ポリスチレン(PS)の物性と用途、特性について
ポリスチレンは代表的な汎用樹脂の一つで、熱可塑性プラスチックのうち、非晶性のものに分類される材料です。別名、スチロール樹脂、略してPS樹脂とも言います。常用する場合の耐熱温度は70〜90℃。比重は1.04から1.065です。
GPSSとHIの二つのグレードを持つポリスチレン
ポリスチレンには二つのグレードが知られており、一つは透明で剛性に優れるGPグレード、もう一つが乳白色で衝撃に強いHIグレードです。
GPグレードはGPPSとも表記しますが、いわゆる汎用ポリスチレンのことです。透明度が高いという特長があります。HIグレードは耐衝撃ポリスチレンのことで、HIPSとも表記します。これは汎用ポリスチレンにゴム成分を加えているため、色がついています。衝撃と硬さのバランスが良いといわれる素材です。添加する成分の種類や配合によって強度も変わります。
ポリスチレンは着色が簡単にできる点や、電気絶縁性のよさ、無味無臭、形状をつくりやすい、発泡させやすい、リサイクルのしやすさといった点も特長にあげられます。
また食品の容器等に使う場合に留意しなければいけない点として、長期間保存しておくと、内容物の味が変わる場合があります。また柑橘類に含まれているテルペン油やエゴマ油等の油脂にも侵されることがあるとされます。なお、有機溶剤であるベンジンやシンナーには溶解します。
断熱性と保温性にも長けた発泡ポリスチレン
ポリスチレンの中でも軽さ、剛性の良さ、断熱性、保温性に優れた材料です。汎用のポリスチレン同様、ベンジンやシンナーには溶解します。梱包緩衝材や食品用トレー、食品容器などに使われます。身近なものでは他に畳の芯に使われることもあります。
ポリスチレンはスチレン系の樹脂ですが、他に同類のものとしてはAS樹脂やABS樹脂があります。主な用途としては、射出成形品、雑貨、弱電機器、共重合用、シート、日用品全般、トレー、家電製品・電気機器の外装全般(テレビの箱、エアコンの外装部分、CDケースなど)があげられます。
フィラー(充填材)の種類 | 無充填(汎用耐熱性) | グラスファイバー(GF)充填 | ||
---|---|---|---|---|
物理的性質 | 密度(g・cm^-3) | 1.04から1.09 | 1.08 | |
融点(℃) | 結晶性 | − | − | |
非晶性 | 100 | - | ||
透明度 | 透明 | 半透明〜不透明 | ||
吸水率(%)3mm、24h | 0.03から0.10 | 0.05から0.10 | ||
成形特性 | 成形温度範囲(℃) | 射出:162から260 | 射出:232から329 | |
成形圧力範囲(kgf・cm^-2) | 703から2110 | 1050から2812 | ||
成形収縮率(%) | 圧縮:0.1から0.6 射出:0.2から0.6 |
0.1から0.2 | ||
機械的性質 | 引張強さ(kgf・mm^-2) | 3.52から8.4 | 5.9から14.1 | |
最大伸び率(%) | 1.0から2.5 | 1.1から3.8 | ||
圧縮強さ(破壊、降伏)(kgf・mm^-2) | 8.0から11.2 | 15.5 | ||
曲げ強さ(破壊、降伏)(kgf・mm^-2) | 5.6から9.8 | 15.5から18.3 | ||
引張弾性率(kgf・mm^-2) | 281から351 | 590から907 | ||
圧縮弾性率(kgf・mm^-2) | − | − | ||
曲げ弾性率(kgf・mm^-2) | 281から330 | 662から1270 | ||
アイゾット衝撃値(kgf・cm・cm^-1) | 1.32から2.18 | 2から22.5 | ||
硬度(硬さ) | ロックウェル | M65から80 | M70から95 | |
ショア | - | - | ||
熱的性質 | 熱伝導率(10^-4cal・s^-1cm^-2)(K・cm^-1)^-1 | 2.4から3.3 | − | |
比熱(cal・K^-1g^-1) | 0.32 | 0.23から0.27 | ||
線熱膨張率(10^-5K^-1) | 6.0から8.0 | 1.8から4.5 | ||
熱変形温度(℃) 18.6kgf・cm^-2 4.6kgf・cm^-2 |
104 | 90から104 | ||
電気的性質 | 体積抵抗率(Ω・cm)(23℃、50%RH相対湿度) | >1016 | 3.2から1016 | |
絶縁強さ(短時間法)(3.18mm)/kV・mm-1 | 19.6から27.5 | 13.7から16.7 | ||
