SECCの比重、成分、板厚、メッキ厚、降伏点などの物性と機械的性質|電気亜鉛メッキ鋼板の特徴と規格
SECCの特徴
SECCは電気亜鉛メッキした鋼板の一つで、JIS規格で定められた材料です。冷間圧延鋼板であるSPCCを元に、そこに電気亜鉛メッキした鋼種です。区分としては一般用を想定したもので、汎用性の高い亜鉛メッキ鋼板となります。
メッキ前の標準の板厚としては、0.4mmから3.2mmの範囲となっています。加工性がよいですが、メッキ層が薄いため、室内などでの利用が望ましい鋼種となります。実際には1.6mm以下の鋼種が多く見られます。
SECCのみ、硬質化させるための調質(熱処理)として6パターンが規格に設けられており、焼きなましの状態から、標準の調質から硬質まで段階的な設定がなされています。このため、SECCには硬度についても規定されています。
海外の規格における類似鋼板としては、EN規格のDC01、DC03、DC04、DC05、DC06やISOにおけるHR1やCR1があります。
SECCの板厚とメッキ厚
標準として、「表示厚さ」=板そのもの厚みが定められており、「製品厚さ」=メッキも含んだ厚さは計算で割り出すことになります。
SECCの比重
7.85が鋼板の比重となります。
SECCの成分と材質
SECCも含め、成分の規定は電気亜鉛メッキ鋼板にはありませんが、材質はすべて鋼です。メッキ前の原板に成分規定がある場合はそれが成分の値となります。下表から原板の規格も参考にしてください。
SECCの機械的性質
電気亜鉛メッキ鋼板の種類 | 降伏点、耐力 N/mm2 |
引張強さ N/mm2 |
伸び(%) | 塗装焼付硬化量 N/mm2 |
試験片と方向 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
板厚 【表示厚さ(ミリ)】 |
||||||||||
0.40以上0.60未満 | 0.60以上1.0未満 | 1.0以上1.6未満 | 1.6以上2.3未満 | 2.3以上2.5未満 | 2.5以上 | |||||
SECC | - | - | - | - | - | - | - | - | - | 5号圧延方向 |
SECCにおいて、引張強さや伸びを指定する場合は、材料記号をSECCTという具合に、最後にTをつけた記号を使います。
電気亜鉛メッキ鋼板の種類 | 降伏点、耐力 N/mm2 |
引張強さ N/mm2 |
伸び(%) | 塗装焼付硬化量 N/mm2 |
試験片と方向 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
板厚 【表示厚さ(ミリ)】 |
||||||||||
0.40以上0.60未満 | 0.60以上1.0未満 | 1.0以上1.6未満 | 1.6以上2.3未満 | 2.3以上2.5未満 | 2.5以上 | |||||
SECCT | - | 270以上 | 34以上 | 36以上 | 37以上 | 38以上 | 38以上 | 39以上 | - | 5号圧延方向 |
SECCの硬度
焼鈍し(焼きなまし)のみの場合や、標準調質の場合のSECC鋼板に対しては、硬度の規定が適用されませんが、以下の硬質化のための調質区分を適用した場合や、硬度の範囲に規定があります。硬度はロックウェル、ビッカースで定められていますが、板材やコイル材の厚みに応じて、HR30TSだけでなく、HR15TSを用いて適宜測定し、最終的にHRBに換算することもできます。
調質区分 | 調質記号 | ロックウェル硬さ (HRBS、HRBW) |
ビッカース硬さ (HV) |
---|---|---|---|
1/8硬質 | 8 | 50から71 | 95から130 |
1/4硬質 | 4 | 65から80 | 115から150 |
1/2硬質 | 2 | 74から89 | 135から185 |
硬質 | 1 | 85以上 | 170以上 |
電気亜鉛メッキ鋼板の一覧|JIS G 3313 電気亜鉛めっき鋼板及び鋼帯に規定されている材料記号一覧
電気亜鉛メッキ鋼板の種類 | 板厚の範囲 | 元になる鋼板の種類 (熱延鋼板) |
想定される用途 |
---|---|---|---|
SEHC | 1.6ミリ以上4.5ミリ以下 | SPHC | 一般用 |
SEHD | SPHD | 絞り用 | |
SEHE | SPHE | 深絞り用 | |
SEFH490 | SPFH490 | 加工用 | |
SEFH540 | SPFH540 | ||
SEFH590 | SPFH590 | ||
SEFH540Y | 2.0ミリ以上4.0ミリ以下 | SPFH540Y | 高加工用 |
SEFH590Y | SPFH590Y | ||
SE330 | 1.6ミリ以上4.5ミリ以下 | SS330 | 高強度用 |
SE400 | SS400 | ||
SE490 | SS490 | ||
SE540 | SS540 | ||
SEPH310 | SAPH310 | 高強度用 | |
SEPH370 | SAPH370 | ||
SEPH400 | SAPH400 | ||
SEPH440 | SAPH440 |
電気亜鉛メッキ鋼板の種類 | 板厚の範囲 | 元になる鋼板の種類 (冷延鋼板) |
想定される用途 |
---|---|---|---|
SECC | 0.4ミリ以上3.2ミリ以下 | SPCC | 一般用 |
SECD | SPCD | 絞り用 | |
SECE | SPCE | 深絞り用 | |
SECF | SPCF | 非時効性深絞り用 | |
SECG | SPCG | 非時効性超深絞り用 | |
SEFC340 | 0.6ミリ以上2.3ミリ以下 | SPFC340 | 絞り用 |
SEFC370 | SPFC370 | ||
SEFC390 | SPFC390 | 加工用 | |
SEFC440 | SPFC440 | ||
SEFC490 | SPFC490 | ||
SEFC540 | SPFC540 | ||
SEFC590 | SPFC590 | ||
SEFC490Y | SPFC490Y | 低降伏比型 | |
SEFC540Y | SPFC540Y | ||
SEFC590Y | SPFC590Y | ||
SEFC780Y | 0.8ミリ以上2.0以下 | SPFC780Y | |
SEFC980Y | SPFC980Y | ||
SEFC340H | 0.6ミリ以上1.6ミリ以下 | SPFC340H | 焼付硬化型 |
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