梱包仕様書、梱包指示書の英語でのフォーマットとテンプレート例
梱包仕様書や梱包指示書、あるいは梱包基準書は英語でいうところのPacking standard(パッキングスタンダード)やPacking specification、Packing instructionに相当する日本語ですが、いずれもその意味するところは製品の荷姿や梱包方法を示すための書類で、作り方も似ています。ただ、書類ごとの目的が違うと、記載項目も若干異なってきます。
端的に言えば、梱包仕様書とは納入先へ製品をどのような荷姿・入り数・梱包資材で納入するかを示した書面です。梱包指示書は、梱包を行う部署や担当に対して梱包内容を指示する側面を持つ書面です。
梱包仕様書は、納入先に対してどのような荷姿・梱包仕様で納入するかを提示する、という意味があり、客先提出用の梱包仕様書や梱包申請書、梱包提案書と呼ばれることもあります。こうした場合、通常は納入先の承認を得て有効となります。
貿易では、インボイスやパッキングリストが用いられますが、これに先駆けて、パッキングスタンダードを取り交わして荷姿を決めてから取引を開始する、という方法が一般的です。取引先に対して、Packing standardを提出してもらえば、どのような箱とサイズなのか、箱に何個ずつどのように製品が入っているか、補強材やパレタイズの方法について余すところなく記載されていますので、発注書や貿易書類作成もスムーズに行えます。
以下にこうした梱包仕様書に記載すべき内容と求められる項目について述べていきます。
納入時の荷姿・梱包方法を指定する仕様書、指示書
これを見れば、製品が納入される際にはどのような箱・容器に入っているのか、またその場合、1箱に何個入っており、どのように並べられているか、箱の中に緩衝材はどのように入っているか等が分かります。また、輸送に必要な情報となる製品の重量、荷材を含めた重量やサイズもわかるようになっています。
パレタイズの方法も分かる
国境をまたぐ海外貿易が関係する場合は、どのようにパレットを作るか、すなわちパレタイズするかの情報も記載されています。パレットの材質や寸法、1段に何箱で、何段積みになるか(1パレット12回し5段積み等)、補強材は何が使われるか、総重量やサイズはどうなるかといった点が一目でわかるようになっています。
納入仕様の一部として取り交わすことも
海外企業との取引の際は、パッキングスタンダード(Packing standard)を取り交わしてから輸送を始める必要があります。というのも、売り手と買い手の双方で納得して決めておかないと、どちらかで開梱や梱包、詰め替え作業などで余分な手間が発生したり、受け入れ側の倉庫での取り回しやコスト試算がやりづらかったり、輸送中の破損事故につながったりする可能性もあるからです。
輸送業者がフォークリストで貨物をさしてしまったり、箱を壊してしまったりといった場合は責任区分が分かりやすく、保険求償も比較的スムーズに進みますが、箱に壊れたり傷がついたりした箇所が見当たらないにもかかわらず、製品の品質がだめになっていたというような場合、輸送業者に責を求めるのは難しくなってきます。また、売り手、買い手のどちらかに責任という場合も、契約上きちんと危険負担や保証の範囲を決めておけば問題はないものの、いらぬ手間が発生してしまうことになりかねません。
Packing standardは、出荷する側が作成し、受け取る側が受領するものになります。
提出先ごとの梱包仕様フォーマット|客先の指定様式で提出する場合と、自社様式の場合
企業や組織によっては、客先であり納入先へ提出する梱包仕様の様式と、自社組織で用いる梱包指示の書式は分けて運用していることが多いです。
というのも、納入先へ提出する梱包仕様書や梱包指示書は、納入先の所定フォーマットでの提出が義務付けられているケースも少なくないからです。多種多様な部品を大量に用いる自動車業界などでは、梱包仕様の提出を電子化・オンライン化して、独自のシステムで入力することを求めるケースもあります。
客先仕様のフォーマットがある場合は事前に入手し、そちらへ記載するようにします。自社様式と使い分ける場合は、記入項目が重複しておくようにする、製品番号などで一元管理できるよう工夫が必要です。このあたりの管理がうまくできないと、自社様式で設定した内容と、客先へ提出した内容が異なってしまうといった事故につながることもあります。
梱包仕様や梱包指示書は何を目的とする書類か
梱包仕様書や梱包指示書、パッキングスタンダードの目指すところや目的というのは書類の性質により若干の違いはありますが、取引の対象となる製品の個別包装から箱への梱包方法、封止方法及びそれら箱のパレタイズまでのすべてのレベルでの荷姿を仕様書で定めて以下を達成することにあります。
- 1.取り扱う際、安全上の危険性を排除すること
- 2.物流品質面において、輸送中の破損・損傷・品質劣化を無くすこと
