ガルバリウム鋼板の種類と特徴|溶融55%アルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板の規格

2013年11月25日更新

ガルバリウム鋼板の特徴

ガルバリウム鋼板とは、JIS規格では「溶融55%アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板」と呼ばれ、表面に55%のアルミ、シリコン1.6%、亜鉛43.4%で構成された「メッキ」がつけられた鋼板のことです。規格では12種類あります。

素材として用いられているメッキ前の原板には冷間圧延鋼板を用いる物が多いですが、規格上は熱間圧延鋼板を原板として用いた種類もあります。

鋼板は価格が安く、手に入りやすい上、加工もしやすいので使い勝手のよい素材であり、多くの工業材料でも使えますが、屋外で用いる場合をはじめ、錆や腐食の問題が付きまとうため、そのままでは使用が難しい素材でもあります。

こうした使い勝手のよい鋼板の表面にメッキによるコーティングを施すことで、欠点であった耐食性・耐久性を改善する表面処理鋼板が開発されるようになり、このガルバリウム鋼板もその一つです。亜鉛系メッキ鋼板には、他に、電気亜鉛メッキ鋼板、溶融亜鉛メッキ鋼板、(溶融亜鉛−5%アルミニウム合金メッキ鋼板(ガルタイト鋼板、ガルファン鋼板)があり、ガルバリウム鋼板もアルミ成分が多いものの、亜鉛を含むメッキ鋼板の一種です。

錆に強い、亜鉛系メッキで最強の耐食性、耐用年数

ガルバリウム鋼板はガルタイト鋼板(亜鉛−アルミ5%メッキ鋼板)や溶融亜鉛メッキ鋼板、電気亜鉛メッキ鋼板と比較した場合、耐食性がもっとも高くなります。条件にもよりますが、亜鉛メッキ鋼板に比べると、約3〜6倍の耐久性を持ちます。

但し、アルカリ性環境、例えば畜舎などに使う場合には、糞尿等の関係から耐アルカリ性、耐アンモニア性が必要となるため、こうした環境での耐食性はガルタイト鋼板に軍配が上がります。

ガルバリウム鋼板の開発元である米国ベスレヘムスチール社によれば、メッキの耐用年数は都市で用いた場合おおよそ25年、塩害のある地域でもおおよそ15年の耐用年数を持つとの試験結果が出ています。

また、他の亜鉛メッキ鋼板は、年月が経つと腐食の度合いもそれにちょうど比例するように進行していきますが、ガルバリウム鋼板の場合、その腐食のペースが年月が経つほどに緩やかになっていくため、耐用年数の後半になるほど腐食の進行が遅くなるという特性も備えています。

もちろん、これは諸々の条件によっても変わりますが、亜鉛のみのメッキで耐食性に定評のある溶融亜鉛メッキ鋼板の寿命が都市地帯で、おおよそ7〜9年、工業地帯で3〜4年、海岸地帯で6〜10年であることから比べると、耐久性約25年というのはメッキ鋼板としては群を抜いた耐食性を持つことがうかがえます。

錆を防ぐメカニズム|耐食性はなぜ高いのか

鋼板そのものには耐食性がなく、錆に対する耐性がないことは述べましたが、これを担うガルバリウム鋼板の表面を覆うメッキ層は、主に亜鉛とアルミニウムが混合した構成になっています。鋼板とメッキ層の間には、アルミとシリコン、亜鉛の合金層が形成されており、その上部のメッキ部分に高い防錆性能の秘密があります。

メッキ鋼板は、錆を防ぐため、「犠牲防食」と「不動態皮膜」という二つの機能を持ちます。

ガルバリウム鋼板の高耐食性、防錆機能の理由|「犠牲防食」と「不動態皮膜」
犠牲防食 犠牲防食とは、鉄を主成分とする鋼板よりも先に溶けだして表面を覆うことで、鋼板の鉄部分が錆びないように「犠牲」となって錆を遅らせる機能です。この犠牲防食の機能をもつ金属としては亜鉛が優れており、亜鉛メッキが鋼板に多用されるのもこれが理由です。
不動態皮膜 不動態皮膜とは、金属の表面、空気と接する部分に瞬時に酸化物の薄い皮膜ができる現象で、ステンレスが錆びにくいのもこの不動態皮膜が絶えず生成されていることによるものです。鋼板の場合、耐食性の高い効果のある皮膜ができないため、かわりにアルミの表面にできる不動態皮膜に頼ることになります。アルミ合金の表面には強力な酸化物の皮膜ができることが知られており、これをメッキに利用したのが亜鉛−アルミメッキ鋼板です。

