トラックの荷役の意味

2022年5月2日更新

荷役(読み方:にえき、にやく)とは、トラックや船などの輸送車両に荷物を積み込んだり、積んだものを着地でおろしたりする作業を意味しています。

まず、トラックの本来の業務というのはある場所から場所への荷物の移動であり、運搬です。例えば工場から倉庫、倉庫から店舗といった区間を依頼された荷物を積んで運ぶわけです。

ここで問題となるのがトラックへの荷物の積み込みと積み下ろしを誰がやるのかという点です。多くの業界ではこれはドライバーの業務のひとつとなっています。ただし、荷役と一口に言っても後述する通りその作業内容は多岐にわたります。

荷役作業と附帯作業はどこまで?

陸送のかなめとなるトラック輸送において、荷役にどこまでの作業を含めるのかというのは業界によりまちまちのところがあり、費用についても輸送費に含まれている場合や別途チャージする場合、そもそも無償扱いになっている場合等があります。原則、契約で明示し決めておくべき内容ですが、曖昧なサービスにしてしまっている悪例もあります。

また、荷役作業のなかに、付帯作業や附帯作業という名称で、輸送そのものではない業務もひっくるめて入れていることもあります。その逆に、「附帯作業」の一つに荷役という括りを入れることもあり、実務でこの言葉が使われる場合、分類や用語の定義が判然としない部分があります。

荷役の中でも「手荷役」というのは、台車はおろかフォークリフトも使用せずに積み込みや積み下ろしを行うもので、輸送業者側となるドライバーが実施すると輸送計画の遅れや長時間労働、身体的負担につながるため、最も負担の大きい作業の一つとなります。

以下に荷役作業と附帯作業の例を表にまとめてみます。

荷役作業と附帯作業の例
分類 作業内容の例
荷役作業 トラックへの荷物の積み込みと積み下ろし。フォークリフトが使える場合と、手で行う場合(手荷役)がある。
附帯作業
  • 伝票等の帳票を届ける・受け取る・貼り付ける
  • 輸送品にラベルやかんばん等を取り付ける
  • ピックアップする貨物の荷揃えを行う
  • 梱包の補強
  • 荷物の仕分け
  • 棚入れ・棚出し・倉庫への格納
  • パレットからパレットへの載せ替え
  • 貨物の荷づくり(荷揃え、ピッキング作業)
  • 積み込み伝票の作成
  • 検収・検品作業(目視での照合、ハンディターミナルを使用してのバーコード読み込みでの照合)
  • 荷捌きのための一時保管
  • 宵積み・朝積み対応
  • パレットや空容器の回収・回送・転送
  • 段積み・段落とし作業

荷役や附帯作業は、以下の点から望ましくない労働環境を形成しやすく契約時に内容をきちんと定め、作業内容の記録も取っておく必要があります。

  • 長時間労働やサービス残業の温床になる
  • ドライバーの拘束時間が長くなる
  • 何らかの責任を負わされる、クレームになる
  • 出発や着時間が遅れ、運航計画に支障が出る
  • 身体的な負担が大きい

安全と効率のはざま

実際のところ、工場では生産を担当する人員と出荷場までの運搬を担当する人員を分けていることが多いですが、リフトマンと呼ばれる出荷場までの運搬や荷役業務を担当する人員は、安全教育を受けた熟練者でも転倒や事故のリスクがあるものです。これを自社の外部のドライバーがどこまでやるかというのはよくよく検討が必要で、外部の業者にリフトを貸し出して行ってもらう場合は、置き場を明確に、距離を最小にし、手荷役無しでできるよう環境づくりしておくことが重要です。

荷役で起きる事故としては、以下のようなものがあり人身・物損いずれについても影響の大きいものばかりです。陸送における輸送便の多くは厳密なダイヤが組まれており、1時間単位で指定工場へ届けなくてはならないという場合、荷崩れが発生して製品が箱から外へ出て床へ落ちてしまえば、品質上の観点からほぼ使えなくなるので、代品を緊急で輸送する必要も出てきます。そうした挽回にかかる費用をどちらが払うのかということも事前に取り決めておく必要がありますが、こうしたリスクと隣り合わせであることを認識して行う必要があるかと思います。

  • 墜落・転落
  • フォークリフト使用時の事故
  • 荷崩れ
  • 無人暴走
  • 後退時の事故

製造業の観点からいえば、材料の仕入れから生産を経ていざ出荷したものが転倒によりダメになってしまったという場合の損害と徒労感は大きなものがあり、多くは納期が厳しいものとなるため、こうした物流品質上の問題を起こす業者とは契約を行わない、打ち切るという選択肢も出てきます。

荷役重複の解消による輸送コスト低減

どんな荷役作業をどこでだれが行っているかというのは、サプライチェーンの輸送網が複雑になってくると自社でも把握できている人間がごくわずかになることがあります。

輸送する中継地点で似たような荷役を2カ所以上でやっている場合、荷役をやめることで輸送コストの低減にもつながるため、附帯作業含めて常時整理しておく必要はあるかと思います。

輸送費の低減活動の中で輸送区間の値引き交渉というのはなかなか難しいため、自社の努力でできる部分としては箱当たりの積載率やパレタイズの効率を上げて、製品1個あたりにかかる輸送費を低減するという方法と並行して、輸送ルートを組み替えたり、荷役作業の部分を効率化してコスト低減をはかるというのもメジャーな方法といえます。

積み込み・荷下ろしというのはそれだけで大きなロスになるので、出発地で1回、着地で1回というのが望ましい形になります。途中で箱に指定のラベルや伝票を張り付けるというような附帯作業を行う設計にしてしまうとその場所でまた積み下ろしと積み込みが発生して費用が二重でかかってしまうことになります。荷役作業をいかに最小に抑えるかという視点が重要になってきます。

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