ポリプロピレン(PP)の物性と用途、特性について

2021年5月7日更新

もっとも軽いプラスチック、ポリプロピレン

ポリプロピレンとは汎用プラスチックの一つであり、略してPPと記号表記され、組成としてはプロピレンを重合させた樹脂で、熱可塑性プラスチックの一つに分類されます。特徴として、常用の耐熱温度は100〜140℃で、汎用プラスチックの中では最も比重が小さく、0.9〜0.91となっています。

耐熱性が比較的良好で、機械的強度にも優れた素材です。また表面に艶があり、光沢にも優れた素材です。着色も可能です。生産量も多い材料で、ポリエチレンに次ぐ量が生産されていると言われています。このため、ポリエチレン(PE)とよく比較検討されます。簡単に言えば、軽くて安いという特徴を持ちます。60%近くは射出成形で使用されます。20%前後がフィルム、残りが繊維やフラットヤーン等として使われます。

PP(ポリプロピレン)の種類と物性表|重合触媒と組成の違い

ポリプロピレンには重合触媒の種類やコポリマーの組成によって多様なグレードがあります。他のポリマーとアロイ化したものや炭素繊維やガラス繊維等で強化したものもあります。チーグラ・ナッタ触媒をつかったものがアイソタクチックポリプロピレン、メタロセン触媒(カミンスキー触媒)によるものがシンジオタクチックポリプロピレンとなります。

  • アイソタクチックポリプロピレン(ホモポリマー、ランダムポリマー、ブロックポリマー)
  • シンジオタクチックポリプロピレン
  • アタクチックポリプロピレン
  • エラストマー
  • ポリマーアロイ
  • 複合化ポリプロピレン
  • 環状ポリオレフィン

アイソタクチックポリプロピレンを例に見ても、ホモポリマー、ランダムポリマー、ブロックポリマーと種類があり、これらで以下のような特徴の違いがあります。

ポリプロピレンの種類
種類 特徴 融点
ホモポリマー 融点は高い。耐熱性・耐熱水性に優れる。耐寒性はよくない。衝撃強度低い。 160〜165℃
ランダムポリマー 低融点に低剛性に特徴。透明性、表面光沢性に優れる。常温での耐衝撃性はよい。医療用や食品包装で透明性が求められる場合の候補。 130〜135℃
ブロックポリマー 低温衝撃強度に優れる。剛性と耐衝撃性のバランスが良い。透明性、表面光沢性はよくない。別名インパクトコポリマー。 160〜165℃

ポリプロピレンのグレードごとの違いについては参考までに下表を掲載します。一般グレードとGF(グラスファイバー、ガラス繊維)入りのグレード、ランダムコポリマー、ブロックコポリマーでそれぞれ改質しようとしている物性にかなり違いが出ているのが見て取れます。

ポリプロピレンの種類ごとの物性表
PPの種類/物性 一般グレード GF30%含有 ランダムコポリマー(エチレン7mol%) ブロックコポリマー(エラストマー部10から15%)
比重 0.90から0.91 1.13 0.89 0.90
吸水率(24hr)% 0.01> 0.05から0.06 - -
引張強さ(MPa) 35 93 25 25から29
引張伸び(%) >500 5 600から750 500から700
曲げ強さ(MPa) 43 108 25から29 29から35
曲げ弾性率(MPa) 1470 5390 690から780 980から1270
アイゾット衝撃強さ(ノッチ付き)kgf・cm/cm 2 10 2.5から8 5から10
ロックウェル硬さ(Mスケール) 104 112 79から80 84から90
荷重たわみ温度(18.6 kgf/cm2)℃ 118(4.6 kgf/cm2) 150 90から95(4.6 kgf/cm2) 115から120(4.6 kgf/cm2)
線膨張率(×10-5/℃) 11 3 - -

PPは機械的な強度に優れた樹脂で、耐熱温度も高め

接着や印刷には不向きですが、機械的性質(引っ張り強度、圧縮強度、衝撃強度)に優れており、表面硬度も高く、耐摩耗性もある素材です。耐熱温度が高いため、電子レンジ用の容器としても使われます。PPを使った容器は他の汎用樹脂よりも若干高価となります。

酸性やアルカリ性の溶液には耐性を持ちますが、酸化性酸には侵されます。結晶性であるため、有機溶剤については常温であれば耐性があります。耐薬品性については硝酸や鉱物油を除けば良好な部類です。

耐候性には難があり、日光に当たると白化していきます。

食品包装や容器にも多用され安全性のある材料とされます。

用途は、自動車部品、家電部品、包装フィルム、食品容器、キャップ、トレイ、コンテナ、パレット、衣装函、繊維、医療器具、日用品、ごみ容器、射出成型品全般等で、日常で目にしない日はないほどメジャーなプラスチック材料の一つです。