- 3.安全や品質を保ったうえで梱包・積載・作業を効率化することで輸送コストのコントロールを行うこと(より安い輸送を実現すること)
- 4.関係者間で荷姿・入り数などの必要情報を過不足なく共有すること(梱包に関する間違いをなくす)
もっとも、取引の態様や業界によってはパレタイズまで梱包仕様に記載する必要はなく、個別の製品が入る容器レベルまででよいこともあります。
安全に留意した梱包【安全】
どの段階の作業者にとっても怪我や事故につながることのないように梱包仕様を定めることが最優先事項となります。例えば、リフトで運べないような重量や、作業者が体を痛めてしまうような重量での荷姿では設定しないのが通例です。
また、形状についても安全に留意し、製品が飛び出してしまったり、破損することで事故やケガにつながることのないよう、緩衝材や梱包方法を工夫する必要があります。
1パレットの総重量は、通常のリフト上限である1000 kgを超えることはできませんが、昨今はリーチリフトを倉庫で使うケースも多く、重量上限は低くなる傾向にあり、1パレット700〜800 kg前後を上限として設定する企業もあります。
また大量の通い箱(リターナブル容器)を使うことで知られる自動車部品の業界では、トヨタ自動車が安全上の理由から通常1箱12 kg以下を求めるため、それに倣って基準を定めるケースも散見されます。自動車メーカーによってはこれが1箱15 kgとなることもありますが、昨今は女性作業者も増えており、軽量化を求める傾向があります。
1パレットの重さの上限が決まるということは、貿易を行うことを考えた場合、20ftコンテナに入った際の最大重量も決まります。また、40ftコンテナを使用する場合、何パレット入るか、段積みできるかどうかという点も決まってきます。国際ルールとして、コンテナの最大重量というのは決まっていますので、これを遵守することはもちろん必要ですが、各国のなかでもコンテナをトレーラーで運ぶ必要があることから、それぞれの国でも道路交通法をはじめとする交通法規を守ることのできる重量にする必要もあります。
危険物に該当する物品の輸送には、安全に運ぶことができる容器の基準が決まっていますので、これらに従って荷姿を設定する必要があります。
安全とセットで考えられることが多いもう一つのポイントは、環境規制にかかる物質を含有した包装資材や梱包資材を使っていないかどうか、あるいは、防疫の観点から所定の方法で燻蒸された木材パレットしか使えないといった法規制もクリアする必要があります。こうした各国での法令上の規制に抵触しないよう荷姿、梱包を設定していく必要があります。
輸送中の品質劣化や破損を防ぐ梱包【品質】
輸送中に製品が壊れたり品質がまずくなってしまっては顧客のもとに約束した品質の製品を届けることはとうていできませんので、安全の次に輸送中の品質維持を見据えて設定を行うケースが多いかと思います。
輸送中の品質劣化は、運ぼうとする製品の性状によりそのケースは千差万別といえます。
キズ、変形、錆、ダンボール破れ、突起部によるダンボール穿孔、製品ついている油等による汚れ、などが品質面でよく指摘される事項です。製品についた塗装が輸送中の擦れではげたり、識別マークやペイント、ラベルに傷がつくこともNGとなるケースが多いです。
また、箱から製品が飛び出してしまう、振動によって悪影響を及ぼすというような場合も、荷姿に何らかの工夫が必要になってきます。
品質面の評価は、輸送トライアルや輸送トライと呼ばれる、疑似的なルートや同一のルート条件で、仮設定した荷姿による輸送を実際に行って評価する方法も使われます。
品質の評価については外観だけから判別がつかないものもあり、通例、物流部門だけでなく品質管理や品質保証といった部門と共同で進められることになります。
貿易を考えた場合、海上輸送、航空輸送それぞれで異なる環境や共通する環境に一定期間さらされることになります。赤道直下を通る航路であれば、コンテナ船のどこに積まれるかにもよりますが、コンテナ天板は60℃近くにも温度が上昇します。
輸送コストに影響する梱包【コスト】
梱包を効率的にすることによってコストを下げることを考えた場合、以下の視点が有効です。
- 1箱あたりの入り数を上げる(充填率のアップ)
- 緩衝材をはじめとする高価な荷材・資材をなくす、低コストなものに変える
- 作業性の良い荷姿にして梱包作業時間を短縮する、段積みできるようにする
- 梱包を共通化する(荷材コスト、作業コスト、管理コストをすべて下げる)
国内の陸送を考えた場合、トラック1台当たりの契約である車建て契約であっても、1箱当たりの契約である個建ての契約であっても、1箱に入る個数が多いほど、製品1個あたりの輸送費は下がります。海外の輸送費にしても同様で、1パレットに1000個入る梱包と、2000個入る梱包とでは、単純に製品1個あたりに乗ってくる輸送費が倍も違うことになります。
安全・品質をクリアしたうえで輸送効率を上げるためにパッキングスタンダードをシビアに見ていく必要があるのはこうした点からです。
