砥石の選び方:砥石を比較して選ぶ

2009年8月25日更新

砥石を選ぶ際に、有効なひとつとして今使っている砥石と比較して選ぶ方法があります。ダイヤモンドホイールやCBN砥石には、その性能に決定的な影響を与える5つの要素があります。

  • 砥粒
  • ボンド
  • 結合度
  • 粒度
  • 集中度

使っている砥石の上記5要素を調べる簡単な方法としては、砥石メーカーから図面が提示されていればその図面を見るのが手っ取り早いです。他にも、砥石の台金に打たれている刻印を見る、検査表を見る、砥石の外箱のステッカーを見るなどの方法もあります。砥石メーカーの営業担当に確認してもよいでしょう。メーカーであれば、砥石の仕様をある程度まで割り出すことも出来ます。

砥石のラベルや刻印、検査票に書かれている数字とアルファベットの羅列が、実は砥石の仕様を表しています。たとえば、以下のような記号が書かれていたとします。

SD170 N 100 M-5.0 1A1 D200xX5xT10xH50.8

  • SD: 合成ダイヤモンドを使った砥石であることを示しています。
  • 170: 粒度を示しています。
  • N:ボンドの結合度、つまり砥石の硬さを示しています。
  • 100: 集中度、つまり砥粒の量を示しています。100の場合、砥層の25%が砥粒であることを示しています。
  • M: これはメタルの省略記号で、ボンドの種類がメタルボンドであることを示しています。
  • -5.0: 砥層厚みを示すXの値です。使える砥石の部分の厚さを示しています。
  • 1A1: 砥石の形状を示しています。1A1ならばストレートホイールをあらわします。
  • D200: 砥石の直径(外径)をmmで示しています。
  • X5: 砥層厚、砥石で正味使える厚さをmmで示しています。
  • T10: 台金(基板)の厚さを示しています。この形状の場合、この上に砥層が乗っていますので、砥層の幅でもあります。
  • H50.8: フランジに取り付ける穴径を示しています。

砥石メーカーによって、若干表記の順番や記号が違うこともありますが、おおむね上に書かれている記号はすべて網羅されています。

上記から今使っている砥石の仕様を割り出したら、次は比較検討の項目を見ていきます。

切れ味が出ない場合の検討例

切れ味にかかわる要素は、複数ありますが、砥石の仕様から見ていきます。

  • 砥粒:ダイヤモンドひとつをとっても、複数の種類があり、破砕性(砕けやすい)の強いタイプのダイヤモンドは切れ味が鋭いです。
  • 粒度:粗い粒度ほど、研削力は高くなり、よく切れます。
  • 結合度:やわらかいほど切れ味があがりますが、ライフは落ちていきます。
  • 集中度:これを高くして砥粒の入っている量を増やし、回転数を上げて研削していく考え方と、これを低くし、砥粒ひとつにかかる負荷を上げて切り込み深さを確保して切れ味をあげていく考え方などがあります。
  • ボンド:一般に、切れ味重視ならばレジンとなります。ぞれぞれのボンドでも切れ味重視と寿命重視の仕様があります。

今使っている砥石と比較して、上記の各パラメータを動かしていくことで使いやすい砥石を選んでいく方法です。

面粗さが出ない場合の検討例

  • 砥粒:破砕性の強いタイプではなく、また形状が尖っていないタイプのダイヤモンドは目詰まりを起こしやすく、面粗さの向上には役立ちます。
  • 粒度:粒度を細かくして面精度をあげます。ただし、前の工程で表面が十分に取りきれておらず粗すぎると、十分に面品位が出ません。粗工程と仕上げ工程はそれぞれの砥石に仕事をさせる必要があります。
  • 結合度:硬めにし、目が若干詰まりやすくすることで面粗さを確保できます。
  • 集中度:低くすると砥粒が切り込んでしまうため、高めにするか回転数や切り込み量、送り速度とあわせて調整します。
  • ボンド:やわらかいレジンボンドは、空気圧がぬけたタイヤのように広い面積に接触し、弾力があるボンドのため同じ粒度でも砥粒があまり突き出しません。

面粗さは、切れ味が持続しすぎると十分に細かい面が出ない傾向があるため、ある程度の目詰まりを起こしていくほうがよい場合があります。

砥石の持ちに問題がある場合の検討例

  • 砥粒:加工物の硬さによって、破砕しにくいタイプや反対に破砕しやすいタイプのものなど使い分ける必要があります。
  • 粒度:粗い粒度ほど損耗は早くなりますが、加工条件にあった粒度を選ぶ必要があります。
  • 結合度:やわらかすぎると、砥石の減り方は速くなります。
  • 集中度:ダイヤモンドの量を増やしてやると、砥粒ひとつにかかる負荷が低減します。
  • ボンド:加工物の切り屑によって削られていくので、相性がありますが、レジンや電着は減りが早い傾向があります。反対にメタルはライフでは定評があります。ビトはメタルとレジンの中間の性能を発揮することもあれば、加工物との相性が悪いと一気に損耗します。

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