高温用合金鋼ボルト材の規格|ボルト用SNB鋼材の材質、機械的性質、成分、寸法公差

2014年3月1日更新

高温用合金鋼ボルト材であるSNB材は、もともとは原子力発電設備に用いる材料規格の一つとして整備されたもので、名称が示す通り、高温環境におけるボルト材の規格で、主な用途としては圧力容器、バルブ、フランジ、継手などを締結する為のボルトとして想定されたものとなります。

JISではSNB5、SNB7、SNB16の三種類が規格化されており、それぞれに1種、2種、3種という名称もつけられています。

通常、鋼材は高温になると引張強さや耐力といった強度につながる性能が低下していく傾向があるため、圧力容器をはじめとする高温にさらされる環境では耐熱性の乏しい材料は使うことが難しくなります。

このボルト材はキルド鋼から熱間圧延、熱間鍛造された鋼材となり、切削、研削、冷間引抜といった加工を必要に応じて行われたもので、線材以外のボルト材については、焼きならし焼戻し、焼入れ焼戻しのいずれかで熱処理したものとなります。合金鋼特有の高温強度に優れています。SNB材の三種のうち、いずれも400℃近い高温環境でも、許容引張応力が常温とほとんど変わりません。この400℃付近で使うことができる鋼材は限られてくる為、材質についても自ずと候補は絞られてはきます。

合金鋼は、何を主眼にしたものなのかによって成分構成が大きく変わるとともに、その性能も異なりますが、三種のSNB材はそれぞれがクロム鋼、クロモリ鋼、クロムモリブデンバナジウム鋼に分類されます。

規格では成分、機械的性質のほか、公差、焼戻し温度、適用径、外観、表示方法といった規定が設けられています。また、規格にはありませんが、売買する当事者の間で、高温引張試験やクリープ試験、クリープ破断試験、シャルピー衝撃試験といった強度を見るための試験を別途受渡しの条件とすることもできます。

高温用合金鋼ボルト材の許容公差

熱間圧延丸鋼の場合と、熱間圧延線材の場合とで異なります。

丸鋼の場合
径の許容差 ±1.5%、ただし最小値0.4mmとする
偏径差 許容差範囲の70%以下
長さの許容差 長さ7m以下の場合 +40mm、-0mm
長さ7mを超える場合 長さ1mかその端数を増すごとに、+40mmに5mmを加えていく。ただし、マイナス側は常に0とする。
曲がり 規定にはなし。受渡し当事者間の取り決めによる。
線材の場合
径の許容差 偏径差
15mm以下 ±0.3mm 0.4mm以下
15mmを超え25mm以下 ±0.4mm 0.5mm以下
25mmを超え32mm以下 ±0.5mm 0.6mm以下
32mmを超え50mm以下 ±0.6mm 0.7mm以下
50mmを超える場合 受渡し当事者間による

「JIS G 4107 高温用合金鋼ボルト材」に規定のある材料記号

スポンサーリンク

>このページ「高温用合金鋼ボルト材の規格|ボルト用SNB鋼材の材質、機械的性質、成分、寸法公差」の先頭へ

加工材料の性質と特徴(目次)へ戻る

高温用合金鋼ボルト材の規格|ボルト用SNB鋼材の材質、機械的性質、成分、寸法公差の関連記事とリンク

ねじの種類
ボルトの強度区分について
強度区分ごとの材質|3.6、4.6、4.8、5.6、5.8、6.8、8.8、9.8、10.9、12.9に使われるボルト鋼材の種類
SNR鋼材、建築構造用圧延棒鋼の規格|アンカーボルトに使われるSNR
STB鋼管|ボイラ・熱交換器用炭素鋼鋼管の種類と特徴
ボイラ・熱交換器用合金鋼鋼管|STBA鋼管の特徴と種類
クロム鋼鋼材(SCr材)の用途、機械的性質、成分の一覧
クロムモリブデン鋼鋼材(SCM材)の用途、機械的性質、成分の一覧
炭素鋼と合金鋼の違いと使い分け
軟鋼
金属の疲労強度、耐疲労性
金属の靱性、ねばり強さ(靭り強さ、粘り強さ)
冷間加工と熱間加工の違い
鉄鋼、鉄、炭素鋼、ステンレス、鋳鉄、超硬の熱膨張係数
金属の熱伝導率の一覧表
鉄鋼材料、鉄、炭素鋼、工具鋼の比重
鉄鋼、炭素鋼、鋳鉄、純鉄、ステンレスの熱伝導率
鉄鋼、鉄、炭素鋼、ステンレス、ハイスの比熱
鉄鋼、鉄、炭素鋼、ステンレスの電気抵抗
金属単体の比重、密度の一覧表
金属の融点、沸点の一覧表
金属の熱伝導率の一覧表
金属材料の硬度の一覧と比較
合金元素の果たす役割

砥石からはじまり、工業技術や工具、材料等の情報を掲載しています。製造、生産技術、設備技術、金型技術、試作、実験、製品開発、設計、環境管理、安全、品質管理、営業、貿易、購買調達、資材、生産管理、物流、経理など製造業に関わりのあるさまざまな仕事や調べものの一助になれば幸いです。

このサイトについて

研削・研磨に関わる情報から、被削材となる鉄鋼やセラミックス、樹脂に至るまで主として製造業における各分野の職種で必要とされる情報を集め、提供しています。「専門的でわかりにくい」といわれる砥石や工業の世界。わかりやすく役に立つ情報掲載を心がけています。砥石選びや研削研磨でお困りのときに役立てていただければ幸いですが、工業系の分野で「こんな情報がほしい」などのリクエストがありましたら検討致しますのでご連絡ください。toishi.info@管理人

ダイヤモンド砥石のリンク集

研磨や研削だけでなく、製造業やものづくりに広く関わりのあるリンクを集めています。工業分野で必要とされる加工技術や材料に関する知識、事業運営に必要な知識には驚くほど共通項があります。研削・切削液、研削盤、砥石メーカー各社のサイトから工業分野や消費財ごとのメーカーをリンクしてまとめています。

研磨、研削、砥石リンク集