ガルバリウム鋼板はアルミが55%、亜鉛が43.4%と両者共に多く含むメッキ層であり、犠牲防食の面では亜鉛メッキ鋼板に劣るものの、アルミの持つ強力な不動態皮膜により、結果として最長の耐用年数と耐久性を持つ鋼板となっています。

では不動態皮膜に優れたアルミの比率をさらに上げたメッキにすればよいという方もいるかもしれません。実際には、鋼板の防錆には犠牲防食と不動態皮膜の双方が必要で、このバランスが崩れると耐久性、耐用年数の長寿命化が難しくなってしまいます。

さらに耐食性が必要な場合

耐食性はメッキ層の厚みに比例するため、ガルバリウム鋼板のメッキ厚を厚くすることでも向上させることは可能です。

ただ本稿では、あくまで一般の熱延鋼板や冷延鋼板としての耐食性や耐久性をあげた材料を見ていますが、こうした鋼板もステンレス鋼板の耐食性には適いません。

また、高温での溶液、薬剤などがかかるような場合や、常時海水・塩水がかかるような場合などの特殊な使用環境、工業用途では、こうした鋼板ではなく、耐食性に優れた特殊鋼や他のニッケル合金などの使用が検討されることになります。鋼板のメリットは冒頭に述べたとおり、価格が安く手に入りやすいという点にあるため、「耐食性」についても限度はあります。

他の亜鉛系のメッキ鋼板に比べると高い耐熱性

同じ系統である、亜鉛系の鋼板と比較した場合、ガルバリウム鋼板のメッキ層の耐熱温度は高めです。メッキされた鋼板の耐熱性とは、すなわち、メッキを持たせることができる温度のことで、鋼板が溶ける温度ではありません。これはメッキ層がやられてしまい、鋼板が裸の状態になると、耐食性はほぼ期待できず、すぐに腐食してしまうからです。

ガルバリウム鋼板に使われているメッキは、亜鉛よりも耐熱性に優れるアルミの含有量が55%にもなるため、他の亜鉛メッキ鋼板に比べて高くなっています。

ガルバリウム鋼板と亜鉛メッキ鋼板の耐熱性の比較
鋼板の種類 耐熱温度の目安
電気亜鉛メッキ鋼板 200℃以下
溶融亜鉛メッキ鋼板 250℃以下
ガルタイト鋼板、ガルファン鋼板(溶融亜鉛−5%アルミニウム合金メッキ鋼板) 約280℃以下
ガルバリウム鋼板(溶融55%アルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板) 約350℃以下

熱反射性能が高い

住居や建物に用いた場合、室内の温度上昇を抑えることができる断熱性能を持ちます。このため、日本では住宅の屋根材としての利用がよくなされます。また熱反射特性を活かして工業用、産業用に使われることもあります。

色・意匠性・デザイン

色は鉄板にありがちなくすんだ鈍い色ではなく、素の状態でも銀白色をしています。ガルバリウム鋼板には塗装をした規格も存在しますので、用途に応じて使い分けられています。

溶融メッキ法による製造方法のため、表面にスパングルと呼ばれる細かい幾何学模様が出てきますが、これは亜鉛などメッキ成分が結晶化したもので、耐食性などの性能には影響がありません。塗装の際に、紋様が細かいものが好まれることはあります。

ガルバリウム鋼板と亜鉛メッキ鋼板の違い

錆びにくくする耐食性という面で言えば、亜鉛系のメッキに効果があり、大別すると次のような鋼板があります。

電気亜鉛メッキ鋼板
薄いメッキを精度よく均一に付着させることができ、また片面のみのメッキも可能。表面粗さを均一にしやすく、外観にもスパングル等が出ない。
溶融亜鉛メッキ鋼板
メッキ量が多くとも比較的低コストで付着させることができる。厚めのメッキに強みがあり、耐食性にも電気亜鉛メッキより優れる。
ガルタイト鋼板、ガルファン鋼板
メッキ厚があるにもかかわらず、メッキ層がやわらかいため、曲げた部位などでもクラックが起きにくく腐食しにくい。アルカリ性に強い耐食性を持つ。
ガルバリウム鋼板
一般的な耐久性、耐食性についてであれば、メッキ鋼板でも最も優れた性能を持つ。熱反射性もあり、耐熱性もメッキ鋼板の中では高い。