輸送費用のアップは、製品原価にそのまま乗ってくるコストと考えれば、単純に同額の売り上げでは補填できませんので、このコスト削減がいかに重要かが分かるかと思います。コンテナ1本に1つしか乗らないような巨大な製品については、コンテナ自体の輸送費を下げるか、使っている荷材を低コストなものや方法にするしかないですが、大量の部品が積載されるようなものについては、輸送業者との交渉、荷材変更のほか、入り数変更によっても輸送コストを下げていく改善が可能です。
海外取引の場合、FOB取引やEXW取引であっても、荷材費や梱包費については製品単価にすでに入っていますが、あとからこれらを下げることで自社の利益を増やすことができます。
誤解なく分かりやすく必要事項を漏れなく共有【標準化】
梱包についての指示書や仕様書である以上、だれが見ても同じように解釈できなければ、梱包が毎回変わってしまうことになります。特定の部署や業界だけに通じる用語は極力廃し、決まった書き方で作成することが望まれます。
この部分は簡単なようで実は難しい部分となります。例えば、上から見たとき、3x4の12個梱包する製品があるとして、これを4x3と書くか、3x4と書くかで縦横が変わってしまいますが、こうした記載方法についても統一しておくことが望ましいかと思います。
梱包仕様書やPacking standardに記載しておくべきこと
製品によって記載すべき内容は異なってきますが、おおむね多くの工業製品に共通する内容として、以下は最低限記載が必要かと思います。表記ゆれを防ぐために、プルダウンメニューによる選択式のフォーマットにあえてしているところもあります。
- 発行元・発行者名・連絡先
- 発行日
- 製造番号、製品番号、型番、製品名などの情報
- 箱種(荷姿種類)
- 梱包材料・梱包資材・荷材の種類
- 収容数
- 単品重量
- 箱重量
- 箱寸法
- 1箱当たりグロス重量
- 単品写真
- 荷姿写真(箱内への製品の入り方がわかるもの)
- パレタイズ仕様(段積み方法)
- ラベルの写真、取り付け場所
- 改訂履歴
- 関係者の承認欄
梱包仕様書、梱包指示書の英語でのフォーマットとテンプレート例
以下に、いくつかの梱包仕様書や梱包提案書、申請書のサンプルやフォーマット、テンプレートの事例を紹介していきます。ポイントは使用目的にあわせたものにすることです。あれもこれもと後工程で使わない情報を盛り込んでしまうと作るほうも読み取るほうも工数がかかってしまいますので、必要な情報を精査して、どのようにそれらが使われるか確認しながら進めるとよいでしょう。関係者に聞きこみながら、ぜひ使いやすいオリジナルのものを作ってみてください。
この梱包仕様書では、箱に収容する前の「単品」、箱に入れた状態の「荷姿」、箱をパレタイズした場合の「荷姿」の3段階に分けて、それぞれについての情報を記載する方式になっています。作業者が注意すべき梱包時の品質ポイント欄を設けてあります。シンプルですが分かりやすく誤解が少ない書式です。
この梱包仕様書では、記載すべき情報を最小限かつ必要な情報を最大限盛り込む工夫がなされています。パレタイズの指定は行わない代わりに、箱の外観と内側の様子がわかる写真欄を設けてあります。また、梱包材料がどこの仕入先から調達した何かを記録して残す様式になっており、梱包材料を追加購入するような場合でも手間なく知ることができるようになっています。
この梱包提案書は、サプライヤーから納入先へ提出するため、納入先側が準備したフォーマット例となります。梱包資材についての情報をパターン化しており、それぞれで記載事項を簡略化しています。また、サプライヤー側の重量を自動計算して、安全上の基準を超える場合、セルに色がつくように工夫が凝らされています。写真とラベルとでそれぞれの欄を作っています。
この梱包仕様書では他と同様、写真は4タイプつけられるようになっており、単品、箱外観、箱内部、ラベル欄がそれぞれ設けてあります。箱の種類やチェックボックスタイプになっており、箱の体積算出を容易にできるようになっているため、輸送スペースや輸送コスト算出の際に容積と重量の比較が容易にできるようになっています。また承認欄についても、関係部署を回覧する方式になっています。
この梱包仕様書はかなり情報が多いタイプで、梱包資材のコストや輸送コストも記載する珍しい方式です。単位もインチとセンチ、キロとポンドの併記型になっています。特定の使用目的に特化したものと言えます。このように、業界固有の事情にあわせてパッキングスタンダードはカスタマイズして使う事例もあります。
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梱包仕様書、梱包指示書の英語でのフォーマットとテンプレート例
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