フェノール樹脂(PF)の物性と用途、特性について

2013年9月3日更新

人類史上、もっとも古くから実用化されたプラスチック

フェノール樹脂(PF)は、1909年に工業化したといわれる最も古い人工プラスチックです。名称が示すようにフェノールとホルムアルデヒドを原料としており、当時はベークライトの名称で作られていました。今でもベークライトはよく使われており、特に砥石の基盤としてはクッション性があることからアルミなどの金属材料と組み合わせたり、単独で使われることもあります。

フェノール樹脂の比重は1.32〜1.45(木粉を充填したもの)で、熱すると硬くなっていく熱硬化性プラスチックに分類されます。充填材としての木粉は主に電気絶縁性を付与するためのもので、熱硬化性樹脂に添加されます。

バランスのよい物性を持つ難燃性の樹脂

常用できる耐熱温度は150℃、酸、アルカリ、熱、油に対しても良好な耐性を持っています(アルカリについては若干弱いとも言われます)。難燃性の樹脂で、電気絶縁性、耐酸性、耐熱性、耐水性に優れます。用途としては、電気機器、化粧板、絶縁材料、プリント配線基板、アイロンハンドル、配電盤ブレーカー、キッチン用品(鍋・やかんの取っ手・ツマミ)、合板接着剤、砥石などの結合材にも使われます。

一般にはベークライトのほか、石炭酸樹脂ともいわれます。ベークライトは開発者のベークランドからとった名前ですが、国内では登録商標となっています。もっとも、現在ではフェノール樹脂(PF)の代名詞としても使われているため、この名称が使われる際は、同社の製品そのものを指しているのか、フェノール樹脂全般を指しているのか確認する必要があります。

