ポリフェニレンスルファイド(PPS)の物性と用途、特性について

2011年6月27日更新

スーパーエンプラの一つ

ポリフェニレンスルファイド(PPS)は、剛性の強さに特長のある熱可塑性のスーパーエンプラ(スーパーエンジニアリングプラスチック)で、高性能エンジニアリングプラスチックの一つとして開発されました。充填するフィラーの種類によって強度を変えることができます。ガラスを40%入れた場合で1.64の比重となります。

耐熱性が200℃を超え、耐クリープ性にも優れた樹脂

常用できる耐熱温度は220℃〜240℃前後とされます。耐寒性は−20℃程度まで耐性があります。優れた耐薬品性をもち、有機溶剤にも侵されません。流動性も高く成形性も容易です。絶縁材料としても優秀な材料で、温度や周波数が変わっても誘電率にはほとんど影響しません。

疲労特性、クリープ性に優れており、耐侯性も良好です。難燃剤を添加しなくとも、難燃性に優れた素材で、他に耐ヒートショック性もあります。

主な用途は、電装部品、電気・電子部品、自動車用ワイヤーハーネスの被覆材、吸気系モジュール部品、繊維、フィルム、耐薬品材料、しゅう動部材料、燃料系、油圧ポンプ部品、機械部品のギア、ピストンリング、羽などです。

ポリフェニレンスルファイド(PPS)の物性
フィラー(充填材)、種類 無充填 グラスファイバー(GF)40%充填
物理的性質 密度(g・cm^-3) 1.34 1.64
融点(℃) 結晶性 290 290
非晶性 - -
透明度 不透明 不透明
吸水率(%)3mm、24h 0.2 0.1
成形特性 成形温度範囲(℃) 射出:329から371 射出:325から343
成形圧力範囲(kgf・cm^-2) 351から1050 703から1410
成形収縮率(%) 1.0 0.2
機械的性質 引張強さ(kgf・mm^-2) 7.0 16.4
最大伸び率(%) 3 3
圧縮強さ(破壊、降伏)(kgf・mm^-2) - -
曲げ強さ(破壊、降伏)(kgf・mm^-2) 14.1 29.0
引張弾性率(kgf・mm^-2) 337 780
圧縮弾性率(kgf・mm^-2) - -
曲げ弾性率(kgf・mm^-2) 421 1195
アイゾット衝撃値(kgf・cm・cm^-1) 1.63 4.35
硬度(硬さ) ロックウェル R124 R123
ショア - -
熱的性質 熱伝導率(10^-4cal・s^-1cm^-2)(K・cm^-1)^-1 6.84 -
比熱(cal・K^-1g^-1) - -
線熱膨張率(10^-5K^-1) 5.5 4.0
熱変形温度(℃)
18.6kgf・cm^-2
4.6kgf・cm^-2
136 >218
電気的性質 体積抵抗率(Ω・cm)(23℃、50%RH相対湿度) 1016 1016
絶縁強さ(短時間法)(3.18mm)/kV・mm-1 23.4 17.7
比誘電率(εγ 60Hz 3.11 3.79
MHz - -
誘電正接(tanδ) 60Hz 0.0004 0.0037
MHz - -
化学的性質、耐薬品性 燃焼性、速度(mm・min-1 - -
日光の影響 - -
弱酸の影響 無し
強酸の影響 酸化性酸にゆっくり
弱アルカリの影響 無し
強アルカリの影響 無し
有機溶剤の影響 200℃以下で抵抗大

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