真空蒸着材料とは
真空蒸着材料は、真空蒸着と呼ばれる成膜手法で使われる固有の材料です。多くは、金属や酸化物、フッ化物、窒化物、炭化物などのセラミックス材料で、高い純度をもつものがほとんどです。高真空の中で、電子ビームなどが照射されて材料そのものが「分子」となり、それらを基板に付着させる目的で使われます。
蒸着で実現しようとしている薄膜の多くが、高いレベルの光学特性や機能性、誘電率などを得る必要があるため、材料の純度は高いものが求められます。通常は3N(スリーナイングレード)と呼ばれる99.9%がその材料で構成されたものが用いられますが(材料によっては4N以上のものも使われます)、純度以外にも、材料としては溶かしやすさや、スプラッシュ(突沸)が出にくい、アウトガス(出ガス)が少ない等の性能が求められるため、純度が高いというだけの生の原料がそのまま使えるわけではありません。材料に種類によっては激しいスプラッシュを避けられないものもあり、個々の材料物性も使い方に大きく影響します。
真空蒸着材料には、ペレットやタブレットなどの特徴的な形に成型されたものと、顆粒状のものがあります。顆粒状のものには、焼結品と溶融破砕品の別があります。焼結品は、造粒工程を経て焼き物のように窯で焼かれたものです。溶融破砕品は、結晶状の塊を砕いて一定の大きさにふるい分けたものです。
薄膜の特性【参考】
主として光学膜や機能膜として用いられる薄膜の代表的な特性、物性について紹介します。
酸化物の薄膜
- Al2O3(酸化アルミニウム、アルミナ)
- CeO2(酸化セリウム)
- Cr2O3(酸化クロム)
- Ga2O3(酸化ガリウム)
- HfO2(酸化ハフニウム、ハフニア)
- NiO(酸化ニッケル)
- MgO(酸化マグネシウム、マグネシア)
- I.T.O(In2O3+SnO2)酸化インジウムスズ
- Nb2O5(五酸化ニオブ)
- Ta2O5(五酸化タンタル)
- Y2O3(酸化イットリウム、イットリア)
- WO3(酸化タングステン)
- TiO(一酸化チタン)
- Ti3O5(五酸化チタン)
- TiO2(二酸化チタン、チタニア)
- ZnO(酸化亜鉛)
- ZrO2+TiO2(複合酸化物)
- ZrO2(酸化ジルコニウム、ジルコニア)
フッ化物の薄膜
- AlF3(フッ化アルミニウム)
- CaF2(フッ化カルシウム)
- CeF3(フッ化セリウム)
- LaF3(フッ化ランタン)
- LiF(フッ化リチウム)
- NaF(フッ化ナトリウム)
- MgF2(フッ化マグネシウム)
- NdF3(フッ化ネオジウム)
- SmF3(フッ化サマリウム)
- YbF3(フッ化イッテルビウム)
- YF3(フッ化イットリウム)
- GdF3(フッ化ガドリニウム)
窒化膜
炭化膜
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