酸触媒を用いた縮合重合によってノボラックという熱可塑性の樹脂ができます。またアルカリ触媒を用いると、レゾールという樹脂が得られます。

フェノール樹脂(PF)成形材料の特性
フィラー(充填材)の種類 無充填 木粉と綿ブロック アスベスト グラスファイバー(GF)
物理的性質 密度(g・cm^-3) 1.21から1.30 1.34から1.45 1.45から2.00 1.69から1.95
融点(℃) 結晶性 熱硬化 熱硬化 熱硬化 熱硬化
非晶性 - - - -
透明度 透明から半透明 不透明 不透明 不透明
吸水率(%)3mm、24h 0.1から0.2 0.3から1.2 0.1から0.5 0.03から1.2
成形特性 成形温度範囲(℃) 圧縮、150から178 圧縮、161から211 圧縮、161から211 167から211
成形圧力範囲(kgf・cm^-2) 141から281 141から352 141から352 70から420
成形収縮率(%) 1から1.2 0.4から0.9 0.2から0.9 0.0から0.4
機械的性質 引張強さ(kgf・mm^-2) 4.9から5.6 3.5から6.3 3.1から5.2 3.5から12.7
最大伸び率(%) 1.0から1.5 0.4から0.8 0.18から0.50 0.2
圧縮強さ(破壊、降伏)(kgf・mm^-2) 7.0から21.9 15.5から25.3 14.1から24.6 11.2から49.2
曲げ強さ(破壊、降伏)(kgf・mm^-2) 8.4から10.5 4.9から9.8 14.9から9.8 7.0から42.2
引張弾性率(kgf・mm^-2) 527から703 562から1200 703から2110 1340から2320
圧縮弾性率(kgf・mm^-2) - - - -
曲げ弾性率(kgf・mm^-2) - 703から844 703から1550 1410から2320
アイゾット衝撃値(kgf・cm・cm^-1) 1.0から1.9 1.3から3.2 1.4から1.9 1.6から98.0
硬度(硬さ) ロックウェル M124から128 M100から115 M105から115 E54から101
ショア - - - -
熱的性質 熱伝導率(10^-4cal・s^-1cm^-2)(K・cm^-1)^-1 3.0から6.0 4.0から8.2 6.0から22.0 8.2から14.5
比熱(cal・K^-1g^-1) 0.38から0.42 0.32から0.40 0.28から0.32 0.24から0.27
線熱膨張率(10^-5K^-1) 2.5から6.0 3.0から4.5 0.8から4.0 0.8から2.0
熱変形温度(℃)
18.6kgf・cm^-2
4.6kgf・cm^-2
133から144 167から206 194から278 194から306
電気的性質 体積抵抗率(Ω・cm)(23℃、50%RH相対湿度) 1011から1012 109から1013 1010から1013 1012から1013
絶縁強さ(短時間法)(3.18mm)/kV・mm-1 11.8から15.7 10.2から15.7 7.8から14.1 4.7から15.7
比誘電率(εγ 60Hz 5.0から6.5 5.0から13.0 5.0から20.0 5.0から7.1
MHz 4.5から5.0 4.0から6.0 5.0から10.0 4.5から6.6
誘電正接(tanδ) 60Hz 0.06から0.10 0.05から0.3 0.05から0.20 0.04から0.05
MHz 0.015から0.03 0.03から0.07 0.35から0.80 0.01から0.02
化学的性質、耐薬品性 燃焼性、速度(mm・min-1 - 27から33 6.35から9.65 3.3から12.7
日光の影響 表面暗色化 暗色化 暗色化 暗色化
弱酸の影響 無し、もしくは微小変化
強酸の影響 酸化性酸に侵される。有機酸の影響は僅か。
弱アルカリの影響 微小変化 アルカリ度により微小〜相当程度
強アルカリの影響 分解 侵される
有機溶剤の影響 抵抗良
注型フェノール樹脂の特性
フィラー(充填材)の種類 無充填 アスベスト
物理的性質 密度(g・cm^-3) 1.23から1.32 1.70
融点(℃) 結晶性
非晶性 - -
透明度 不透明
吸水率(%)3mm、24h 0.2から0.4
成形特性 成形温度範囲(℃)
成形圧力範囲(kgf・cm^-2)
成形収縮率(%)
機械的性質 引張強さ(kgf・mm^-2) 3.5 2.1から4.2
最大伸び率(%) 1.5から2.0
圧縮強さ(破壊、降伏)(kgf・mm^-2) 8.4から10.5 7.3から8.7
曲げ強さ(破壊、降伏)(kgf・mm^-2) 7.7から12.0 3.5から5.6
引張弾性率(kgf・mm^-2) 281から492 1320
圧縮弾性率(kgf・mm^-2) - -
曲げ弾性率(kgf・mm^-2) - -
アイゾット衝撃値(kgf・cm・cm^-1) 1.3から2.1 -
硬度(硬さ) ロックウェル M92から120 R110
ショア - -
熱的性質 熱伝導率(10^-4cal・s^-1cm^-2)(K・cm^-1)^-1 3.5 8.4
比熱(cal・K^-1g^-1) 0.3から0.4 0.3
線熱膨張率(10^-5K^-1) 6.8 3.3
熱変形温度(℃)
18.6kgf・cm^-2
4.6kgf・cm^-2
88.9 167
電気的性質 体積抵抗率(Ω・cm)(23℃、50%RH相対湿度) 1012から1013 -
絶縁強さ(短時間法)(3.18mm)/kV・mm-1 9.8から15.7 3.9から9.8
比誘電率(εγ 60Hz 6.5から17.5 -
MHz 4.0から5.5 -
誘電正接(tanδ) 60Hz 0.10から0.15 -
MHz 0.04から0.05 -
化学的性質、耐薬品性 燃焼性、速度(mm・min-1 - -
日光の影響 退色 少し暗色化
弱酸の影響 無〜微小
強酸の影響 酸化剤に侵される
弱アルカリの影響 ある程度〜無
強アルカリの影響 抵抗大 分解される
有機溶剤の影響 ある程度〜無 抵抗性あり

