ねずみ鋳鉄品(FC材)の用途、機械的性質、成分の一覧
鋳鉄は鉄鋼材料に比べると金属組織の違いにより、機械的性質がかなり異なる材料と言えます。組織は、フェライト、パーライト、グラファイト(黒鉛)等から成り立っています。鋳鉄とは鋳物の一種で、簡単に言えば、型に鉄を流し込んで成形したものが鋳鉄品です。
融点が低ければ低いほど、複雑な形状の型であっても隅々まで溶かした鉄がいきわたるため、意図的に炭素量が多くしてあります。複雑な形状を持つ部材や製品に使われる所以です。
炭素量が多いため、鋳鉄の生地は耐摩耗性にも優れています。また、鋳鉄はその凝固の過程で黒鉛を多量に放出するため、この黒鉛が潤滑剤としても作用するため、耐摩耗性はさらに向上します。またこの黒鉛の働きにより、金属組織としての連続性を寸断するため、切削性・加工性に優れた素材でもあります。
他の特徴として、振動吸収能が高く、熱衝撃にも強いため工作機械用ベッドやテーブル、ディーゼルエンジン用シリンダライナ、ケーシング、クランクケース、油圧機械用羽根車等に使われます。C量が多いため、耐熱性にも優れ、水に対する耐食性も高いとされます。こうした利点のほか、ねずみ鋳鉄にも欠点はあり、その最たるものが黒鉛を多く含有することからくる脆さ、引張強さの弱さです。粘りのある他の鉄鋼材料と比べると数値が低めになっています。またC量が多いため、塑性加工や溶接にも向きません。
ねずみ鋳鉄は、鋳鉄品の中でも普通鋳鉄に分類される材料です。鋳造性に優れますが、他の鋳鉄に比べると脆く、弱いとされます。なお、鋳鉄の加工には、cBNではなくダイヤモンドホイール等のダイヤモンド砥石が使われるケースがあります。これは鋳鉄の組成に多く含まれるフェライトや黒鉛(グラファイト)等と関係があります。CBN、ダイヤモンド等の超砥粒を使わない場合は、C砥粒を用いた研削砥石でも研削、研磨をすることができます。
鋳鉄品の分類
鋳鉄 | ねずみ鋳鉄 | 普通鋳鉄 | FC100、FC150、FC200、FC250、FC300、FC350 |
---|---|---|---|
強靭鋳鉄 | FC300、FC350、ミーハナイト鋳鉄 | ||
球状黒鉛鋳鉄(ダクタイル鋳鉄) | FCD350-22、FCD350-22L〜 |
JIS規格では6種類のねずみ鋳鉄品の規定がありますが、化学成分については受渡当事者間の協定によるとされており、機械的性質(引張強さ、硬度等)についてのみ規定されています。
「JIS G 5501-1995 ねずみ鋳鉄品」に規定のある材料記号
ねずみ鋳鉄品(FC材)の材料記号の変遷:JISの新旧対照表
1989年 | 1956年 | 1954年 |
---|---|---|
FC100 | FC10 | FC10 |
FC150 | FC15 | FC15 |
FC200 | FC20 | FC19 |
FC250 | FC25 | FC23 |
FC300 | FC30 | FC27 |
FC350 | FC35 | - |
スポンサーリンク
>このページ「ねずみ鋳鉄品(FC材)の特徴、用途、成分、機械的性質の一覧」の先頭へ
- 加工材料の性質と特徴(目次)へ戻る
- 鋼、鉄、鋳鉄はそれぞれ何が違うか
- 鉄鋼、鉄、炭素鋼、ステンレス、鋳鉄、超硬の熱膨張係数
- 金属の熱伝導率の一覧表
- 鉄鋼材料、鉄、炭素鋼、工具鋼の比重
- 鉄鋼、炭素鋼、鋳鉄、純鉄、ステンレスの熱伝導率
- 鉄鋼、鉄、炭素鋼、ステンレス、ハイスの比熱
- 鉄鋼、鉄、炭素鋼、ステンレスの電気抵抗
- 金属単体の比重、密度の一覧表
- 金属の融点、沸点の一覧表
- 金属の熱伝導率の一覧表
- 金属材料の硬度の一覧と比較
- 鉄鋼材料の種類
- 炭素鋼と合金鋼の違いと使い分け
- 合金元素の果たす役割
- 鉄鋼、炭素鋼、合金鋼の焼入れ深さ
- 焼入れ性とは
- 可鍛鋳鉄の種類、用途、特性、記号|白心可鍛鋳鉄、黒心可鍛鋳鉄、パーライト可鍛鋳鉄の特徴と性質
- 球状黒鉛鋳鉄品(FCD材)の用途、機械的性質、成分の一覧
- 炭素鋼鋳鋼品(SC材)
- 溶接構造用鋳鋼品(SCW材)
- 構造用合金鋼鋳鋼品(SCC, SCMn, SCMnCr, SCCrM等)
- 高マンガン鋼鋳鋼品(SCMnH材)
- 鋳鉄の比重について
- 鋳鉄の耐熱温度はどれくらいか
- ニクロシラルとは
- ニレジストとは
- 耐食鋳鉄とは
- 耐熱鋳鉄とは
- チルド鋳鉄とは
- ミーハナイト鋳鉄とは
- 可鍛鋳鉄とは
- フェライト
- パーライト
- オーステナイト