ガルタイト鋼板、ガルファン鋼板、溶融亜鉛−5%アルミニウム合金メッキ鋼板の特徴と種類

2013年11月25日更新

記号としては、SZACC(SZAC材、冷延鋼板)やSZAHC(SZAH材、熱延鋼板)等がついた鋼板であり、溶融亜鉛−5%アルミニウム合金メッキ鋼板は、別名、ガルタイト、ガルファンとも呼ばれ、これらでの呼称の方が一般的かもしれません。こうした名称は商品名が一般化したものですが、現在は、この規格と全く同一の鋼板はむしろ数が少なく、亜鉛−アルミ合金のメッキに、何らかの元素を添加することでさらに耐食性の向上をはじめとする付加価値をつけたものが流通のメインとなっています。

表面処理鋼板の需要のなかでは流通の多いタイプの鋼板ではありませんが、後述するとおり、耐アルカリ性に優れるため、アルカリに対する耐食性については他の表面処理鋼板をしのぐ性能を持ちます。主要なメッキ鋼板のカテゴリーとしては、亜鉛メッキ鋼板(溶融亜鉛メッキ鋼板、電気亜鉛メッキ鋼板)、溶融亜鉛−5%アルミニウム合金メッキ鋼板、ガルバリウム鋼板(溶融55%アルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板)があり、この中で耐食性に最も優れるのはガルバリウムですが、耐アルカリ性については、ガルタイト、ガルファンが優れています。

こうした高付加価値のついた溶融亜鉛−5%アルミニウム合金メッキ鋼板の主流製品としては、JFEスチールのエコガル、日新製鋼のZAM鋼板、新日鐵住金のスーパーダイマといったものがありますが、いずれも厳密にはガルタイトやガルファンと同一のものではありません。これらガルファン由来の高付加価値の鋼板についても、2012年に「JIS G 3323 溶融亜鉛−アルミニウム−マグネシウム合金めっき鋼板及び鋼帯」としてJISで新規格が規定されました。

溶融亜鉛−5%アルミニウム合金メッキ鋼板の特徴

メッキの組成

これら鋼板の元祖とも言える溶融亜鉛−5%アルミニウム合金メッキ鋼板は、名称の通り、おおよそ5%前後のアルミ合金と残りを亜鉛成分と、場合によっては微量のマグネシウムやニッケルを含む元素で構成されたメッキで鋼板を覆うことで、耐食性や耐久性、長寿命化を狙ったものです。

鋼板は低コストで、入手しやすく、加工もしやすい材料ですが、錆をはじめとする腐食に弱いというネックがあり、そのままでは多くの用途で支障をきたしてしまうという問題がありました。この鋼板の表面に何らかのメッキをし、さらにそのメッキに化成処理を行ったり、塗装を行うことで耐食性を向上させる手法が一般化してからは、多くの表面処理鋼板が開発・製造・販売されるようになり、このガルファンやガルタイトに代表される溶融亜鉛−5%アルミニウム合金メッキ鋼板もその一つとなります。

この鋼板について規定した規格では、約5%アルミニウムと残りの部分を亜鉛で占めるメッキによる鋼板と鋼帯について規定されていますが、溶融メッキによるメッキ付けを行う為、板の両面にメッキ層が形成されることになります。このあたりは溶融亜鉛メッキに準じた性質を持つため、違いや使い分けについて詳しくは溶融亜鉛メッキ鋼板電気亜鉛メッキ鋼板の項目を参照いただくものとして先に進めます。

他の亜鉛メッキ系、亜鉛−アルミ合金メッキ系の表面処理鋼板と何が違うか

ガルファン系、ガルタイト系の溶融亜鉛−5%アルミニウム合金メッキ鋼板の特徴をまとめると下記の通りです。

  • 表面処理鋼板の全般的なメリットでもありますが、メッキ工程が省略可能。
  • 溶融亜鉛メッキ(GI)と同様のメッキ付けのため、比較的厚みのある両面メッキとなり、耐食性に優れ、切断部位についても早期の犠牲防食で鋼板そのものの錆や腐食を遅らせることが出来ます。
  • ガルファン(GF)そのものはメッキ層がやわらかいため、曲げ加工やプレスなどによってメッキ層にクラックがおきにくいという特性があります。このため、板を曲げた部分などにより激しい腐食が発生する他の鋼板に比べて、加工部位での耐食性も維持できる性質を持ちます。
  • ガルバリウム鋼板に比べ、全般的な耐食性は劣りますが、耐アルカリ性に限ってみた場合、6倍以上の耐食性を持つ為、各種アルカリ性の物質による腐食が懸念されるような場合には特に効果を発揮します。アルカリ性のほか、耐アンモニア性にも優れるため、畜舎などの構造材として用いることで、他のメッキ鋼板よりも長寿命が期待できます。
  • 溶接を阻害する添加元素の含有量が少ないことから、溶接性が良好な鋼板としても知られます。

JIS規格で規定されているガルファン鋼板、ガルタイト鋼板の種類

表面処理鋼板には、各種ありますが、この溶融亜鉛−5%アルミニウム合金メッキ鋼板(ガルタイト、ガルファン)には、熱延鋼板を原板とするものが6種類、冷延鋼板を原板とするものが11種類の合計17種類が規格として存在します。

