棚卸資産と在庫の違い

2021年12月10日更新

在庫のことを棚卸資産ともいうため、両者には本質的な違いはありません。ただし棚卸資産は流動資産のひとつで、貸借対照表の勘定科目であるため、同じ製品の在庫であってもそこに入れてよいものかどうかの基準があります。難しいのはデモや展示用の製品を棚卸資産に計上するのかという問題や、不動産業界における棚卸資産の性質です。

デモや展示用のものは継続してデモ用のみとして使われ続ける場合は、広告宣伝用の減価償却資産となり、デモ用のものが引き取られて本来のものと同じように使われることを前提にしているような場合は棚卸資産ということになります。

不動産業界の場合、棚卸資産の1件当たりの金額が大きくなる傾向がありますが、下表のような基準で計上するか否かが決められています。賃貸や自社オフィス、倉庫などいわゆる事業用のものであれば固定資産で、販売用として持っている不動産は製品在庫と同じ意味をもつため、棚卸資産ということになります。

不動産の棚卸資産
不動産の種類 勘定科目の例
事業用不動産 固定資産
販売用不動産 棚卸資産
投資不動産 投資その他の資産
 

棚卸資産の定義

法人税法の第二条の定義として、「商品、製品、半製品、仕掛品、原材料その他の資産で棚卸しをすべきものとして政令で定めるもの(有価証券及び第六十一条第一項(短期売買商品等の譲渡損益及び時価評価損益)に規定する短期売買商品等を除く。)をいう」と記載されています。

また、法人税法施行令第十条には以下の通り規定されています。

法第二条第二十号(棚卸資産の意義)に規定する政令で定める資産は、次に掲げる資産とする。

  • 一 商品又は製品(副産物及び作業くずを含む。)
  • 二 半製品
  • 三 仕掛品(半成工事を含む。)
  • 四 主要原材料
  • 五 補助原材料
  • 六 消耗品で貯蔵中のもの
  • 七 前各号に掲げる資産に準ずるもの

広辞苑では「企業会計上、通常の営業循環過程において販売または費消される資産で、棚卸しによって物量的に把握できるもの。商品・製品・仕掛品・原材料・消耗品など。在庫品」と定義されています。

棚卸資産とは、基本的に販売のために保有する製品やその原材料ですが、貯蔵品のような例外的な扱いを受けるものもあります。

対象となるものを列挙すると、商品、製品、半製品、仕掛品、主要原材料、補助原材料、副産物、仕損じ品、作業くず、修理用資材(取替法をを採用する法人の取替資産を含まない。)、包装荷造用資材、消耗品(油、釘、塗料、帳票、文房具等)で貯蔵中のものということになります

棚卸資産の主要な中身は、次のものです。ただし、会社によってはこの中身によって名称を使い分けるケースもあります。製品在庫、仕掛在庫、半製品在庫といった言い方で区分することで帳簿や管理に活用されます。また在庫管理の運用上は、貯蔵品を在庫と考えない会社もあります。

  • 製品、商品
  • 半製品(はんせいひん)
  • 仕掛品(しかかりひん)
  • 原材料(げんざいりょう)
  • 貯蔵品(ちょぞうひん)

以下、それぞれの意味を簡単にまとめると次のようになります。

製品、商品
英語ではFinished goods and merchandiseと表記されます。略してFG。どちらも販売を目的として保有されるものを計上する科目である点は共通します。製品とは、自社で製造や加工して販売するものをいいます。商品とは、購入して販売するものをいいます。
半製品
英語ではSemi-finished goodsと言います。略してSFM。完成する前の製造途中の製品のことをいいます。後述の仕掛品も製造途中のものであるため、一体何が違うのかといえば、こちらはそのままでも販売可能なものがこの半製品に分類されます。
仕掛品
英語ではWork in progressと表記されます。略してWIP。製品の生産のために既に加工中の物品を整理するための科目です。設備会社では未完了の役務も含みます。また会社によっては工場から倉庫へ輸送中のものを仕掛品として計上することもあります。
原材料
英語ではRaw materialsとなります。略してRM。生産過程において消費される素材や、生産過程において消費される組付部品を計上する科目となります。
貯蔵品
英語ではSuppliesと表記されます。業務上補助的に使用するものです。使用する部署が常備するモノであることが多く、生産補助材料、油、修繕予備品等の物品の在庫を計上するために使われる特別な名称です。文房具、インクトナー、段ボールなどの荷材、封筒、パンフ、切手、収入印紙、各種チケットなども該当します。
使いきれなかった消耗品まで購入した年度にすべて費用にしてしまうと、利益が出そうな年にまとめて買い込んで利益を圧縮しようというようなことができてしまうので、そうした場合、それらを棚卸資産として計上する決まりがあります。
また未使用の固定資産ですぐに販売したり捨てたりせずに倉庫で保管する際もこの貯蔵品として棚卸資産になります。こうしたものは特に固定資産の除却と呼ばれます。

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