プラスチックの充填剤とフィラーの記号

2022年6月5日更新

プラスチックにはフィラーと呼ばれる充填剤(充填材)や補強材、強化材を入れることで、耐久性や強度を上げたり、抗菌性や耐熱性、軽量化、吸水性、難燃性といった機能性を付与したり、かさを上げてコスト低減したりといったことが可能になります。

実際のところ、プラスチックの本体であるポリマーだけでは各産業分野で多様化・深化する要求仕様に応えることが難しく、実務の中のプラスチックは様々な充填剤や添加剤によって必要となるスペックを満たすものとも言えます。裏返せば、同じ材質のプラであっても、添加されている充填剤によってさまざまなスペックの変化を出すことができるということでもあります。

こうしたことからプラスチックは材質が何かという点に加えて、強化剤や充填剤として何をどれだけ入れるかという組み合わせの問題が重要となります。設計からリサイクルに至るまで、プラスチックの材質と充填している材料とは不可分な関係があります。

プラスチックの充填剤や強化剤の記号|GF30の意味

プラスチックの材料記号には、充填剤が何かを示すものもあり、基本表示方法としては充填剤の種類を示す記号と、その形態を示す記号を組み合わせ、さらに重量比で何%の添加なのかを数字で表示させます。図面でも材料の欄には充填剤の重量比をセットで記載しており、製品によってはリサイクル方法が分かるよう、現物に刻印されることもあります。

例えば、ガラス繊維を添加している場合は、Gが充填剤の種類として「ガラス」を意味し、Fが充填剤の形態として「繊維」を意味しています。このあとに重量比でガラス繊維をどれだけ添加しているかを示します。下図の通り、GF30となれば、ガラス繊維を重量比で30%で添加したポリマーということになります。これが炭素繊維なら、炭素を示すCと繊維を示すFの組み合わせで、CFとなります。

プラスチックの充填剤、強化剤の記号

プラスチックの種類を示す記号の後にハイフンでつながれた部分がこうした充填剤・強化剤の内訳を示す記号となり、ポリマーには様々なものがあることからそのグレード(特性)を示す記号を入れることもできます。上図ではIに相当するのがこの部分です。また、さらに難燃剤を使用している場合もその種類を記号で表記することが可能です。

なお、強化剤・充填剤は、複数使用している場合は、GF(ガラス繊維)+TD(タルク粉末)のように+でつないで表示します。

充填剤・強化剤の種類の記号一覧

なお、アラミドは古いものだとRで表記されていることがありますが、現在はAに統一されています。

MEの場合は、MED(Al)のように金属類の場合は、使用している金属の元素記号を括弧でくくって表示します。

充填剤の種類の記号
記号 充填剤の材料の種類 英語表記
A アラミド aramid
B ホウ素 boron
C 炭素 carbon
D アルミナ三水和物 alumina trihydrate
E クレー clay
G ガラス glass
K 炭酸カルシウム calcium carbonate
L セルロース cellulose
M 鉱物 mineral
ME 金属 metal
N 天然有機物(木綿、サイザル麻、大麻、亜麻、その他) natural organic(cotton, sisal, hemp, flax, etc.)
P 雲母 mica
Q シリカ silica
S 合成有機物(例:微粉砕したPTFE、ポリイミド、熱硬化性樹脂) synthetic organic (e.g. finely divided PTFE, polyimides or thermoset resins)
T タルク talcum
W 木材 wood
X 規定しない not specified
Z このリスト以外 others not included in this list

充填剤・強化剤の形態(構造)の記号一覧

充填剤の示す記号のうち、上記の種類の記号に続けて記載する形態の記号一覧となります。

充填剤の形態(形状、構造)の一覧
記号 充填剤の形態(構造) 英語表記
B ビーズ、球、中空球 beads, spheres, balls
C チップ、切片 chips, cuttings
CM チョップドストランドマット chopped-strand mat
D 細粒、粉末 fines, powder
EM 連続ストランドマット continuous(endless) strand mat
F 繊維 fibre
G 摩砕粉 ground
H ウイスカー whisker
K 編物 knitted fabric
L 層(状) layer
LF 長繊維 long fibres
M マット(厚手) mat (thick)
N 不織(布、薄手) non-woven(fabric, thin)
NF ナノファイバー nanofibres
NT ナノチューブ nanotubes
P paper
R ロービング rovings
S フレーク flakes
T 撚糸または組物、コード、チューブ twisted yarn or braided fabric, cord, tube
V ベニヤ(単板) venner
W 織物 woven fabric
X 規定しない not specified
Y ヤーン yarn
Z このリスト以外 others not included in this list

