JIS B 4142:2002 ダイヤモンド/CBN工具−安全性要求事項
この規格はダイヤモンド工具、CBN工具の特に安全性要求事項について規定したものですが、定義や記号などの項目をはじめ、ダイヤモンドホイールなどの「規格」が網羅的に記載されたものです。研削加工(各様式)の定義、工具の形状別の定義、寸法記号、表示記号などは他の規格に規定されている事柄のほか、安全性や危険についての項目では、試験速度や安全係数についての定義もあります。また最高使用周速度については、破壊回転周速度に基づく値が規定されています。カバーする範囲は、ダイヤモンドホイールのほか、ビット型の工具やセグメントソーも含みます。また附属書Bでは、アンバランスの最大許容量が規定されています。
主な用語の定義及び記号
外周研削
側面荷重がないか、限定された側面荷重下における、ホイールの外周を用いる研削。 ※主にストレートホイールを想定。
側面研削
ホイールの側面、端面、正面を用いる研削。 ※主にカップホイールを想定。
切断研削
作業中に側面荷重にさらしてはならない特別に薄く設計したホイールの外周を使う、切断又は溝入れ。内周刃ホイール、バンドソー、ワイヤソーを用いる切断もある。
コアドリリング
コアビット(コアドリル)を用いる、穴あけ。
三次元研削
柄付タイプのダイヤモンド/CBN工具の外周及び端面又はコーナーを用いる研削。
速度、速度試験、安全係数の定義
記号 | 名称 | 定義 | 単位 |
---|---|---|---|
n | 回転速度 | 1分間当たりの回転数 | min-1または1/min |
nab | 軸付ホイールの回転振れ曲がり速度 | 遠心力で回転振れ曲がりが出る軸付ホイールの回転速度 | min-1または1/min |
nmax | 最高回転速度 | 最高使用周速度における新品ダイヤモンド/CBN工具の1分間当たりの回転数 | min-1または1/min |
v | 周速度 | ダイヤモンド/CBN工具の外周の速度 | m/s |
vs | 最高使用周速度 | 回転するダイヤモンド/CBN工具の最高許容周速度 | m/s |
vpr | 回転試験周速度 | 製造業者が試験するダイヤモンド/CBN工具の周速度 | m/s |
fpr | 試験速度係数 | 最高使用周速度で除した、安全試験速度の比 | − |
vbr | 破壊回転周速度 | ダイヤモンド/CBN工具が、無負荷で遠心力の下に破壊する周速度 | m/s |
vbr | 破壊回転周速度(最小値) | ダイヤモンド/CBN工具が、無負荷で遠心力によって破壊に至る直前の論理的な周速度。この値を破壊回転試験の試験速度として用いる。 | m/s |
S | 安全係数 | 破壊回転周速度を最高使用周速度で除した値の2乗。Sの公式は、 S=(vbr/vs)2 | − |
Sab | 軸付ホイールの回転振れ曲がりに対する安全係数 | 公式は、Sab=nab/nmax | - |
危険のリスト
次の潜在的原因で高速回転による工具の破壊又は破損による投射物の衝撃
対策:破壊・破損が起きた場合、究極的には、研削機械に附属したガードで防御する。個々の対策は次の通り。
工具の不適切な設計
設計開発段階で強度を確認する。意図した使用条件に対応する安全係数・最高使用周速度などの確認。
製造の欠陥
検査を確実にする。
工具の選定の不適切
意図した使用条件と工具の表示・情報の整合の確認。
取扱い、保管の不適切による工具の損傷
使用する機械・工具の取扱説明書の指示に従う。損傷した工具は使用禁止。
取付け、研削作業の不適切による工具の破壊・破損
工具の表示・使用する機械・工具の取扱説明書に従う。最高使用周速度以下で使用する。個人用保護具を使用。
と粒層の緩み
使用前の外観検査。
次の原因による振動の発生
騒音については個人用保護具を使用。
工具のアンバランス
検査を確実にする。
工具の不適切な取付け、使用
使用する機械・工具の取扱説明書の指示に従う
次の原因による、回転中の工具への巻きこまれ、接触
作業者の教育・訓練。機械・工具の取扱説明書の指示に従う。
不意の動作
意図した作業の誤動作
ワイヤソーを用いる場合の危険のリスト
危険源 | 危険の事象 | 対策 |
---|---|---|
次のいずれか又は複合した原因又は現象の拡大による、ワイヤソーの破断 | ワイヤソーが破断すると、次の単一又は複合現象が発生することがある。 1.ワイヤソーが、立ち上がり・蛇行・鞭打(べんうち)・巻付きによって、走行方向が大きく乱れる。 2.ビーズが飛散する。 |
ワイヤソー及びワイヤソーイングマシンの取扱説明書をよく読み、使用法を守る。 |
1.支持ケーブルの摩耗 2.支持ケーブルの腐食 3.ワイヤソーの形状崩れ(ビーズの形状崩れ、ワイヤソーのキンク) |
ワイヤソーを使用前に必ず点検し、異常があれば使用しない。左記の危険源1、2、3、4、5、6があれば使用しない。 | |
4.ジョイント部の劣化 | スリーブの交換 | |
5.被覆材の破損 | 破損したものは使用しない。 | |
6.ビーズの寄り(ジャム) | ビーズの寄りが起きたものは使わない。 | |
7.過大な張力 8.過大な送り量(切込み量) 9.冷却水の不十分な供給 |
機械の取扱説明書の指示を守る。 | |
10.ワイヤーソーイングマシンの設置不良 −ワイヤラインのゆがみ −ワイヤソーが被削材の角で「く」の字に曲げられる |
ガイドプーリを使用する。 |
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