デカップリング在庫の意味とは

2022年1月5日更新

デカップリング在庫とは、製造時に発生するトラブルや不良発生に備えて持っておく工程内の安全在庫(バッファー在庫)の一種を意味しています。英語ではdecoupling inventoryやdecoupling stockとなります。在庫管理の実務では使う会社のほうが少ない用語かもしれません。工程内在庫のほうが意味が通じやすいと思います。

完成品についても使われることがありますが、デカップリング在庫の対象となるのは多くの場合、原材料や仕掛品など各製造工程で保有している在庫で、設備稼働率のほか、部材の在庫がなくなりかけてから発注して補充されるまでのリードタイムも加味されて持っていることがあります。材料発注から生産、出荷までのリードタイムが長ければ長いほど、各工程で持っている在庫は多くなりますが、それらの在庫に加算されている「安全在庫」がこのデカップリング在庫です。工程が多数ある場合も、必然的に仕掛在庫も増えてきますが、そこに安全在庫が余計にのるわけですから、さらに在庫が増加します。

工場を持つ製造業の在庫低減においては、完成品としての在庫だけでなく、こうした原料や材料から途中の仕掛品や半製品に至るまでの在庫がかなりの金額となる為、これらの適正化や削減が非常に重要な意味を持ってきます。棚卸を行うと、完成品以外に、その仕掛品も多数保有していることがあり、製品の型番や品番だけで在庫金額の多寡を判断していると、こうした仕掛品は完成品ではないので異なる品番で区別されており盲点となることがあります。

デカップリング在庫は設備の停止に対して工場側が生産停止を防ぐために持っておくべき在庫と言い換えることもできるため、これらの削減には設備稼働率アップやトラブル低減が必要なことは言うまでもありませんが、それ以外に下記のような観点からも削減検討が可能です。

  • どうしても持つ必要がある場合、より金額の安い前工程(原料、材料)で在庫を持つようにする
  • 販売情報やその予測情報の精度や収集頻度アップ
  • 生産に使用する部材の発注点、発注間隔、発注ロットまたは発注頻度の見直し
  • 荷姿や1箱当たりに入っている部品や製品の個数、輸送単位の見直し
  • 製造リードタイム自体の短縮
  • 部材の移動にかかる動線を改善し、工場内での給材にかかるリードタイムを短くする
  • 在庫や販売情報などの停滞がどこで発生しているかを調べ、流れを改善する

製造業固有の在庫問題ではありますが、この在庫のコントロール次第で、全体の在庫金額に大きく影響し、キャッシュフロー改善や在庫コストの低減、棚卸資産の圧縮などに大きく寄与することがあります。

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