ビニールによって臭いを通す、通さないの違いはあるか
同じように見えるビニールでも気になる臭いを通すものと通さないものがありますが、この違いは何によるのでしょうか。また、そもそも臭いは遮断できるものなのでしょうか。
匂いや臭いの正体は「粒子」(ガス状とも言われます)であり、この粒子は分子量が300以下で空気中を漂うことができる低分子の有機化合物と言われています。これを通さない物質であれば「におい」を遮断することはできます。
食品のパッケージ、包装材料はこの辺り非常に配慮されており、そもそも酸素や窒素をはじめとする空気を遮断したり、水蒸気・水分を遮断するガスバリア性能に優れたものが用途によっては求められますので、これらをあわせて遮断する機密性が高く、廉価なコストのものが必要となります。
包装材料に使われている所謂「ビニール」は、本来はポリ塩化ビニル(PVC)の意味でしたが、これが転じて、今日では慣用的にプラスチックフィルム全般のことを表わしていることが多いです。このフィルムには様々な種類のものがありますが、気体や水蒸気をはじめとする「粒子」をどの程度遮断できるかを示す性能である「ガスバリア性能」の高いものと低いものがあります。
この遮断能力が変わるのは、平たく言えば、フィルムの表面には製造過程でどうしても目に見えない微細な穴ができてしまい、その穴の大きさや数の違いの影響を大きく受けるためです。穴が小さく、数が少なければそれだけ遮断能力に優れるフィルムということになります。
この穴は非常に小さく、水も通しません。ただし、それよりも小さいなもの、水蒸気や気体となると、その穴からじわじわと内部に浸透していき、やがては透過してしまいます。
ビニールにいれて密閉されているはずのモノから臭いが漏れてくるのは、これがひとつの原因です。
においの粒子の大きさというのは、1 nmから20 nmと言われていますが、ビニールの製造過程でできる穴は1 nm以下と言われています。
例えば、タバコの粒子の直径は、1 nmから10 nmですが、刺激臭で知られるアンモニアの分子となると直径はわずか0.26 nmほどです。
ガスバリア性能の低いビニールは、気体を通すとともに、こうしたガス状になった「におい」やその粒子を透過させてしまいます。したがって、においを通しにくいビニールということであれば、ガスバリア性能の高いビニールを探すことになります。
下表がプラスチックフィルム、いわゆるビニールや包装材ごとのガスバリア性能となります。実用化されているガスバリア性能の高いものはほとんどが多層構造になっています。
例えばスナック菓子、ポテトチップスなどの包装はしけらないよう、かなりガスバリア性能の高い包装がされています。内側にアルミ蒸着を用いており、3層や5層の構造のフィルムが使われているものもあります。このため、においを遮断する性能に関しても高いということが言えます。
下表で酸素透過性の低いものほど遮断能力が高くなります。一般的なナイロンが値750となっているのに対し、食品用ラップフィルム、サランラップで知られるポリ塩化ビニリデンはわずか12となります。表の最下部にあるポチエチレンやOPPの積層フィルムだとこの値が10000にもなります。
包装フィルム、包装材料 | 酸素透過性 (ml/m2・d・MPa) |
水蒸気透過性 (g/m2・d) |
|
---|---|---|---|
金属箔 | アルミニウム箔(AL箔) | 0 | 0(40℃、90%RH) |
スチール箔 | 0 | 0(40℃、90%RH) | |
ガラス瓶 | 0 | 0(40℃、90%RH) | |
金属缶 | 0 | 0(40℃、90%RH) | |
アルミニウム蒸着(PETベース) | 8から10 | 0.8から1.4(40℃、90%RH) | |
透明蒸着フィルム | アルミナ蒸着(PETベース) | 15 | 1.5(40℃、90%RH) |
シリカ蒸着(PETベース) | 6から12 | 0.8から1.0(40℃、90%RH) | |
ナイロン(Ny)、ポリアミド(PA) | 750(25℃、90%RH) | 25(40℃、90%RH) | |
ポリビニルアルコール(PVA) | 3から60(0から92%RH) | 134(40℃、90%RH) | |
エチレンビニルアルコール共重合(EVOH) | 3から80(20℃、0から85%RH) | 30(40℃、90%RH) | |
ポリ塩化ビニリデン(PVDC) | 12(25℃) | 2.1(40℃) | |
ナイロンMXD6 | 90(20℃、90%RH) | 42(40℃、90%RH) | |
積層フィルム | PT#300/PE(40μm) | 50から100 | 15.0 |
Kセロハン(23μm,Kコート3μm)/PE(40μm) | 60 | 8.0 | |
Kセロハン(32μm,Kコート12μm)/PE(40μm) | 15 | 2.5 | |
OPP(20μm)/CPP(30μm) | 10000 | 6.0 | |
K-OPP(23μm,Kコート3μm)/PE(40μm) | 120 | 5.0 | |
K-PVA(15μm, Kコート3μm)/PE(70μm) | 20 | 5.0 | |
K-PET(15μm, Kコート3μm)/CPP(50μm) | 120 | 8.0 | |
K-PET(23μm,Kコート12μm)/EVA(60μm) | 15 | 2.0 | |
ONy(15μm)/PE(40μm) | 600 | 15.0 | |
K-ONy(18μm, Kコート3μm)/EVA(50μm) | 120 | 13.0 | |
ONy(15μm)/EVOH(15μm)/EVA(50μm) | 20 | 14.0 | |
OPP(20μm)/EVOH(15μm)/PE(40μm) | 20 | 5.0 | |
PET(12μm)/ALVM-CPP(30μm) | 100 | 1.0 | |
ALVM-PET(12μm)/PE(40μm) | 20 | 1.0 | |
PET(12μm)/ALVM-PE(30μm) | 100 | 1.0 | |
PET(12μm)/AL箔(9μm)/CPP(70μm) | 0 | 0 | |
PET(12μm)/PE(15μm)/CPP(25μm) | 1000 | 10.0 | |
OPP(20μm)/延伸HDPE/PE(30μm) | 10000 | 1.0 |
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