スポンサーリンク

>このページ「フェノール樹脂(PF)の物性と用途、特性について」の先頭へ

加工材料の性質と特徴(目次)へ戻る
「プラスチックの種類と用途、物性について」へ戻る

フェノール樹脂(PF)の物性と用途、特性についての関連記事とリンク

プラスチック(樹脂)の種類と記号一覧表
プラスチックリサイクルマークの数字の意味と種類
4大プラスチックとは
バイオプラスチックの種類と原料|デメリットや課題はどこにあるか
PFOAの使用と含有製品はいつから規制か|フライパンから繊維、撥水剤、泡消火剤まで
プラスチックの人体への影響|プラスチックは安全なのか
プラスチックの比重、密度の一覧表
プラスチックの融点、耐熱温度の一覧表
プラスチックの熱変形温度の一覧表
プラスチックの難燃性|UL規格と酸素指数から見る難燃性の度合い
プラスチックの引張強さの一覧表
プラスチックの比熱の一覧表
プラスチックの熱膨張係数、熱膨張率の一覧
プラスチックの熱伝導率の一覧
アロイ化とは
熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の違い
フェノール樹脂(PF)
ユリア樹脂(UF)
メラミン樹脂(MF)
不飽和ポリエステル樹脂(UP)
ポリウレタン(PU)
ジアリルフタレート樹脂(PDAP)、アリル樹脂
シリコン樹脂(SI)
アルキド樹脂
エポキシ樹脂(EP)
フラン樹脂
ナイロン6(PA6):ポリアミド(PA)の一種
ナイロン66(PA66):ポリアミド(PA)の一種
ナイロン12(PA12):ポリアミド(PA)の一種
ポリアミドイミド
ポリアセタール(POM)
ポリカーボネート(PC)
変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE)
ポリブチレンテレフタラート(PBT)
GF強化ポリエチレンテレフタラート(GF-PET)
超高分子量ポリエチレン(UHPE)
ポリフェニレンスルフィド(PPS)
ポリイミド(PI)
ポリエーテルイミド(PEI)
ポリアリレート(PAR)
ポリスルホン(PSF)
ポリエーテルスルホン(PES)
ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)
液晶ポリマー(LCP)
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、いわゆるフッ素樹脂
ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、いわゆるフッ素樹脂
ポリエチレン(PE)
ポリプロピレン(PP)
ポリスチレン(PS)
アクリロニトリル−スチレン樹脂(AS樹脂)
アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)
ポリ塩化ビニル(PVC)
メタクリル樹脂(PMMA)
ポリエチレンテレフタラート(PET)
ポリビニルアルコール(PVA)
酢酸セルロース(CA)
プロピオン酸セルロース(CP)
硝酸セルロース(CN)
ポリ乳酸(PLA)
フラン-ホルムアルデヒド樹脂(FF)
エチルセルロース(EC)
フェノール-ホルムアルデヒド樹脂(フェノール樹脂)(PF)
ポリスルホン、ポリスルフォン(PSU)
ポリ塩化ビニリデン(PVDC)
ポリフッ化ビニリデン(PVDF)
アイオノマー樹脂
FRP(繊維強化プラスチック)
炭素繊維メーカーの一覧
プラスチックの黄ばみ除去について

砥石からはじまり、工業技術や工具、材料等の情報を掲載しています。製造、生産技術、設備技術、金型技術、試作、実験、製品開発、設計、環境管理、安全、品質管理、営業、貿易、購買調達、資材、生産管理、物流、経理など製造業に関わりのあるさまざまな仕事や調べものの一助になれば幸いです。

このサイトについて

研削・研磨に関わる情報から、被削材となる鉄鋼やセラミックス、樹脂に至るまで主として製造業における各分野の職種で必要とされる情報を集め、提供しています。「専門的でわかりにくい」といわれる砥石や工業の世界。わかりやすく役に立つ情報掲載を心がけています。砥石選びや研削研磨でお困りのときに役立てていただければ幸いですが、工業系の分野で「こんな情報がほしい」などのリクエストがありましたら検討致しますのでご連絡ください。toishi.info@管理人

ダイヤモンド砥石のリンク集

研磨や研削だけでなく、製造業やものづくりに広く関わりのあるリンクを集めています。工業分野で必要とされる加工技術や材料に関する知識、事業運営に必要な知識には驚くほど共通項があります。研削・切削液、研削盤、砥石メーカー各社のサイトから工業分野や消費財ごとのメーカーをリンクしてまとめています。

研磨、研削、砥石リンク集