CBN砥石・CBNホイール(金属研削・研磨用砥石)

2010年2月15日更新

CBN砥石は、ダイヤモンド砥石に次ぐ硬さを持つ超砥粒砥石で、主に鉄を含む金属との相性がよいことで知られています。金属といってもその範囲は非常に広いのですが、ここでは特に鉄を含有している加工物で、炭素工具鋼(SK)、高速度鋼(ハイス、SKH、SKD)、合金工具鋼(SKC)、クロム鋼(SCr)、クロムモリブデン鋼(クロモリ、SCM)、ニッケルクロム鋼(SNC)、ステンレス鋼(SUS)などの鋼系の金属を指しています。

cbn砥石ストレート
CBN砥石カップ

CBN砥石(金属研削用)の特徴と仕様

研削でよく使われる工程

CBN砥石、CBNホイールは、鉄鋼素材の研削用として加工する形状にあわせて複数パターンの製作が可能です。粗工程から仕上げ用まで各種グレード、仕様が出回っています。

  • 切断用:1A1R型(リムタイプ)
  • 平面研削用:6A2型
  • 円筒研削用:1A1型、6A2型
  • 穴あけ用:コアドリル型
  • 面取り用:6A2型、V・U型砥石
  • 軸付CBN砥石として各種軸付形状
  • 電着CBNホイール,電着CBN砥石として各種
粗工程 中仕上げ 仕上げ

CBN砥石の標準仕様

寸法 粒度 結合度 集中度 ボンド
各種 #16〜#8000程度
P(硬め仕様)
N(標準硬さ)
L(軟らかめ)
標準では100
(10〜150)
レジン
(稀にビト、メタル)

砥石の切れ味

CBN砥石はその性能を発揮させるために一定以上の剛性のある機械を用いて切り込み、回転数はダイヤモンドに比べて速めに設定する傾向があります。ダイヤモンドに比べて低い硬度を他のパラメータで補います。

砥石の寿命

回転数を上げることで砥粒1個にかかる負荷が減り、研削抵抗が減少することでライフはのびていきますが、ライフ重視型ではボンドの結合度と集中度を調整していく必要があります。

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CBN砥石での研削に適した鉄鋼系材料の特徴

鉄や鋼類などの金属はCBNを砥粒として用いたCBNホイール、CBN砥石が一般的に使われますが、これはダイヤモンドが鉄と相性が悪いためで、一部の例外を除くと鉄系の被削材(加工対象)は、ほとんどCBN一択に近い状況です。CBNを使うまでもないときは、GC砥石がよく使われます。GCは緑色炭化ケイ素の略で、硬さはCBNに劣りますが、砥石を使った研磨の場合、砥石のほうが磨く対象よりも硬くなくとも加工することはできますので、CBNが市場に出回るまでは長らくこの砥石一択でした。

CBN砥石は鉄を含む素材に適合

常温では、CBNはダイヤモンドよりも硬度に劣りますが、それでもその次の硬いSiCなどの砥粒に比べると段違いに硬い素材です。ダイヤモンドは炭素でできた物質のため、鉄を含有するワークを研削するとこの炭素が研削熱とともに鉄に奪われ、切れ味が低下し、ダイヤモンドの硬度も熱によって低下していきます。

cbnはダイヤモンドよりは低いものの、熱伝導率の高い砥粒です。これは研削中に発生した熱を、工作物側ではなく、砥粒側に逃がすので、加工している対象を熱軟化させることなく研削していくことができる優れた特性を持ちます。ただダイヤモンドは高温下で硬度が低下していく性質を持つのに対し、cbnは高温下で硬さが低下しない特性があり、鉄とも相性がよいことから砥石の仕様が研削条件にうまくマッチすれば優れた性能を発揮します。つまり、高温下になることが分かっている加工では、ダイヤモンドよりも硬度が高い状態での研磨・研削が可能になります。

またクーラント(研削液)としては、油系のものがよく用いられますが、これは加工物と砥石を冷却するだけでなく、研削抵抗を減らすことで砥石のライフを持続させる効果があります。

加工中の「熱」は、研削している対象への悪影響だけでなく、砥石(とくに砥粒)へダメージを与え、多くの場合「硬さ」を損ないますが、CBNとはダイヤモンドよりも高温下でも比較的「硬さ」を維持し続けます。

とはいえ、900℃を超えると水蒸気や酸素と反応して加水分解を起こすと言われているため、加工中は摩擦をなるべく減らせる潤滑性に優れた研削液と相性がよいです。

鉄系素材は延性材料

金属系の加工物は、延性モード、つまり切り屑が粉状ではなく丸まった金属状のものになります。粘りがあるとともに、他の材料に比べるとやわらかいものが多く、加工性の悪い金属材料などでは精度を出すのに苦労されるかと思います。粘り気があったり、軟らかかったりする材料ほど研削は難しくなる傾向があります。研削条件や加工物の性質から、レジンボンド、電着、ビトリファイド、場合によってはメタルボンドなど砥石の仕様のバリエーションも豊富です。

ボラゾン砥石はCBN砥石

なお、「ボラゾン砥石」と呼ばれている砥石はこのCBN砥石のことを指します。ボラゾンは、CBNを開発したGE社が命名したもので、したがって本来はGE社のCBNを指しますが、今日ではCBN工具やCBNホイール自体を「ボラゾン」「ボラゾン砥石」と呼ぶことがあります。

CBN砥石を使った金属研削の一般的な研削条件

砥石周速 20〜45m/sec
切り込み量 0.02〜0.2mm
送り速度 10〜15m/min
砥粒タイプ CBN(メタル、ビト)、CBNC(レジン)
粒度 #170〜230
集中度 75〜120
研削液 油性(50:1)

CBN砥石、CBNホイールがよく使われる研削対象

炭素鋼,SK
高速度鋼,ハイス,SKH
合金工具鋼,SKC
ダイス鋼,SKD
クロム鋼,SKD
クロムモリブデン鋼,SCM
ニッケルクロム鋼,SNC
ステンレス鋼,SUS
軸受鋼,SUJ
耐熱鋼,SUH

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