蒸着材料のタイプ別の特徴
蒸着材料には、主に成型タイプと顆粒タイプの2種類があります。成型タイプのものには、ペレット型、タブレット型やアーチ型などがあり、ハースやるつぼの形状・サイズにあわせて製作されています。
ペレット型などの成型タイプの材料の利点の一つは、作業の効率化です。材料のセットや、成膜開始までのプレメルト時間など顆粒と比較して時間効率がよく、生産の効率化がはかれます。
またスプラッシュには材料の形状も影響することから、使用条件や材料の種類によってはペレットタイプのほうがスプラッシュを減らすことができる場合があります。同じ材料のペレットであっても、製造元が異なれば、造粒方法や焼結の手法も異なり、密度や中身の構造は違ってきます。
ただ、顆粒品に比べると実際に使用される部分が少なく、捨てる部分が若干多くなってしまうデメリットもあります。
メーカーによってはハイパワーでの成膜に適したものや、スプラッシュの出にくい焼結構造を持つ材料など特徴ある成型タイプの蒸着材料を製造しているところもあります。
量産工程でも顆粒品の補充が難しい条件や、顆粒の計量に手間がかかる場合、同じサイズのペレットをセットすることで効率化がはかれます。材料によって自動給材式の装置に使つ場合、寸法精度も重要な項目です。なお、ペレットやタブレット型の蒸着材料の場合、寸法表記は「φ(直径)mm x t(高さ) mm」としているところが多いようです。
顆粒タイプの蒸着材料は、ハースやるつぼの形状を選ばない汎用性の高い材料です。電子ビームでも抵抗加熱でも使えるものが多く、種類も豊富です。通常顆粒タイプは溶かして使う必要があり、材料が減ったらまた継ぎ足して使うという方法もとれます。ペレットに比べて低コストな反面、使える状態にするまでに若干の手間と時間がかかります。
使い方もノウハウの一つですが、広く用いられる方法としては次の二つが知られています。るつぼ内で少量チャージした顆粒を溶かし、また足して溶かすという具合に何層かに溶かして塊にします。減った分を継ぎ足して、また溶かし込んで使うという方法です。
もう一つは、るつぼ内にチャージした顆粒品の表層だけを溶かしてメルト面を作り、飛ばしていく方法です。顆粒品の場合、溶け具合が不十分であるとスプラッシュの原因となります。製品表記に「1-3mm」とあった場合、粒径が1mmから3mmの間におさまっているという意味です。会社によっては溶かし込みをした状態の材料を販売することもあるようです。
薄膜の特性【参考】
主として光学膜や機能膜として用いられる薄膜の代表的な特性、物性について紹介します。
酸化物の薄膜
- Al2O3(酸化アルミニウム、アルミナ)
- CeO2(酸化セリウム)
- Cr2O3(酸化クロム)
- Ga2O3(酸化ガリウム)
- HfO2(酸化ハフニウム、ハフニア)
- NiO(酸化ニッケル)
- MgO(酸化マグネシウム、マグネシア)
- I.T.O(In2O3+SnO2)酸化インジウムスズ
- Nb2O5(五酸化ニオブ)
- Ta2O5(五酸化タンタル)
- Y2O3(酸化イットリウム、イットリア)
- WO3(酸化タングステン)
- TiO(一酸化チタン)
- Ti3O5(五酸化チタン)
- TiO2(二酸化チタン、チタニア)
- ZnO(酸化亜鉛)
- ZrO2+TiO2(複合酸化物)
- ZrO2(酸化ジルコニウム、ジルコニア)
フッ化物の薄膜
- AlF3(フッ化アルミニウム)
- CaF2(フッ化カルシウム)
- CeF3(フッ化セリウム)
- LaF3(フッ化ランタン)
- LiF(フッ化リチウム)
- NaF(フッ化ナトリウム)
- MgF2(フッ化マグネシウム)
- NdF3(フッ化ネオジウム)
- SmF3(フッ化サマリウム)
- YbF3(フッ化イッテルビウム)
- YF3(フッ化イットリウム)
- GdF3(フッ化ガドリニウム)
窒化膜
炭化膜
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