IADとは
薄膜や蒸着の世界でIADといった場合、これはIon assisted depositionの略で、イオンアシストを用いた蒸着のことを指しています。イオンアシストには、イオンビームやイオンプレーティングなどいくつか方法があります。真空蒸着は、非常に高いレベルの真空度で行うため、膜の品質も高く保たれる成膜手法ですが、耐熱性の低い基板や基材を用いる際はどうしても低温成膜となり、加熱不足からくる密着力の不足や、成膜レート(速度)が遅いなどの欠点もありました。また薄膜そのものの密度、充填率といいますが、これを十分に高く出来ないと光学特性が時間の経過とともにシフトしていくという問題があります。
端的に言えば、イオンの力を借りることでこうした問題を解決しようとしたのがこの技術のそもそものはじまりですが、現在「真空蒸着」といった場合は、ほとんど何らかのイオンアシスト機構が装置には備わっています。特に成膜を業としている会社であれば、何らかのアシスト機構は装置に取り付けてあることがほとんとです。
プラスチックのレンズなど基板の加熱が十分にできないものが増えてきたため、IADは不可欠の技術とも言えるようになってきましたが、IADであってもある程度の加熱は必要なため、さらに低温での成膜が必要な基板の場合は、別種の技術が要ります。
薄膜の特性【参考】
主として光学膜や機能膜として用いられる薄膜の代表的な特性、物性について紹介します。
酸化物の薄膜
- Al2O3(酸化アルミニウム、アルミナ)
- CeO2(酸化セリウム)
- Cr2O3(酸化クロム)
- Ga2O3(酸化ガリウム)
- HfO2(酸化ハフニウム、ハフニア)
- NiO(酸化ニッケル)
- MgO(酸化マグネシウム、マグネシア)
- I.T.O(In2O3+SnO2)酸化インジウムスズ
- Nb2O5(五酸化ニオブ)
- Ta2O5(五酸化タンタル)
- Y2O3(酸化イットリウム、イットリア)
- WO3(酸化タングステン)
- TiO(一酸化チタン)
- Ti3O5(五酸化チタン)
- TiO2(二酸化チタン、チタニア)
- ZnO(酸化亜鉛)
- ZrO2+TiO2(複合酸化物)
- ZrO2(酸化ジルコニウム、ジルコニア)
フッ化物の薄膜
- AlF3(フッ化アルミニウム)
- CaF2(フッ化カルシウム)
- CeF3(フッ化セリウム)
- LaF3(フッ化ランタン)
- LiF(フッ化リチウム)
- NaF(フッ化ナトリウム)
- MgF2(フッ化マグネシウム)
- NdF3(フッ化ネオジウム)
- SmF3(フッ化サマリウム)
- YbF3(フッ化イッテルビウム)
- YF3(フッ化イットリウム)
- GdF3(フッ化ガドリニウム)
窒化膜
炭化膜
スポンサーリンク