プラスチックの難燃剤の種類と一覧

2022年6月5日更新

プラスチックには可燃性のものと燃えにくいものがありますが、前者にも材料の段階から難燃剤を入れることで着火しにくくしたり、燃焼しにくい材料へ改質することができます。

プラスチック・樹脂は家電や電子機器、建材、内装材など熱などで燃えやすい環境に置かれているものや、いったん火がついてしまうと被害甚大となるものも多く、難燃性が求められることが多々あります。

プラスチックの難燃剤の種類と一覧|目次
  1. 難燃剤とは
  2. 難燃剤の表示記号
  3. 難燃剤の種類の一覧

難燃剤とは

難燃剤とは、火の伝播を著しく遅延させる物質と定義されています。これらは表面に塗るというのではなく、プラ材料となるペレットを溶かして成形するときに、難燃剤も投入するという方法がとられます。防炎性や自己消火性を助けるタイプ、他の難燃剤の効果を高めるタイプ等があります。

この難燃剤の多くはハロゲン系といわれる化合物ですが、他にも種類は多数あります。ハロゲンは非常に反応性が高いことで知られ、プラスチックが燃えたり、高温で分解したりすると、プラスチック中の水素と結びついて毒性、腐食性の高いハロゲン化水素ガス(塩化水素ガス、臭化水素ガス)を発生させるという問題もあり、ノンハロゲン化が進んでいます。

また難燃剤自体は発がん性や毒性の高いものも多く、環境や人体への影響からRoHS指令ではいくつかの難燃剤(PBB、PBDE)が使用禁止となっています。

難燃剤の表示記号

プラスチック製品の本体に下図のように、材質記号とともに使用している難燃剤を表示することができます。1%以上含まれているものだけを表示することになっています。

FRが英語の難燃剤表記であるFlame Retardantの頭文字からとったもので、この記号ついているものが難燃剤が入っているということになります。FRに続く括弧でくくられた数字が後述する難燃剤の種類ごとのコード番号になります。複数使用している場合は、下図のように+でつないで表記します。

プラスチック難燃剤の記号表示

難燃剤の種類の一覧

下表に難燃剤の種類を成分ごとに一覧にまとめました。コード番号は使用している難燃剤を表示させるために使われるもので、欠番(まだ割り当てのない番号)も含め10から99まであります。主として成分、化学組成によって分類されています。

