真空蒸着の原理
真空蒸着とは、成膜手法の一つで高真空中で蒸着材料に電子ビーム等を照射し、溶融・気化させ、基板に物質を堆積させて膜にする方法です。真空蒸着法は、物理的気相法(PVD)に分類され、ガラスやプラスチック、樹脂、フィルム等様々な材質、形状の基板にナノオーダーの高品質の薄膜をつけることができます。融点が2000℃以上の物質であっても、薄膜にすることが可能で、時には300層近い超多層膜もあります。
成膜を行う装置は大別すると、バッチ式と呼ばれるものとインラインと呼ばれる連続式のものがあります。バッチ式のものは、成膜がおわるたびに真空にした蒸着釜(チャンバー)を開放して、再度基板や材料をセットするタイプのものです。対して、インライン式のものは、基板の入れ替えや蒸着材料の補給を、チャンバーを開放せずに行うことができる量産用の成膜装置です。
基板ホルダーはドームと呼ばれる円形のものが多く、レンズやウエハなどの基板をセットします。成膜中は通常、ドームはゆっくり回転します。
分子となった材料を基板に付着させるため、蒸着釜(チャンバー)は高真空にします。また基板を加熱することで、膜との密着力・付着力をあげたり、膜質を良好にすることができます。高温での加熱が難しいプラスチックなどの基板の場合は、密着力をあげるためにイオン等をさらに下から照射し、分子にエネルギーを与え、基板と密着させる方法も用いられます。
蒸着材料は通常、ハースといわれる装置の下部に、るつぼやボートに入れてセットされます。るつぼは材料と熱に強く、蒸着材料と反応しづらいものがよく用いられます。
蒸着釜(チャンバー)内部は高真空にするため、基板や成膜する蒸着材料から放出ガス(アウトガス、出ガス)が出ると真空度が低下し、膜質に影響を及ぼします。結果として、光学特性(屈折率、透過率、応力など)に悪影響を及ぼすため、蒸着釜(チャンバー)内に入れる各種機材、基板、材料からは極力、成膜中にガスが少ないほうが望ましいとされます。
液相成膜法(ウェット) | めっき | |
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塗布 | ||
ゾルゲル | ||
スピンコート | ||
気相成膜法(ドライ) | PVD(物理的気相法) | 蒸着 |
スパッタ | ||
CVD(化学的気相法) | 熱CVD | |
MOCVD | ||
プラズマ |
薄膜の特性【参考】
主として光学膜や機能膜として用いられる薄膜の代表的な特性、物性について紹介します。
酸化物の薄膜
- Al2O3(酸化アルミニウム、アルミナ)
- CeO2(酸化セリウム)
- Cr2O3(酸化クロム)
- Ga2O3(酸化ガリウム)
- HfO2(酸化ハフニウム、ハフニア)
- NiO(酸化ニッケル)
- MgO(酸化マグネシウム、マグネシア)
- I.T.O(In2O3+SnO2)酸化インジウムスズ
- Nb2O5(五酸化ニオブ)
- Ta2O5(五酸化タンタル)
- Y2O3(酸化イットリウム、イットリア)
- WO3(酸化タングステン)
- TiO(一酸化チタン)
- Ti3O5(五酸化チタン)
- TiO2(二酸化チタン、チタニア)
- ZnO(酸化亜鉛)
- ZrO2+TiO2(複合酸化物)
- ZrO2(酸化ジルコニウム、ジルコニア)
フッ化物の薄膜
- AlF3(フッ化アルミニウム)
- CaF2(フッ化カルシウム)
- CeF3(フッ化セリウム)
- LaF3(フッ化ランタン)
- LiF(フッ化リチウム)
- NaF(フッ化ナトリウム)
- MgF2(フッ化マグネシウム)
- NdF3(フッ化ネオジウム)
- SmF3(フッ化サマリウム)
- YbF3(フッ化イッテルビウム)
- YF3(フッ化イットリウム)
- GdF3(フッ化ガドリニウム)
窒化膜
炭化膜
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