Nb2O5(五酸化ニオブ)の特性
Nb2O5(五酸化ニオブ)は近紫外よりの可視光から赤外までを透過波長に持ち、応力の弱い物質であることが知られています。代表的な高屈折率材料であるチタニア(TiO2)では吸収が発生してしまう400nmにかかる光学設計の際に用いられることが多く、可視光域では、TiO2のほか、Ta2O5等の高屈折率材料との比較検討対象となります。
可視光域での他の高屈折率材料と比べ、Nb2O5はTiO2に次ぐ高屈折率であり、価格帯も大きくは変わらないことから、光学特性のシフトが問題となる光学部品に使われる材料です。イオンアシスト成膜ではTa2O5に比べて安定性は劣るものの、TiO2よりも膜の吸収、散乱、分光特性のシフトなどで優位性を示すことから、適用が検討される材料の一つです。
イオンアシスト蒸着だけでなく、スパッタリングによる成膜でもよく使われる材料で、反応性のスパッタを用いる場合は、Nb2O5膜の成膜にNb金属で作られたスパッタリングターゲットを使用します。
屈折率 | 2.33 |
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使用波長域 | 0.32-8μ ※3 |
蒸発方法 | EB(電子ビーム) |
蒸発源材料 | タングステン |
蒸発タイプ | - |
膜質 | 非晶質、結晶質(成膜手法、成膜条件により異なる) |
応力 | 弱い引っ張り(IAD:イオンアシスト蒸着により逆転する) |
主な用途 | 多層膜 |
理論密度 | 4.47g/cm3 |
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融点 | 1520℃ |
沸点 | - |
性質 | 水溶性:不溶 耐薬品性(酸、アルカリ)、フッ化水素酸、アルカリ:可溶 ※1 |
結晶構造 | Nb2O5(H)単斜:高温相の構造、多数の多形が存在する ※2 |
抵抗率ρ/10^-8Ωm | - |
誘電率、比誘電率εγ | - |
熱膨張係数 | - |
熱伝導率(cal/cm/sec/℃) | - |
比熱(cal/℃/mole) | - |
外観 | 白色もしくは灰色 |
CAS-NO | 1313-96-8 |
輸送情報 | 輸出貿易管理令(リスト規制非該当) |
参照文献
- ※1:[日本化学会編,“化学便覧 基礎編 改訂5版”,丸善(2005),p.T-269]
- ※2:[日本化学会編,“化学便覧 基礎編 改訂5版”,丸善(2005),p.U-838]
- ※3:光学薄膜と成膜技術 李正中 署 株式会社アルバック訳 アグネ技術センター2005年8月30日初版第三刷
専門誌等で発表されているNb2O5の薄膜に関する研究論文
掲載誌 | Thin Solid Films, 175 (1989) 207-212 |
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タイトル | "PROPERTIES OF ION-PLATED Nb2O5 FILMS" |
著者 | J. EDLINGER, J. RAMM AND H. K. PULKER |
概要 | イオンプレーティング法によるNb2O5の単層膜について、応力、光学特性、膜成分、表面形態を調査した研究論文 |
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