ポリプロピレンの弱点、欠点、デメリットとは

すべての素材はメリットや良い特徴のほか、他の材料と比べて使用検討や材料選択する上での欠点やデメリット、いわゆる弱点に相当する部分もあります。

成形収縮率が大きい

PPの場合、まず挙げられるのが成形後の収縮現象です。工業製品にとっては量産での寸法精度を毎回同じにできることは必須条件の一つですが、結晶性ポリマーであるがゆえ、成形したあとの収縮まで計算に入れて生産する必要があります。1.5%前後の収縮率があるとされます。

銅害にきわめて弱い

銅製品や銅のパーツと直に接触する場合、接触した状態で加熱されると含まれているブタジエンの影響で熱分解が促進されます。真鍮をはじめインサートとして銅合金とプラスチックを組み合わせる用途では特に注意を要します。ただ銅害防止剤を添加することでこのデメリットは緩和可能です。

耐候性に難

プラスチックは一般的に耐候性には難がありますが、ポリプロピレンは特に顕著な弱点となります。日光にあたると白化していくことは上述した通りです。安定剤や顔料の添加によって屋外で使用するのに支障がないグレードのものもありますが、耐候性が強いとはいえない素材です。

耐寒性に弱点

耐熱性には比較的強い性能を持つことと引き換えに、耐寒性については弱くなります。冒頭述べた通り、この辺りを改質したグレードはあります。

応力集中、ノッチ効果大

他のプラスチックと比較した場合ですが、応力集中が大きいため、あらぬ負荷がかかって製品が破損するリスクなどに見舞われることがあります。金型設計の際はノッチ効果が大きいことを計算に入れておく必要があります。

可燃性

酸素指数が他のプラスチックに比べても低い部類で、可燃性であり燃やすいプラとなりますので難燃性を求められる局面では使いづらい材料となります。

ポリプロピレン(PP)の物理的性質の一覧

下表にポリプロピレン(PP)の物理的性質、特性、化学的性質について強化材としてガラス繊維を添加したものと、非変性のものとを対比した数値を記載します。

ポリプロピレン(PP)の物性
フィラー(充填材)、種類 非変性 グラスファイバー(GF)充填40%
物理的性質 密度(g・cm^-3) 0.90から0.91 1.22から1.23
融点(℃) 結晶性 168 168
非晶性 - -
透明度 透明から不透明 不透明
吸水率(%)3mm、24h <0.01から0.03 0.01から0.05
成形特性 成形温度範囲(℃) 射出、222から306 射出、222から306
成形圧力範囲(kgf・cm^-2) 704から1410 703から1410
成形収縮率(%) 1.0から2.5 0.2から0.8
機械的性質 引張強さ(kgf・mm^-2) 3.0から3.8 4.2から10.2
最大伸び率(%) 200から700 2.0から3.6
圧縮強さ(破壊、降伏)(kgf・mm^-2) 3.8から5.6 3.8から4.9
曲げ強さ(破壊、降伏)(kgf・mm^-2) 4.2から5.6 4.9から7.7
引張弾性率(kgf・mm^-2) 112から158 316から633
圧縮弾性率(kgf・mm^-2) 105から211 -
曲げ弾性率(kgf・mm^-2) 120から176 267から598
アイゾット衝撃値(kgf・cm・cm^-1) 2.7から12.0 5.4から27.2
硬度(硬さ) ロックウェル R80から110 R110
ショア - -
熱的性質 熱伝導率(10^-4cal・s^-1cm^-2)(K・cm^-1)^-1 2.8
比熱(cal・K^-1g^-1) 0.46 -
線熱膨張率(10^-5K^-1) 5.8から10.2 2.9から5.2
熱変形温度(℃)
18.6kgf・cm^-2
4.6kgf・cm^-2
69から77 128から167
電気的性質 体積抵抗率(Ω・cm)(23℃、50%RH相対湿度) >1016
絶縁強さ(短時間法)(3.18mm)/kV・mm-1 >28
比誘電率(εγ 60Hz 2.2から2.6 2.37
MHz 2.2から2.6 2.38
誘電正接(tanδ) 60Hz <0.0005 0.0022
MHz <0.0005から0.0018 0.0035
化学的性質、耐薬品性 燃焼性、速度(mm・min-1 19.1から21.1 19.1から21.1
日光の影響 白化 白化
弱酸の影響 無し
強酸の影響 酸化性酸に侵される
弱アルカリの影響 無し
強アルカリの影響 無し
有機溶剤の影響 195から204℃以下で耐える 80℃以下で耐える

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