耐熱鋼、SCHの種類と成分、機械的性質、耐熱温度|耐熱鋳物のJISとISO対照表
SCHではじまる記号は、耐熱鋼の鋳造品であることを示す材料記号です。高温環境では、常温で強度のある材料も大幅に物性が低下したり、もろくなったりします。様々な工業材料の中でも金属はセラミックスほどではないにしろ比較的熱には強い材料と言えますが、それでも600℃を超える温度になると使うことができる鋼材は限られてきます。
耐熱鋼はその名のとおり、こうした高温下で使われることが想定された材料で、JISで規格にもなっています。この規格は、耐熱鋼と耐熱合金の鋳物材料について規定したものです。
実用上は、JISに存在しない各メーカー独自の耐熱鋼もあり、用途によっては活躍しています。耐熱鋼の名称がつくものは、通常、650℃以上の環境下で使われます。熱に強い部類である鉄鋼材料の中でも、ステンレス鋼が概ね480℃以下で使われることを考えると、それよりもさらに耐熱性に特化した鋼材であると言えます。こうした特性を引き出すため、耐熱鋼の成分やステンレスよりもクロムやニッケルといった成分が多く、炭素含有比率も高めになっています。
ただ、耐熱鋼もどのような温度であっても万能というわけではなく、高温での強度の低下や脆化(もろくなる)の度合いが比較的緩やかであるということであって、劣化や強度低下が起きないわけではありません。それでも繰り返しの加熱に耐えられる温度が他の鋼材に比べると高いといえます。高いものでは1100℃以下であれば耐熱性を発揮し続けるもの、1000℃以下のもの、750℃以下のもの等いずれも高温での使用が想定されています。
鋳鋼品であるSCH材が通常の耐熱鋼と違う点といえば、そのすべてのグレードで少量のモリブデンが成分上あってもよいというもので、この元素は高温での金属結晶粒の粗大化を防ぐ効果を持つほか、高温での軟化抵抗に寄与します。
JISにおける耐熱鋼 | ISOにおける耐熱鋼 | ASTMにおける耐熱鋼 |
---|---|---|
SCH1 | - | - |
SCH1X | GX40CrSi13 | - |
SCH2 | - | HC |
SCH2X1 | GX40CrSi24 | HC |
SCH2X2 | GX40CrSi28 | HC |
SCH3 | - | - |
SCH4 | GX30CrSi7 | - |
SCH5 | GX40CrSi17 | - |
SCH6 | GX130CrSi29 | - |
SCH11 | - | HD |
SCH11X | GX40CrNiSi27-4 | HD |
SCH12 | - | HF |
SCH12X | GX40CrNiSi22-10 | HF |
SCH13 | - | HH |
SCH13A | - | HHtypeII |
SCH13X | GX40CrNiSi25-12 | HHtypeII |
SCH15 | - | HT |
SCH15X | GX40NiCrSi35-17 | HT |
SCH16 | - | HT30 |
SCH17 | - | HE |
SCH18 | - | HI |
SCH19 | - | HN |
SCH20 | - | HU |
SCH20X | GX40NiCrSi38-19 | HU |
SCH20XNb | GX40NiCrSiNb38-19 | - |
SCH21 | - | HK30 |
SCH22 | - | HK40 |
SCH22X | GX40CrNiSi25-20 | HK40 |
SCH23 | - | HL |
SCH24 | - | HP |
SCH24X | GX40NiCrSi35-26 | HP |
SCH24XNb | GX40NiCrSiNb35-26 | HP |
SCH31 | GX25CrNiSi8-9 | - |
SCH32 | GX25CrNiSi20-14 | - |
SCH33 | GX40CrNiSiNb24-24 | - |
SCH34 | GX10NiCrNb31-20 | CT15C |
SCH41 | GX40NiCrCo20-20-20 | - |
SCH42 | GX45NiCrWSi48-28-5 | - |
SCH43 | GX10NiCrNb50-50 | 50Cr-50Ni-Nb |
SCH44 | GX50NiCrSi52-19 | - |
SCH45 | GX50NiCr65-15 | HX |
SCH46 | GX45NiCrCoWSi35-25-15-5 | - |
SCH47 | GX30CoCr50-28 | - |
「JIS G 5122 耐熱鋼及び耐熱合金鋳造品」に規定のある材料記号
スポンサーリンク
>このページ「耐熱鋼、SCHの種類と成分、機械的性質、耐熱温度|耐熱鋳物のJISとISO対照表」の先頭へ
- 加工材料の性質と特徴(目次)へ戻る
- 耐熱鋼、SUHの種類と用途、成分、耐熱温度など
- 金属の低温脆性
- 高温高圧用鋳鋼品|SCPH材の特性、成分、材質、比重、機械的性質の規格
- SCS(ステンレス鋳鋼品)の種類と材質、成分、規格
- アルミニウム合金鋳物の種類の一覧
- アルミダイカスト(ADC材)の成分と種類、特徴|材質、比重、機械的性質など
- 銅合金鋳物、鋳造品の用途、成分、種類、記号について
- 鍛造と鋳造の違い
- 鋳造と鍛造の使い分け
- 炭素鋼鋳鋼品(SC材)の用途、機械的性質、成分の一覧
- 鋼、鉄、鋳鉄はそれぞれ何が違うか
- 鉄鋼、鉄、炭素鋼、ステンレス、鋳鉄、超硬の熱膨張係数
- 金属の熱伝導率の一覧表
- 鉄鋼材料、鉄、炭素鋼、工具鋼の比重
- 鉄鋼、炭素鋼、鋳鉄、純鉄、ステンレスの熱伝導率
- 鉄鋼、鉄、炭素鋼、ステンレス、ハイスの比熱
- 鉄鋼、鉄、炭素鋼、ステンレスの電気抵抗
- 金属単体の比重、密度の一覧表
- 金属の融点、沸点の一覧表
- 金属の熱伝導率の一覧表
- 金属材料の硬度の一覧と比較
- 鉄鋼材料の種類
- 炭素鋼と合金鋼の違いと使い分け
- 合金元素の果たす役割
- 鉄鋼、炭素鋼、合金鋼の焼入れ深さ
- 焼入れ性とは