販売運送と構内運送の違い
物流費に入る運送費を、管理会計上、販売運送費と構内運送費にわけて管理していることがあります。この場合、販売運送とは自社から販売目的で客先に向けての物流費用となり、構内運送とは部品や原材料を運んでいる運送費や自社の工場間や出荷倉庫との間の社内向けの物流費用という違いがあります。
販売運送費は客先との納入条件や売買条件によっても変動しますが、通常は利益とともに売価に織り込んであります。構内運送費は製造するのに必要なコストとして製造原価に織り込んであります。
- 販売運送と構内運送の違い|目次
注視すべきは売上や利益に対する比率
どちらの費用も売上が上がると連動して上がる変動費です。このため、売上や利益に対して何パーセントが販売運送費、構内運送費となるのかあらかじめ目標を定めておき、そのパーセンテージでの管理を行うことが一般的です。
販売運送費が急に何億も増えた、となっても売上も連動して大きく増えていれば特に異常ではないからです。
とはいえ、売上増と物流費増との間にタイムラグが発生することもあれば、逆に売上が減少しても物流費がそこまで減少しないことがあります。これはトラックの契約上の問題とも関連しています。
例えば、車建て契約にて特定の輸送区間トラック1台分の費用を支払っている場合、注文が減ったからといってトラックを減便してしまうと客先へ納入ができなかったり、部材の輸送にも支障をきたしたりすることがあります。この場合、荷台がスカスカでもトラックを走らせる必要があるため、注文が減っているにも関わらず、輸送費が下がりません。結果として、売上や利益に対する物流費の比率が上がってしまいます。
車建てと個建てによる違い
日々の運用では通常、荷物の量に応じて契約する個建てよりも、トラック1台あたりの車建てのほうが安くなりますが、このように売上増減が激しい場合は必ずしも輸送費が安くならないこともあります。
車建てにするのであれば、トラックの積載率を可視化したり監視したりできる仕組みやシステムの構築が必要です。また、荷量の増減情報を先行でつかんで、トラックの便数の増減を機動的に行えてはじめて輸送効率の良い物流網の構築ができます。
また、生産計画の影響を大きく受ける構内運送費の場合、売上が上がれば上がっていくことには違いありませんが、工場側の計画が前倒しとなったり、まとめての生産となったりといった場合、物量が一気に増減しますのでそうした影響も受けることになります。
管理のポイント
以下管理のポイントについて述べていきます。
構内運送費の対売上比率が上がっている場合
自社内の物流の効率がよくないことが示唆されます。管理会計のうえで、構内運送費をさらに細かく分けて管理したほうが良い場合もあります。工場間輸送や倉庫間輸送、工場−倉庫間のシャトル便の本数や積載率を精査したほうが良いでしょう。
販売運送費の対売上比率が上がっている場合
注文が増えれば販売運送費もそれに比例して増加する為、一般にはここが問題になっているということは、対客先への納入部分では当初想定していた物流費を超えていることが示唆されます。その要因が一体何なのかを特定する必要があります。想定をオーバーした部分を特定し、是正に向けて動く必要があります。
定期便だけで本当にまわっているか
意図しないチャーター便での納入が行われている場合、販売輸送費は当初想定値を大きく上回ることになります。例えば海外直販のような場合、海上輸送前提の輸送費にもかかわらず、エアー便を使用したような場合、顕著に差が出てきます。また、遅延やトラブル等でチャーター便、特便、特車といわれる陸送便が出ている場合も、輸送費はかなり割高になります。
積載効率向上の検討
個建てであれば、1箱あたりの入り数や1個当たりの取り扱い手数料を精査します。車建てであれば、1台あたりの輸送効率(積載率)やトラックの車格が適正か、車建て契約自体が適正かを精査します。
出荷場所変更の検討
出荷場所→客先への距離は輸送費ダイレクトに反映されてくる要素です。何らかの事情で輸送費が値上げ、というような場合、出荷場所を変更して輸送費を浮かせる、デポを集約するというのも一つの方法です。
業界にもよりますが、出荷場所を客先側が登録および管理している場合、出荷場所を変更するのにも出荷場所の変更申請が必要となります。自動車部品業界の場合、カーメーカーに対して数カ月前に事前申請し、了承を得ないと出荷場を変えることができません。これには物流品質上の問題と、輸送費やサプライチェーンの戦略上の理由があります。
大量の部品が時間単位で流通しているような自動車部品の場合、出荷場というのは客先からの注文を受信する端末があります。注文はEDIによってデータとして電子的に受領し、端末から専用の現品票(ラベル)や納品書をプリントアウトして現品の箱に取り付けて出荷します。
多品種の注文が日々飛び交うことになるため、現品票を間違えて取り付けたり、現物を別のトラックに積みつけてしまうと正しい納入ができずトラブルとなります。このため、物流品質を維持するために様々な方策が講じられることになりますが、これらは総じて「出荷場」がきちんとしていればあまり問題にはなりません。
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