製品と商品の違い

2021年12月3日更新

製品は自社で加工や製造したもの、商品は単に仕入れて加工しないものという違いがありますが、どちらも販売目的で保有する自社から他社へ販売可能な物品の意味では本質的な違いはありません。客先へ販売できるということは、どちらも自社の取り扱い品としては完成品ということになります。詳しくみると、会計上は下表のように使い分けられています。この用語の違いは在庫としておいてある資産が製品なのか、商品なのか分けて計上する場合に使い分けが必要となるものです。

製品と商品の違いを比較
製品 商品
自社で製造または加工して販売するものをいう。つまり自社で何らかの生産行為や加工等を行って付加価値をつけて販売するもの。 購入して販売するものをいう。つまり自社で手を加えず、転売するもの。
製品と商品の違い

製品と商品の違いの事例

販売可能な物品、つまり自社内における完成品という点で製品と商品には違いがありませんが、上表の通り製造・加工が入っているものが製品ということになると、自社での製造や加工というのは何を意味しているのかという基準が必要になります。

製品と商品の区分けに悩むのは、製造機能や加工機能を持つ企業、つまり製造業やメーカーに固有の問題とも言えます。昨今は製造業によっては自社で製造している品目よりも、社外から仕入れている品目のほうが多いケースもあります。また、自社での加工をどのように考えるかという問題もあります。これは加工のレベルと、下請先に製造委託している場合をどのように解釈するかという問題です。

何をすると加工になるか

加工のレベルという観点では、例えば、別の会社から購入し検査を実施してラベルを貼り付け梱包を行うという行為は、製造・加工になるのかという点です。一般的にこれらは加工にはなりません。加工や生産の定義を法令上詳しく規定しているものとしては、原産国の定義(原産地認定基準)が分かりやすいですが、会計上はここまでシビアなものが使われているわけではないので、物品そのものに手を加えているかどうかというのがひとつのポイントになります。

蛇足ですが、原産国として認められるためには、「実質的変更を加える製造・加工」を行っていることが条件となり、これは例え切断などの加工を行っていても、関税分類番号(HSコード)の上4桁が加工によって変わる必要があると定義されています。関税分類番号は、類似の物品を同じ番号で分類した体系を持っており、桁数が上になるほど大きなくくりになりますので、この番号が変わることは中身がかなり変わるということと同義です。これは品目によってはかなりの加工を行わないと達成されないことがありますが、ここでいう「製品」に適合させるのにこうした基準はありませんので、ラベル貼り付け、梱包や検品は加工には相当しませんが、自社で加工をした時点で製品ということになります。

したがって、社外から仕入れてきたものを仕上げ加工だけしても、それは製品ということになります。ただし、ラベルを張り付ける行為が付加価値を生む加工だと主張するメーカーの場合は、そうしたものも製品として分類されることになります。あるいは単に自社の加工を行う人員の労務費が発生している場合はすべて加工に該当するので製品という分類にするケースもあります。法令上の縛りがあるわけでないので、各社で明確な定義があればそれに沿って運用するということになります。

下請先に製造委託しているものは商品か

昨今の製造業では規模が大きくなるほどに、自社生産だけでは採算があわないため、外注先や下請先を活用して生産したものを自社ブランドとして販売することはごく一般的な営業手法の一つです。というのも、自社工場は製造レベルや品質レベルは一級であっても、かかるコストも最も高くなりますので高付加価値品やノウハウ流出するとまずいものだけを自社で製造し、それ以外のものは下請先にすべて製造を委託しているというケースもあります。

こうした事例では、下請先が作り自社が販売するものを「製品」とするか「商品」とするかは各社の考え方の違いが出てきます。製造委託ということは、設計は当然自社で行い、図面を委託先へ提供しています。また、製法も指定しており、使用する原材料も指定し場合によっては原材料は自社から支給します。つまり、作り手は指示通りの方法と材料で賃加工のみを行う、ということになります。この場合、実際の加工作業は委託先で行っていますが、製造者という意味では、図面や材料、製法を提供する親事業者ということになり、こちらが「みなし生産者」となります。この理屈で、下請先に製造委託したものはすべて製品として分類する方法がある一方、純粋に、自社の製造にかかわる直接労務費(製造人員)がかかっているか否かだけで判断するという場合は、製造委託品はすべて商品ということになります。

在庫管理する上では区別が必要か

通常、在庫管理の上では製品と商品という区分けではなく、実際の品番であったり型番であったり品名であったりといった物品そのものを特定する方法で区分けされていることがほとんどかと思います。ただ上記の製品と商品を分ける基準にもとづき物品を別々に管理しているケースもあります。

製品と商品ではリードタイムや発注間隔も異なると思いますので、製品の安全在庫として固有の基準を設けるというような運用は可能です。製品の場合は仕入れたものをさらに自社で加工を行いますのでそのリードタイムや段取りも日数として考慮する必要があります。商品の場合は、単に仕入れたものがいつ納入されるかという点のみ押さえておくことになります。仕事の中身自体が変わってくるということになります。

また実際の安全在庫の設定や在庫の補充発注の実務では、製造元が内作か外作かという違いはかなり影響してきます。「うちの工場ならやってくれるのに」(あるいは逆のケースも)という場合、補充発注に対する工場側の臨機応変さによって持つべき在庫数も変わってくる可能性があるためです。

なお、製品になる前のものは仕掛品、さらにその前には原材料という状態になります。

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