これは成分のほか、機械的性質、メッキ厚(メッキ付着量)、板厚、寸法、これらの許容公差などについて規定されたものになります。

耐食性のメカニズム|錆になぜ強いのか

メッキ層に亜鉛を多量に含むため、他の亜鉛メッキ系の鋼板と同じように、耐食性、腐食に強いメカニズムである「犠牲防食」(鋼板より先に亜鉛が溶け出して鋼板本体を保護する)も健在ですが、亜鉛単体のメッキと比べ、アルミが含有されていることにより、表面には亜鉛−アルミの複合酸化皮膜が形成されます。この酸化膜は亜鉛単体よりも強い不動態皮膜として鋼板のメッキ層を強力に保護する為、時間経過とともに黒色へ変色する場合があるものの、亜鉛が溶け出すまでに、溶融亜鉛メッキ鋼板よりも時間がかかり、結果として、優れた耐食性を示すことになります。不動態皮膜による耐食性の向上は、ステンレスをはじめとする他の金属にも見られる機構です。

この溶融亜鉛−5%アルミニウム合金メッキ鋼板では、亜鉛とアルミ合金のほか、マグネシウムが重要な働きをしますが、添加量によっては、硬くなりすぎるため、加工時にメッキ層のクラックが起きたり、溶接性が悪くなる問題がありました。この問題が解消されてからは、逆にメッキ層のやわらかさが他の鋼板との差別化のポイントの一つとなっています。

溶融亜鉛−5%アルミニウム合金メッキ鋼板の主な用途

表面処理鋼板の中では他に流通量が大きく入手しやすいものがあるため、用途が限定されることもありますが、以下のような分野で使われることがあります。

ガルファンやガルタイト、溶融亜鉛−5%アルミニウム合金メッキ鋼板の主な用途としては、シャッター、雨戸、扉、ラック、家具類、足場板、グレーチング、鋼管・形鋼の素材、屋根材や外装材などの住宅用構造部材、コンクリートなどに近い部位や接する部材用途(コンクリート止め、デッキなど)、パイプ類、水耕栽培などの棚、畜舎など耐アルカリ性が必要な環境での鋼板、配電盤、物置、消火栓ボックス、遮音壁、ダストボックス、太陽光設置架台など日常へ目にするものや馴染みのあるものが多く見受けられます。どちらかというと、アルカリ性への耐食性を買われた採用のされ方が多いと言えます。

溶融亜鉛−5%アルミニウム合金メッキ鋼板の板厚と寸法

板の厚みについては、メッキ前の表示厚さについて規格があります。

溶融亜鉛−5%アルミニウム合金メッキ鋼板の板厚

板厚(メッキ前の板の厚み)の一覧
標準となる板厚(単位:ミリ)
0.27(メッキ厚に制限)
0.30(メッキ厚に制限)
0.35(メッキ厚に制限)
0.40
0.50
0.60
0.70
0.80
0.90
1.0
1.2
1.4
1.6
1.8
2.0
2.3
2.8
3.2
3.6
4.0
4.5

溶融亜鉛−5%アルミニウム合金メッキ鋼板の寸法、サイズ

JISに準拠している製品は、下記の寸法・サイズで流通しています。

板の寸法、幅と長さ(単位:ミリ)
標準の幅 標準となる板の長さ
762 1829、2134、2438、2743、3048、3353、3658
914 1829、2134、2438、2743、3048、3353、3658
1000 2000
1219 2438、3048、3658

溶融亜鉛−5%アルミニウム合金メッキ鋼板のメッキ厚

他の表面処理鋼板と同様に、これらガルファンやガルタイト鋼板のメッキについても付着量の規格が規定されており、材料記号とともにつけられるメッキの付着量の記号で示されることとなります。

なお、SZACD1、SZACD2、SZACD3、SZACD4の4種類については、Y35、Y45、Y60の表示記号は適用されません。

メッキの最小付着量(両面メッキ量の合計)
(単位:g/m2
メッキの付着量を示す記号 3点平均でのメッキ最小付着量 1点計測でのメッキ最小付着量 メッキ厚さ(単位:ミリ)
Y06 60 51 0.014
Y08 80 68 0.018
Y10 100 85 0.023
Y12 120 102 0.028
Y14 140 119 0.031
Y18 180 153 0.037
Y20 200 170 0.043
Y22 220 187 0.046
Y25 250 213 0.053
Y27 275 234 0.058
Y35 350 298 0.069
Y45 450 383 0.086
Y60 600 510 0.110

溶融亜鉛−5%アルミニウム合金メッキ鋼板の化成処理

メッキしたのちに、化成処理を施すことでメッキの耐食性向上や長寿命化をはかります。クロムの環境への影響に配慮したクロメートフリー処理があるのも他の表面処理鋼板と同様です。

化成処理の種類と記号の対応表
化成処理の種類 化成処理の記号
クロメート処理 C
クロメートフリー処理 NC
無処理 M

溶融亜鉛−5%アルミニウム合金メッキ鋼板の一覧|JIS G 3317 溶融亜鉛−5%アルミニウム合金めっき鋼板及び鋼帯に規定された材料記号

熱延原板を原板とする
鋼板の種類 板厚の範囲 用途
SZAHC 1.6ミリ以上4.5ミリ以下 一般用
SZAH340 高強度用
SZAH400
SZAH440
SZAH490
SZAH540
冷延鋼板を原板とする
鋼板の種類 板厚の範囲 用途
SZACC 0.25ミリ以上2.3ミリ以下 一般用
SZACH 0.25ミリ以上1.0ミリ以下 硬質用
SZACD1 0.40ミリ以上2.3ミリ以下 絞り用(1種)
SZACD2 絞り用(2種)
SZACD3 0.60ミリ以上2.3ミリ以下 絞り用(3種)
SZACD4 絞り用(4種)
SZAC340 0.25ミリ以上2.3ミリ以下 高強度用
SZAC400
SZAC440
SZAC490
SZAC570 0.25ミリ以上2.0ミリ以下

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