成膜レートとは
薄膜を作製する際に、どれくらいの速度で膜をつけていくのかを示す値が成膜レートあるいは、真空蒸着の場合であれば「蒸着レート」とも言います。単位は通常、Å/sで表し、一秒間にどれくらい薄膜を積層させることができるかで示します。蛇足ですが、光学系の世界では薄膜の厚みはÅ(オングストローム)もしくはnm(ナノメートル)で表すことが多いです。
成膜レートは、いわば成膜の速度を表す単位であり、生産効率に直結するパラメータの一つです。この値を高く上げても膜質をはじめ、光学特性や機能的な特性などの品質を保つことが出来るのであれば、単位時間当たりの生産量を増やすことが出来るため、例えば1日5バッチだった成膜を、6バッチや7バッチなどに増やすことができます。
ただ、成膜レートを上げると問題になるのが、スプラッシュ(突沸とも言います)や、材料のクラックなどの問題です。スプラッシュとは材料の表面から、材料の微粒子が飛び散って、基板に付着などすることで膜の欠陥となる現象です。
現在は、PVDによるほとんどの成膜において電子ビーム(電子銃)を材料に照射し、その材料を気化させて基板に付着させる方法をとっていますが、成膜レートを上げるには、この電子銃の加速電圧やエミッションなどを上げていくことになります。より強いビームをあてることになるため、ペレットやタブレットなどの成型された材料の場合、こうしたハイレートに耐えうるものでないと材料が貫通したり、「掘れ」といわれる現象や割れが発生して成膜効率が逆に落ちてしまいます。 静謐な湖に石を投げ入れ、水が飛び散る様をイメージしてください。この水を材料と考えるなら、成膜レートを上げるとは石をさらに勢いよく投げ入れることになります。
薄膜の特性【参考】
主として光学膜や機能膜として用いられる薄膜の代表的な特性、物性について紹介します。
酸化物の薄膜
- Al2O3(酸化アルミニウム、アルミナ)
- CeO2(酸化セリウム)
- Cr2O3(酸化クロム)
- Ga2O3(酸化ガリウム)
- HfO2(酸化ハフニウム、ハフニア)
- NiO(酸化ニッケル)
- MgO(酸化マグネシウム、マグネシア)
- I.T.O(In2O3+SnO2)酸化インジウムスズ
- Nb2O5(五酸化ニオブ)
- Ta2O5(五酸化タンタル)
- Y2O3(酸化イットリウム、イットリア)
- WO3(酸化タングステン)
- TiO(一酸化チタン)
- Ti3O5(五酸化チタン)
- TiO2(二酸化チタン、チタニア)
- ZnO(酸化亜鉛)
- ZrO2+TiO2(複合酸化物)
- ZrO2(酸化ジルコニウム、ジルコニア)
フッ化物の薄膜
- AlF3(フッ化アルミニウム)
- CaF2(フッ化カルシウム)
- CeF3(フッ化セリウム)
- LaF3(フッ化ランタン)
- LiF(フッ化リチウム)
- NaF(フッ化ナトリウム)
- MgF2(フッ化マグネシウム)
- NdF3(フッ化ネオジウム)
- SmF3(フッ化サマリウム)
- YbF3(フッ化イッテルビウム)
- YF3(フッ化イットリウム)
- GdF3(フッ化ガドリニウム)
窒化膜
炭化膜
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