SPV410の成分、材質、比重、引張強さ、降伏点などのJIS規格|工業材料として見たSPV鋼材
SPV410は圧力容器用として設計されている鋼材の一つで、数字は最低の降伏点もしくは耐力が410MPaに設定されていることからつけられているものです。鋼材の成分・組成上の分類としては、低炭素でありながら強度に優れたものにする為、Si-Mn系の鋼材となっています。
圧力容器の場合は、一定の圧力がかかっても耐えられることのほか、使用温度帯域での耐熱性や接触する溶液や気体に対する耐食性も求められます。引張強度については、550MPaから670MPaの範囲として規定されていますが、降伏点との差があり、負荷がかかっても破壊されるまでに変形する性質を持つことが伺えます。
なお、SPV鋼材全般についていえますが、板厚によって強度設定は変わってきます。
このSPV410は6種類ある圧力容器用鋼板としては、唯一、熱処理として熱加工制御が前提となっているグレードになりますが、このかわりとして焼ならしや焼入焼戻しを行ってもよい規定になっています。熱加工制御を行うことで、靭性の向上、溶接性が大きく向上することが知られており、容器の形状で使うことが多く、溶接性のよしあしがこの鋼材で製造された部材の強度に直結してくるため、重要な要素と言えます。
SPV410の比重
比重については熱延鋼板と同様の7.85がベースとなりますが、構成成分によって厳密には変わってきます。
SPV410の成分、材質
SPV材の種類 | C | Si | Mn | P | S |
---|---|---|---|---|---|
SPV410 | 0.18以下 | 0.75以下 | 1.60以下 | 0.030以下 | 0.030以下 |
SPV410の機械的性質
SPV鋼材の種類 | 降伏点、耐力(N/mm2) | 引張強さ (N/mm2) |
伸び | 曲げ性 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
厚さ6ミリ以上50ミリ以下 | 50ミリを超え100ミリ以下 | 100ミリを超え200ミリ以下 | 厚さ(ミリ) | 試験片 | % | 曲げ角度 | 内径半径 | 試験片 | ||
SPV410 | 410以上 | 390以上 | 370以上 | 550から670 | 16以下 | 1A号 | 12以上 | 180° | 厚さの1.5倍 | 1号 |
16を超えるもの | 1A号 | 16以上 | ||||||||
40を超えるもの | 4号 | 18以上 |
SPV410のシャルピー吸収エネルギー
低温にし、耐衝撃性を見るための指標となります。試験片はVノッチ、圧延方向のものになります。
SPV鋼材の種類 | 試験温度(℃) | シャルピー吸収エネルギー | |
---|---|---|---|
3個の試験片の平均値 | 個々の試験片の値 | ||
SPV410 | −10℃ | 47以上 | 27以上 |
SPV410の炭素当量|熱加工制御
炭素当量(Ceq)の計算式は下記が適用されます。
SPV鋼板の種類 | 厚さ | ||
---|---|---|---|
50ミリ以下 | 50ミリを超え100ミリ以下 | 100ミリを超え150ミリ以下 | |
SPV410 | 0.43以下 | 0.45以下 | − |
SPV410の溶接割れ感受性組成|熱加工制御
溶接割れ感受性組成(Pcm)の計算式は下記が適用されます。
SPV鋼材の種類 | 厚さ | |||
---|---|---|---|---|
50ミリ以下 | 50ミリを超え75ミリ以下 | 75ミリを超え100ミリ以下 | 100ミリを超え150ミリ以下 | |
SPV410 | 0.27以下 | 0.28以下 | 0.29以下 | − |
「JIS G 3115 圧力容器用鋼板」に規定のある材料記号
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