有機系難燃剤(臭素化合物、リン化合物、塩素化合物)、無機系難燃剤(アンチモン化合物、金属水酸化物、窒素化合物、ほう素化合物)等の分類があります。

プラスチックの難燃剤の種類、成分の一覧
難燃剤のコード番号 難燃剤の成分 英語
10 脂肪族/脂環式塩素化化合物 aliphatic/alicyclic chlorinated compounds
11 脂肪族/脂環式塩素化化合物とアンチモン化合物の組み合わせ aliphatic/alicyclic chlorinated compounds in combination with antimony compounds
12 芳香族塩素化化合物 aromatic chlorinated compounds
13 芳香族塩素化化合物とアンチモン化合物の組み合わせ aromatic chlorinated compounds in combination with antimony compounds
14 脂肪族/脂環式臭素化化合物 aliphatic/alicyclic brominated compounds
15 脂肪族/脂環式臭素化化合物とアンチモン化合物の組み合わせ aliphatic/alicyclic brominated compounds in combination with antimony compounds
16 芳香族臭素化化合物(臭素化ジフェニルエーテルおよびビフェニルを除く) aromatic brominated compounds (excluding brominated diphenyl ether and biphenyls)
17 芳香族臭素化化合物(臭素化ジフェニルエーテルおよびビフェニルを除く)とアンチモン化合物の組み合わせ aromatic brominated compounds (excluding brominated diphenyl ether and biphenyls) in combination with antimony compounds
18 ポリブロモジフェニルエーテル(ポリ臭素化ジフェニルエーテル) polybrominated diphenyl ether
19 ポリブロモジフェニルエーテル(ポリ臭素化ジフェニルエーテル)とアンチモン化合物の組み合わせ polybrominated diphenyl ether in combination with antimony compounds
20 ポリブロモジフェニル(ポリ臭素化ジフェニル) polybrominated diphenyl
21 ポリブロモジフェニル(ポリ臭素化ジフェニル)とアンチモン化合物の組み合わせ polybrominated dephenyl in combination with antimony compounds
22 脂肪族/脂環式塩素化および臭素化化合物 ariphatic/alicyclic chlorinated and brominated compounds
23 該当なし not allocated
24 該当なし not allocated
25 脂肪族ふっ素化化合物 aliphatic fluorinated compounds
26 該当なし not allocated
27 該当なし not allocated
28 該当なし not allocated
29 該当なし not allocated
30 窒素化合物(メラミン、メラミンシアヌレート、尿素に限定) nitrogen compounds (confined to melamine, melamine cyanurate, urea)
31 該当なし not allocated
32 該当なし not allocated
33 該当なし not allocated
34 該当なし not allocated
35 該当なし not allocated
36 該当なし not allocated
37 該当なし not allocated
38 該当なし not allocated
39 該当なし not allocated
40 ハロゲンを含まない有機りん化合物 harogen-free organic phosphorus compounds
41 塩素化有機りん化合物 chlorinated organic phosphorus compounds
42 臭素化有機りん化合物 brominated organic phosphorus compounds
43 該当なし not allocated
44 該当なし not allocated
45 該当なし not allocated
46 該当なし not allocated
47 該当なし not allocated
48 該当なし not allocated
49 該当なし not allocated
50 オルトりん酸アンモニウム ammonium orthophosphates
51 ポリりん酸アンモニウム ammonium polyphosphates
52 赤りん red phosphorus
53 該当なし not allocated
54 該当なし not allocated
55 該当なし not allocated
56 該当なし not allocated
57 該当なし not allocated
58 該当なし not allocated
59 該当なし not allocated
60 水酸化アルミニウム aluminum hydroxide
61 水酸化マグネシウム magnesium hydroxide
62 酸化アンチモン antimony(III) oxide
63 アルカリ金属アンチモネート alkali-metal antimonate
64 炭酸マグネシウム/炭酸カルシウム水和物 magnesium/calcium carbonate hydrate
65 該当なし not allocated
66 該当なし not allocated
67 該当なし not allocated
68 該当なし not allocated
69 該当なし not allocated
70 無機ほう素化合物 inorganic boron compound
71 有機ほう素化合物 organic boron compound
72 ほう酸亜鉛 zinc borate
73 有機亜鉛化合物 inrorganic zinc compounds
74 該当なし not allocated
75 無機シリカ化合物 inorganic silica compounds
76 有機シリカ化合物 organic silica compounds
77 該当なし not allocated
78 該当なし not allocated
79 該当なし not allocated
80 黒鉛、石墨 graphite
81 該当なし not allocated
82 該当なし not allocated
83 該当なし not allocated
84 該当なし not allocated
85 該当なし not allocated
86 該当なし not allocated
87 該当なし not allocated
88 該当なし not allocated
89 該当なし not allocated
90 該当なし not allocated
91 該当なし not allocated
92 該当なし not allocated
93 該当なし not allocated
94 該当なし not allocated
95 該当なし not allocated
96 該当なし not allocated
97 該当なし not allocated
98 該当なし not allocated
99 該当なし not allocated