比誘電率(εγ) | 60Hz | 2.4から3.1 | − | |
MHz | 2.4から2.7 | − | ||
誘電正接(tanδ) | 60Hz | 0.0001から0.0006 | 0.004から0.014 | |
MHz | 0.001から0.0004 | 0.001から0.003 | ||
化学的性質、耐薬品性 | 燃焼性、速度(mm・min-1) | <38 | 25.4 | |
日光の影響 | 黄色(わずか) | 黄色(わずか) | ||
弱酸の影響 | 無し | |||
強酸の影響 | 酸化性酸に侵される | |||
弱アルカリの影響 | 無し | 抵抗 | ||
強アルカリの影響 | 無し | 表面だけ侵される | ||
有機溶剤の影響 | 60〜93℃炭化水素に溶解 | 炭化水素に溶解 |
スポンサーリンク
>このページ「ポリスチレン(PS)の物性と用途、特性について」の先頭へ
- 加工材料の性質と特徴(目次)へ戻る
- 「プラスチックの種類と用途、物性について」へ戻る
- プラスチック(樹脂)の種類と記号一覧表
- プラスチックリサイクルマークの数字の意味と種類
- 4大プラスチックとは
- バイオプラスチックの種類と原料|デメリットや課題はどこにあるか
- PFOAの使用と含有製品はいつから規制か|フライパンから繊維、撥水剤、泡消火剤まで
- プラスチックの人体への影響|プラスチックは安全なのか
- プラスチックの比重、密度の一覧表
- プラスチックの融点、耐熱温度の一覧表
- プラスチックの熱変形温度の一覧表
- プラスチックの難燃性|UL規格と酸素指数から見る難燃性の度合い
- プラスチックの引張強さの一覧表
- プラスチックの比熱の一覧表
- プラスチックの熱膨張係数、熱膨張率の一覧
- プラスチックの熱伝導率の一覧
- アロイ化とは
- 熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の違い
- フェノール樹脂(PF)
- ユリア樹脂(UF)
- メラミン樹脂(MF)
- 不飽和ポリエステル樹脂(UP)
- ポリウレタン(PU)
- ジアリルフタレート樹脂(PDAP)、アリル樹脂
- シリコン樹脂(SI)
- アルキド樹脂
- エポキシ樹脂(EP)
- フラン樹脂
- ナイロン6(PA6):ポリアミド(PA)の一種
- ナイロン66(PA66):ポリアミド(PA)の一種
- ナイロン12(PA12):ポリアミド(PA)の一種
- ポリアミドイミド
- ポリアセタール(POM)
- ポリカーボネート(PC)
- 変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE)
- ポリブチレンテレフタラート(PBT)
- GF強化ポリエチレンテレフタラート(GF-PET)
- 超高分子量ポリエチレン(UHPE)
- ポリフェニレンスルフィド(PPS)
- ポリイミド(PI)
- ポリエーテルイミド(PEI)
- ポリアリレート(PAR)
- ポリスルホン(PSF)
- ポリエーテルスルホン(PES)
- ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)
- 液晶ポリマー(LCP)
- ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、いわゆるフッ素樹脂
- ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、いわゆるフッ素樹脂
- ポリエチレン(PE)
- ポリプロピレン(PP)
- ポリスチレン(PS)
- アクリロニトリル−スチレン樹脂(AS樹脂)
- アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)
- ポリ塩化ビニル(PVC)
- メタクリル樹脂(PMMA)
- ポリエチレンテレフタラート(PET)
- ポリビニルアルコール(PVA)
- 酢酸セルロース(CA)
- プロピオン酸セルロース(CP)
- 硝酸セルロース(CN)
- ポリ乳酸(PLA)
- フラン-ホルムアルデヒド樹脂(FF)
- エチルセルロース(EC)
- フェノール-ホルムアルデヒド樹脂(フェノール樹脂)(PF)
- ポリスルホン、ポリスルフォン(PSU)
- ポリ塩化ビニリデン(PVDC)
- ポリフッ化ビニリデン(PVDF)
- アイオノマー樹脂
- FRP(繊維強化プラスチック)
- 炭素繊維メーカーの一覧
- プラスチックの黄ばみ除去について