ガルバリウム鋼板の厚み|板厚の規格

メッキ付け前の鋼板の厚さを「表示厚さ」、メッキ付けしたあとの厚みについては製品厚さとして区別されています。以下は規格化されているメッキ前の板厚の一覧です。

ガルバリウム鋼板の板厚(標準となる板の厚さ、メッキ前)
板厚(単位:ミリ)
0.27
0.30
0.35
0.40
0.50
0.60
0.70
0.80
0.90
1.0
1.2
1.4
1.6
1.8
2.0
2.3

ガルバリウム鋼板の寸法とサイズの規格|板の幅と長さ

標準となるサイズは、幅と長さの組み合わせが決められており、下表の通りとなります。

ガルバリウム鋼板の寸法、サイズ
幅(標準となる幅) 板の長さ
762 1892、2134、2438、2743、3048、3353、3658
914 1892、2134、2438、2743、3048、3353、3658
1000 2000
1219 2438、3048、3658

ガルバリウム鋼板のメッキ厚、メッキ付着量

メッキ厚についてはいくつかバリエーションがあり、両面の合計でどれくらいの付着量とするかを取り決めることができます。一般に、厚いほど耐食性には優れたものとなります。

なお、SGLCDとSGLCDDの絞り加工用のグレードについては、AZ170、AZ185、AZ200の記号は適用されません。

ガルバリウム鋼板のメッキの付着量とメッキ厚さ
メッキ付着量を示す表示記号 三点平均の最小付着量
(g/m2
一点の最小付着量
(g/m2
メッキ厚さ
(mm)
メッキ量定数(質量計算用)
AZ70(※取り決めのある場合のみ使用) 70 60 0.026 0.095
AZ90 90 76 0.033 0.120
AZ120 120 102 0.043 0.160
AZ150 150 130 0.054 0.200
AZ170 170 145 0.062 0.230
AZ185 185 160 0.067 0.250
AZ200 200 170 0.072 0.270

化成処理については、クロメート処理とクロメートフリー処理の二つがあります。六価クロムの環境負荷の問題から、クロメートフリー処理も広がりつつあります。また、油を特に塗るような場合は、記号Oをつけることで、塗油している鋼板であることを示すことができます。無しの場合はXですが、通常は油は無しとなります。

ガルバリウム鋼板の化成処理
化成処理の種類 化成処理の記号
クロメート処理 C
クロメートフリー処理 NC
無処理 M

ガルバリウム鋼板の重量、比重

メッキ前の鋼板は7.85が比重となり、基本質量となります。

重量の計算方法としては、以下となります。

ガルバリウム鋼板が1.0mmの厚さ、1000mm x 2000mmの鋼板の場合で、メッキ量はAZ150とした場合:

7.85 x 1.0mm(厚み) + 0.200(AZ150のメッキ量定数) = 8.05(メッキ後の単位質量)

8.05 x (1000mm x 2000mm x 10-6【鋼板の面積 m2】)=16.1 (1枚の質量)

以上からこの鋼板は16.1kgとなります。

ガルバリウム鋼板の用途

鋼板にメッキして耐食性を高めた鋼材ですから、用途は鋼板が使えるところであれば、たいてい使うことができます。ただし、メッキのない状態での鋼板を用いる場合は、耐熱性や耐寒性、高温環境における機械的強度などはすべて鋼板のパラメータを心配すればよかったのですが、メッキ鋼板の場合は、鋼板そのものではなく、メッキの耐熱性や密着力、剥離などを中心に考える必要があります。

一般的には、住宅用や建築物など全般への屋根材や壁材などの構造材料として、またドアやサッシ、間仕切りなどの他、ダクトやパイプ材、ビニールハウス等の骨材、灌漑設備、建築に用いられる金物への用途がよく知られます。

また、家電製品の筐体、例えば冷蔵庫、洗濯機、エアコン、電子レンジ、オーブンなどの他、自販機やショーケース、コンテナや煙突類、カバー類全般に広く使われます。

ガルバリウム鋼板の一覧|JIS G 3321 溶融55%アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板及び鋼帯に規定されている材料記号一覧

熱延鋼板を原板に用いたガルバリウム鋼板
鋼板の種類、記号 板の厚さ(メッキ前)
SGLHC 1.6ミリ以上2.3ミリ以下
SGLH400
SGLH440
SGLH490
SGLH540
冷延鋼板を原板に用いたガルバリウム鋼板
鋼板の種類、記号 板の厚さ(メッキ前)
SGLCC 0.25ミリ以上2.3ミリ以下
SGLCD 0.40ミリ以上1.6ミリ以下
SGLCDD
SGLC400 0.25ミリ以上2.3ミリ以下
SGLC440
SGLC490
SGLC570 0.25ミリ以上2.0ミリ以下

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