的な樹脂パレットを1.0とした場合の相対値を参考指標として載せています(パレット代金そのものの参考値)。廃棄コストについては廃棄した場合のコスト目安ですが、鉄のようにスクラップとして売却できるものはリサイクル可で実質廃棄コストがかからないケースがあります。

使い捨てのワンウェイであれば段ボールパレットが安いです。

コストの考え方はいろいろな見方がありますが、購入時のコストだけでなく使い続けることができる年月がどれくらいか、修理やメンテのコスト、実空運搬(製品あり、空パレットでの返送)の双方のコスト、パレットを1回で使い捨てにするのか、使い続けるのかといった点を総合的に評価しないと正しい費用が出てきません。使用可能な期間に対して、初期投資+ランニングコストを見るのがよいでしょう。

パレット材質別の比較表|コスト、リサイクル、CO2削減
パレット材質 コスト
(相対値)
廃棄コスト リサイクル性 CO2削減貢献度
樹脂 1.0
木製 0.7-0.9(燻蒸)、0.6-0.8(非燻蒸)
ダンボール 0.4から0.8
スチール(鉄) 1.5から2.0
発泡スチロール 0.5から0.7
ウッドプラスチック 1.1から1.3 中から高 中から高

貿易適否、修理可能性、衛生面

貿易では非燻蒸の木材パレットは防疫の観点から使えませんが、それ以外はOKです。ただし返送に費用がかかるので双方向の貿易を行っているのではない場合、ワンウェイにするか、リターナブルにするかという問題があります。基本、ワンウェイとなりますが製品購入者が輸入後もパレットを継続使用したいのでリターナブルにしてほしい、費用も上乗せOKという場合もあります。これは自国でのパレット価格が高い場合は割とあります。

修理はスチールパレット以外ではほとんどありませんが(破損時は部分的な破損でも廃棄が基本)、他のパレットでも修理できるものはあります。新規で買いなおすよりも修理後に使い続ける年月に応じてコストメリットがあるなら検討すべき内容となりますが、修理コストもランニングコストとして費用に入れて比較する必要があります。

衛生面については、樹脂や発泡スチロール、スチール等が管理しやすい素材です。樹脂と同等の衛生管理ができるウッドプラスチックも近年注目を浴びています。

パレット材質別の比較表|貿易、修理、衛生
パレット材質 貿易適否 修理可能性 衛生面
樹脂
木製 燻蒸:適、非燻蒸:不適
ダンボール
スチール(鉄)
発泡スチロール
ウッドプラスチック 中から高

耐久性、耐水性、屋外保管

耐久性については自重とほぼ比例する傾向があります。耐水性と屋外保管についてはよく検討する必要がある項目です。というのも、雨濡れがまったく起きない場所で使用できるかどうかという点は、パレットの購入検討を行っている部署だけではわからないことが多いからです。例えばひさしのついた場所で雨天時に作業していたとしても、リフトが出入りし、そのタイヤについた水で床面が濡れているような場合、その上に段ボールパレットを置けば水を吸って強度がダウンします。

またパレットは荷物を載せて運んでいる時だけでなく、荷物を載せて保管、荷物を降ろしてパレットだけの状態で保管・運搬となることも念頭に置く必要があります。これらパレットが屋外や雨が入ってくるような場所で保管されるなら、屋外保管や耐水性があるものがよいでしょう。

スチール製は耐久性は強いですが、錆の問題や箱タイプのものは折りたたみ式なのでその可動部が破損したり、板面が凹んでうまく折りたためないこともあります。

パレット材質別の比較表|耐久性、耐水性、屋外保管
パレット材質 耐久性 耐水性 屋外保管
樹脂
木製 短期なら可
ダンボール 不可
スチール(鉄) 非常に高
発泡スチロール 不可
ウッドプラスチック 中から高 中から高

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