蒸着材料のアウトガス(出ガス)とは
蒸着材料は、真空蒸着装置の中にセットされ、電子銃の照射によって分子となり、それが基板の薄膜になります。成膜装置内の蒸着釜(チャンバー)は、真空引きを行い、高真空に保たれる必要があります。というのも、分子となった材料がチャンバー内で基板に到達しやすくするには、余分な空気は邪魔となるからです。
さて、ここでアウトガスというのは、チャンバー内で発生する様々なガスのことです。成膜時に蒸着材料から出るものでも、材料内部に滞留している空気が放出されるもの、材料の組成が真空内で切り離されることにより発生する酸素、材料にかかる熱により発生するものなど複数の原因が考えられます。
また、材料由来のアウトガスのほか、チャンバー内の各種部品の表面から出るものもあり、一口にアウトガスといっても多くの発生源が考えられます。
実はレンズなどの基板(薄膜をつける対象)からもアウトガスと呼ばれる現象は見られ、完全に根絶するのは難しいのですが、もっともアウトガスの原因とみなされやすいものが蒸着材料です。これはハースにセットしやすいようにタブレット、ペレットなどの形のものから、顆粒状、破砕状のものなどがありますが、いずれも「空隙」が存在したり、電子銃照射時の熱に起因するものなので、とかく、空気を放出しやすいものと考えられています。
したがって、蒸着材料としてはアウトガスが少なければ少ないほど、成膜中の真空度がよい状態で維持できるため、薄膜の品質もよい状態にすることができます。アウトガスだけが膜品質に影響する要素ではありませんが、真空蒸着では高真空であることが非常に重要となる成膜手法であることには変わりありませんので、こうした現象を極力抑えた蒸着材料を使うのがよいでしょう。
薄膜の特性【参考】
主として光学膜や機能膜として用いられる薄膜の代表的な特性、物性について紹介します。
酸化物の薄膜
- Al2O3(酸化アルミニウム、アルミナ)
- CeO2(酸化セリウム)
- Cr2O3(酸化クロム)
- Ga2O3(酸化ガリウム)
- HfO2(酸化ハフニウム、ハフニア)
- NiO(酸化ニッケル)
- MgO(酸化マグネシウム、マグネシア)
- I.T.O(In2O3+SnO2)酸化インジウムスズ
- Nb2O5(五酸化ニオブ)
- Ta2O5(五酸化タンタル)
- Y2O3(酸化イットリウム、イットリア)
- WO3(酸化タングステン)
- TiO(一酸化チタン)
- Ti3O5(五酸化チタン)
- TiO2(二酸化チタン、チタニア)
- ZnO(酸化亜鉛)
- ZrO2+TiO2(複合酸化物)
- ZrO2(酸化ジルコニウム、ジルコニア)
フッ化物の薄膜
- AlF3(フッ化アルミニウム)
- CaF2(フッ化カルシウム)
- CeF3(フッ化セリウム)
- LaF3(フッ化ランタン)
- LiF(フッ化リチウム)
- NaF(フッ化ナトリウム)
- MgF2(フッ化マグネシウム)
- NdF3(フッ化ネオジウム)
- SmF3(フッ化サマリウム)
- YbF3(フッ化イッテルビウム)
- YF3(フッ化イットリウム)
- GdF3(フッ化ガドリニウム)
窒化膜
炭化膜
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