高温高圧用鋳鋼品|SCPH材の特性、成分、材質、比重、機械的性質の規格
高温高圧で使用されることが想定される弁やバルブ、フランジやケーシング、高圧部品などのために規定された鋳鋼材料の規格です。SCPHではじまる鉄鋼材料は、鋼種としては炭素鋼もしくはクロムモリブデン鋼になるため、これらの鋳物ということになりますが、それぞれに成分比が異なります。JISでは以下の8種類が規格として定められています。高温環境でも耐圧性をもつことが前提となる用途の為、材料の不純物の上限についても細かい規定が設けられています。規格制定年からずいぶん時間がたっていますが、改訂はされていません。
バルブをはじめとする配管構成部品のボディーは複雑な形状をしており、材料加工の面から言えば、削りだしで一つ一つ作っていくことが困難な形をしています。このため、鉄鋼に限らず、この用途では鋳物がよく使われるため、この鉄鋼系のバルブ用鋳物の代表格である高温高圧用炭素鋼鋳鋼品もその一つということになります。他の材料としては、さらに高温下での使用や極低温での使用を想定したステンレス鋳鋼品や、主に常温での使用を想定している低圧用のねずみ鋳鉄、低温脆性(金属は通常、過酷な低温環境ではもろくなってしまう性質を持つます)がないため過酷な低温環境、たとえば−200℃近いような環境では、銅合金鋳物(黄銅系や青銅系)が使われることもあります。
高温高圧用の鋳鋼品は、ステンレス鋼鋳鋼品ほど低温、高温には強くありませんが、コストメリットがあり、品質面でも高温高圧材料としては許容できる圧力が高く、プラントなどのバルブ類にはよく使われる材料の一つです。他の素材に比べ、鋼は靭性に優れ、硬度や引張強度、衝撃値に優れた材料です。破損しないことが重要な要素の一つとなるこの用途では、靭性が耐圧性にも影響するため、特に重要となります。使用温度、圧力、耐食性の有無、コスト等から用途に合わせて最適なものが選定されています。
材料記号 | 鉄鋼の種類 |
---|---|
SCPH1 | 炭素鋼 |
SCPH2 | 炭素鋼 |
SCPH11 | モリブデン鋼(0.5%) |
SCPH21 | クロムモリブデン鋼(クロム1%、モリブデン0.5%) |
SCPH22 | クロムモリブデン鋼(クロム1%、モリブデン1%) |
SCPH23 | クロムモリブデンバナジウム鋼(クロム1%、モリブデン1%、バナジウム0.2%) |
SCPH32 | クロムモリブデン鋼(クロム2.5%、モリブデン1%) |
SCPH61 | クロムモリブデン鋼(クロム5%、モリブデン0.5%) |
「JIS G 5151 高温高圧用鋳鋼品」(1991年改訂)に規定のある材料記号
総じて高温高圧用の炭素鋼鋳鋼品の規格といって差し支えないですが、厳密には炭素鋼の中でも以下のようにクロモリ鋼に相当する鋳鋼品があります。
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