TiO(一酸化チタン)の特性
TiOはTiO2膜をつくる際の出発材料の一つで、成膜手法や条件によってはTiO2膜を得るのに最も適している材料という意見もあります。
物質としてのTiO2はかなり安定しているため、蒸着のプロセスにおいて、チャンバー内でこの物質を分子に分解するのに相当のエネルギーが必要となります。さらに、解離によってチャンバーの酸素分圧が容易に変わるため、真空度についても注意する必要があります。TiOやTi3O5を出発材料として用いる場合、成膜装置内の真空度は比較的安定していますが、TiOを使う場合、TiO2膜にするために高めの酸素分圧が必要となります。
実用上、可視光域で最も高い屈折率を持つTiO2は、最も有用な材料の一つであり、このため、TiO2膜をつくるための出発材料を何にするかという点については多くの研究が行われてきています。
屈折率 | 2.3 〜 2.55(550 nm近辺) |
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使用波長域 | 0.4 〜 3μm |
蒸発方法 | EB(電子ビーム) |
蒸発源材料 | C,Ta,W |
蒸発タイプ | - |
膜質 | 硬く耐久性良好、多孔質 |
応力 | 引っ張り |
主な用途 | 保護膜 |
理論密度 | 4.93g/cm3 |
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融点 | 1750℃ |
沸点 | 3000℃ |
性質 | 水溶性:- 耐薬品性(酸、アルカリ):希硫酸・希塩酸に可溶 |
結晶構造 | 立方晶系、NaCl型 単斜晶系(変態) |
抵抗率ρ/10^-8Ωm | - |
誘電率、比誘電率εγ | - |
熱膨張係数 | - |
熱伝導率(cal/cm/sec/℃) | - |
比熱(cal/℃/mole) | - |
外観 | 肌色、金色 |
CAS-NO | 12137-20-1 |
輸送情報 | 輸出貿易管理令(リスト規制非該当) |
参照文献
- ※1:[日本化学会編,“化学便覧 基礎編 改訂5版”,丸善(2005),p.T-342]
- ※2:[日本化学会編,“化学便覧 基礎編 改訂5版”,丸善(2005),p.U-838]
専門誌等で発表されているTiOの薄膜に関する研究論文
TiOはTiO2膜をつくるために使われることがほとんどですが、下記の文献はTiO膜についての研究になります。
掲載誌 | Surface & Coatings Technology Volumes 151-152, 2002, pp.272-275 |
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タイトル | "Electrical and optical properties of TiOx thin films deposited by reactive magnetron sputterting" |
著者 | O.Banakh, P.E.Schmid, R.Sanjines, F.Levy |
概要 | TiOx(0.75<x<1.45)について調べた論文 |
掲載誌 | Thin Solid Films 464-465, pp.76-79 (2004) |
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タイトル | "Electronic structure and reactivility of the TiO thin film formed on a TiC(100) surface" |
著者 | Y.Shirotosi, K.Sawada, K.Ozawa, K.Edamoto, M.Nakatake |
概要 |
掲載誌 | Applied Optics, Vol.42, Issue 22 pp.4590-4593 |
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タイトル | "Properties of TiOx Films Prepared by Electron-Beam Evaporation of Titanium and Titanium Suboxides" |
著者 | Friedrich Waibel, Elmar Ritter, and Robert Linsbod |
概要 |
掲載誌 | Acta crystallographica (1984) B40, pp.549-554 |
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タイトル | "High-resolution electron microscopy study of polycrystalline evaporated titanium monoxide films" |
著者 | G.J.Shen, L.A.Bursill, K.Yoshida, Y.Yamada, H.Ota |
概要 |
掲載誌 | The European Physical Journal D 34, pp.79-82 (2005) |
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タイトル | "Fabrication and structural characterization of TiO nanoparticle soft-landed on substrate by the magnetron sputtering-gas aggregation method" |
著者 | |
概要 |
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