亜鉛メッキ鉄線の規格|JISによる亜鉛メッキ鉄線(SWMGS、SWMGH)の重量や機械的性質について
亜鉛メッキ鉄線とは、軟鋼線材を原料とした鉄線の規格の一つで、その規格線にはSWMGS、SWMGHではじまる記号がつきます。いわゆる亜鉛メッキでコーティングされている鉄線、針金です。全部で11種類がJISでは規格となっていますが、これらは大別すると「亜鉛メッキ鉄線(S)」と「亜鉛メッキ鉄線(H)」の二つになります。11種類のうち、それぞれの分類での違いは、亜鉛の付着量の違いで、数字が大きいものほど亜鉛メッキの膜厚が厚いということになり、耐食性に優れたものとなります。
熱処理の有無により分かれる二つの亜鉛メッキ鉄線
Sがついている亜鉛メッキ鉄線は軟鋼線材を冷間加工したのちに、一旦熱処理(焼きなまし)を行ってからメッキしたものとなります。このため、線がやわらかく、強度面では弱くなります。
対して、Hがついている方は軟鋼を冷間加工後に、そのままメッキ処理を施したグレードとなります。こちらは焼きなましが入っておらず、加工硬化の影響もあり、前述のSよりも強度が優れています。
「亜鉛メッキ鉄線(S)」と「亜鉛メッキ鉄線(H)」のどちらについても、亜鉛メッキは溶融亜鉛メッキか、電気亜鉛メッキのどちらかとなります。
亜鉛メッキ鉄線の規格では、寸法範囲や引張強さ、伸び、ねじり特性といった機械的性質、線径、許容公差、重量等が定められています。重量に関わる規定としては、線1条の最小質量についての記載があります。
通常、鉄はそのままの状態では腐食に弱いため、野ざらしの環境で用いられるような場合や錆が発生しやすい環境で使う場合には、なんらかの耐食性向上、防錆処理が必要となります。ただし、油や防錆処理などでは用途によっては限界があり、ライフの長い何らかのコーティングが必要となります。
亜鉛メッキした鉄とステンレスはどちらが錆に強いか
多くの場合、ステンレス線を用いれば腐食の問題については解決しますが、価格が高価な部類となる為、より安価に抑えたい場合、鉄線が候補として上がってきますが、それには錆の問題を軽減する必要があり、亜鉛メッキ鉄線はそうしたニーズに対応したものとなります。海水のかかる護岸などに使う「じゃかご」用途の場合は、さらに耐食性の強い溶融アルミニウムメッキを用いた鉄線もありますが、亜鉛メッキ鉄線は安価でありながらそこそこの耐候性があるため、フェンス、じゃかご(蛇カゴ)、落石防止ネット、エクステリア、結束用の鉄線、工業用部品、競技場フェンス、公園の柵・フェンス類、農業用柵として活用されています。なお、メッキ系の鉄鋼と、ステンレスやハステロイ(ニッケル合金)などの耐食鋼を比べると、耐食鋼のほうが格段に強く、特殊な環境下での強さを発揮する為、比較にはなりませんが、そこまでのものが必要がなくコスト重視で耐食性を高めたいというような場合に重宝します。
亜鉛メッキが錆を防ぐ仕組み
亜鉛メッキによる「防錆」は、表面にできる酸化亜鉛の薄膜と、犠牲防食と呼ばれる亜鉛独特の機構によりなせる技です。金属の一番上の表層に、酸素と反応して薄い酸化膜を構成するのは他の工業材料・金属でもよく見られる現象です。一方、犠牲防食とは、表面の亜鉛メッキに何らかの損傷を受けた際に、すぐに下の鉄が錆びずに、周囲の亜鉛が先に腐食していくことで、鉄の錆を遅らせる、というものです。まずは亜鉛の表面に出来る酸化膜で守り、それらが損傷したり損耗したあとは、犠牲防食により鉄の錆の進行を遅らせます。こうした性能から、亜鉛メッキが施された鉄製品は、亜鉛がはげてしまうと意味をなさなくなるため、必然的に亜鉛メッキの膜が厚いほうが耐食性には優れている、ということになります。このような背景から、JIS規格では、亜鉛の付着量についても線径ごとに定めがあります。
亜鉛メッキには、溶融亜鉛メッキと電気亜鉛メッキがあり、どちらにも長所・短所がありますが、腐食に強いのは溶融亜鉛のほうとなります。合金層ができず、メッキ厚が均一で、薄く加工性に優れているのは電気亜鉛メッキです。昨今では、両者ともに短所を補うような技術も開発されてきていますが、大まかに言えばこうした特徴があります。
亜鉛メッキ鉄線の重量
亜鉛メッキ鉄線については1条あたりの最小質量という形で、重さについて規定されています。
線径 【mm】 |
1条の最小質量 【kg】 |
---|---|
0.10以上0.26以下 | 0.3kg |
0.26を超え0.35以下 | 0.5kg |
0.35を超え0.55以下 | 1.5kg |
0.55を超え0.70以下 | 3kg |
0.70を超え1.20以下 | 5kg |
1.20を超え2.0以下 | 10kg(参考値) |
2.0を超え3.2以下 | 20kg(参考値) |
3.2を超え5.5以下 | 30kg(参考値) |
5.5を超えるもの | 50kg(参考値) |
亜鉛メッキ鉄線の線径、サイズ
亜鉛メッキ鉄線のサイズについては、標準の線径がJIS規格にて定められています。そのバリエーションは下表のとおりです。いずれも、0.10ミリから8ミリの間となります。
線径(直径) 単位:ミリ |
---|
0.10 |
0.12 |
0.14 |
0.16 |
0.18 |
0.20 |
0.22 |
0.24 |
0.26 |
0.28 |
0.30 |
0.32 |
0.35 |
0.40 |
0.45 |
0.50 |
0.55 |
0.62 |
0.70 |
0.80 |
0.90 |
1.00 |
1.20 |
1.40 |
1.60 |
1.80 |
2.00 |
2.30 |
2.60 |
2.90 |
3.20 |
3.50 |
4.00 |
4.50 |
5.00 |
5.50 |
6.00 |
6.50 |
7.00 |
7.50 |
8.00 |
「JIS G 3547 亜鉛メッキ鉄線」に規定のある材料記号
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