スポンサーリンク

>このページ「プラスチックの充填剤とフィラーの記号」の先頭へ

加工材料の性質と特徴(目次)へ戻る
「プラスチックの種類と用途、物性について」へ戻る

プラスチックの充填剤とフィラーの記号の関連記事とリンク

プラスチック(樹脂)の種類と記号一覧表
プラスチックリサイクルマークの数字の意味と種類
4大プラスチックとは
バイオプラスチックの種類と原料|デメリットや課題はどこにあるか
PFOAの使用と含有製品はいつから規制か|フライパンから繊維、撥水剤、泡消火剤まで
プラスチックの人体への影響|プラスチックは安全なのか
プラスチックの比重、密度の一覧表
プラスチックの融点、耐熱温度の一覧表
プラスチックの熱変形温度の一覧表
プラスチックの難燃性|UL規格と酸素指数から見る難燃性の度合い
プラスチックの引張強さの一覧表
プラスチックの比熱の一覧表
プラスチックの熱膨張係数、熱膨張率の一覧
プラスチックの熱伝導率の一覧
アロイ化とは
熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の違い
フェノール樹脂(PF)
ユリア樹脂(UF)
メラミン樹脂(MF)
不飽和ポリエステル樹脂(UP)
ポリウレタン(PU)
ジアリルフタレート樹脂(PDAP)、アリル樹脂
シリコン樹脂(SI)
アルキド樹脂
エポキシ樹脂(EP)
フラン樹脂
ナイロン6(PA6):ポリアミド(PA)の一種
ナイロン66(PA66):ポリアミド(PA)の一種
ナイロン12(PA12):ポリアミド(PA)の一種
ポリアミドイミド
ポリアセタール(POM)
ポリカーボネート(PC)
変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE)
ポリブチレンテレフタラート(PBT)
GF強化ポリエチレンテレフタラート(GF-PET)
超高分子量ポリエチレン(UHPE)
ポリフェニレンスルフィド(PPS)
ポリイミド(PI)
ポリエーテルイミド(PEI)
ポリアリレート(PAR)
ポリスルホン(PSF)
ポリエーテルスルホン(PES)
ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)
液晶ポリマー(LCP)
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、いわゆるフッ素樹脂
ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、いわゆるフッ素樹脂
ポリエチレン(PE)
ポリプロピレン(PP)
ポリスチレン(PS)
アクリロニトリル−スチレン樹脂(AS樹脂)
アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)
ポリ塩化ビニル(PVC)
メタクリル樹脂(PMMA)
ポリエチレンテレフタラート(PET)
ポリビニルアルコール(PVA)
酢酸セルロース(CA)
プロピオン酸セルロース(CP)
硝酸セルロース(CN)
ポリ乳酸(PLA)
フラン-ホルムアルデヒド樹脂(FF)
エチルセルロース(EC)
フェノール-ホルムアルデヒド樹脂(フェノール樹脂)(PF)
ポリスルホン、ポリスルフォン(PSU)
ポリ塩化ビニリデン(PVDC)
ポリフッ化ビニリデン(PVDF)
アイオノマー樹脂
FRP(繊維強化プラスチック)
炭素繊維メーカーの一覧
プラスチックの黄ばみ除去について

このサイトについて

当サイトの記事はすべて工業製品のメーカーの実務経験者が執筆しています。

砥石メーカーの製品や技術を紹介するサイトとしてはじまりましたが、加工技術・工具・研削・研磨に関わる情報から派生し、ユーザーの問い合わせに応じて鉄鋼、非鉄、貴金属、セラミックス、プラスチック、ゴム、繊維、木材、石材等製造に使用する材料・ワークの基礎知識についても掲載するようになりました。その後、技術情報に限らず、製造業で各分野の職種・仕事を進めるうえで役立つノウハウも提供しています。

製造、生産技術、設備技術、金型技術、試作、実験、製品開発、設計、環境管理、安全、品質管理、営業、貿易、経理、購買調達、資材、生産管理、在庫管理、物流など製造業に関わりのあるさまざまな仕事や調べものの一助になれば幸いです。

工業情報リンク集

工業分野のメーカーや商社を中心に、技術、規格、ものづくりに広く関わりのあるリンクを集めています。工業製品の生産に必要とされる加工技術や材料に関する知識、マーケティングから製品企画、開発、販売戦略、輸出入、物流、コスト低減、原価管理等、事業運営に必要な知識には共通項があります。

研磨、研削、砥石リンク集