スポンサーリンク

>このページ「プラスチックの難燃剤の種類と一覧」の先頭へ

加工材料の性質と特徴(目次)へ戻る
「プラスチックの種類と用途、物性について」へ戻る

プラスチックの難燃剤の種類と一覧の関連記事とリンク

プラスチック(樹脂)の種類と記号一覧表
プラスチックリサイクルマークの数字の意味と種類
4大プラスチックとは
バイオプラスチックの種類と原料|デメリットや課題はどこにあるか
PFOAの使用と含有製品はいつから規制か|フライパンから繊維、撥水剤、泡消火剤まで
プラスチックの人体への影響|プラスチックは安全なのか
プラスチックの比重、密度の一覧表
プラスチックの融点、耐熱温度の一覧表
プラスチックの熱変形温度の一覧表
プラスチックの難燃性|UL規格と酸素指数から見る難燃性の度合い
プラスチックの引張強さの一覧表
プラスチックの比熱の一覧表
プラスチックの熱膨張係数、熱膨張率の一覧
プラスチックの熱伝導率の一覧
アロイ化とは
熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の違い
フェノール樹脂(PF)
ユリア樹脂(UF)
メラミン樹脂(MF)
不飽和ポリエステル樹脂(UP)
ポリウレタン(PU)
ジアリルフタレート樹脂(PDAP)、アリル樹脂
シリコン樹脂(SI)
アルキド樹脂
エポキシ樹脂(EP)
フラン樹脂
ナイロン6(PA6):ポリアミド(PA)の一種
ナイロン66(PA66):ポリアミド(PA)の一種
ナイロン12(PA12):ポリアミド(PA)の一種
ポリアミドイミド
ポリアセタール(POM)
ポリカーボネート(PC)
変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE)
ポリブチレンテレフタラート(PBT)
GF強化ポリエチレンテレフタラート(GF-PET)
超高分子量ポリエチレン(UHPE)
ポリフェニレンスルフィド(PPS)
ポリイミド(PI)
ポリエーテルイミド(PEI)
ポリアリレート(PAR)
ポリスルホン(PSF)
ポリエーテルスルホン(PES)
ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)
液晶ポリマー(LCP)
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、いわゆるフッ素樹脂
ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、いわゆるフッ素樹脂
ポリエチレン(PE)
ポリプロピレン(PP)
ポリスチレン(PS)
アクリロニトリル−スチレン樹脂(AS樹脂)
アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)
ポリ塩化ビニル(PVC)
メタクリル樹脂(PMMA)
ポリエチレンテレフタラート(PET)
ポリビニルアルコール(PVA)
酢酸セルロース(CA)
プロピオン酸セルロース(CP)
硝酸セルロース(CN)
ポリ乳酸(PLA)
フラン-ホルムアルデヒド樹脂(FF)
エチルセルロース(EC)
フェノール-ホルムアルデヒド樹脂(フェノール樹脂)(PF)
ポリスルホン、ポリスルフォン(PSU)
ポリ塩化ビニリデン(PVDC)
ポリフッ化ビニリデン(PVDF)
アイオノマー樹脂
FRP(繊維強化プラスチック)
炭素繊維メーカーの一覧
プラスチックの黄ばみ除去について

このサイトについて

当サイトの記事はすべて工業製品のメーカーの実務経験者が執筆しています。

砥石メーカーの製品や技術を紹介するサイトとしてはじまりましたが、加工技術・工具・研削・研磨に関わる情報から派生し、ユーザーの問い合わせに応じて鉄鋼、非鉄、貴金属、セラミックス、プラスチック、ゴム、繊維、木材、石材等製造に使用する材料・ワークの基礎知識についても掲載するようになりました。その後、技術情報に限らず、製造業で各分野の職種・仕事を進めるうえで役立つノウハウも提供しています。

製造、生産技術、設備技術、金型技術、試作、実験、製品開発、設計、環境管理、安全、品質管理、営業、貿易、経理、購買調達、資材、生産管理、在庫管理、物流など製造業に関わりのあるさまざまな仕事や調べものの一助になれば幸いです。

工業情報リンク集

工業分野のメーカーや商社を中心に、技術、規格、ものづくりに広く関わりのあるリンクを集めています。工業製品の生産に必要とされる加工技術や材料に関する知識、マーケティングから製品企画、開発、販売戦略、輸出入、物流、コスト低減、原価管理等、事業運営に必要な知識には共通項があります。

研磨、研削、砥石リンク集